筆者は妊娠中、定期的に行く健診に数千円かかると友人に話したところ、「子どもって贅沢品なんだね」と言われたことがあります。なんだかショックでよく覚えているのですが、いまや多くの人々が、そうした思いを持っているようです。
東京大学Cedepとベネッセ教育総合研究所は6月20日、共同研究した「乳幼児の生活と育ちに関する調査2017」の結果を発表しました。調査は2017年秋に実施。全国の0~1歳児を持つ家庭3205世帯が郵送アンケートに回答した。
0~1歳児の親で「子どもをもっと欲しいが、難しい」と考える人は、世帯年収400万円未満だと約91%、800万円以上でも約68%いることが分かりました。子どもが欲しい人は多いのに、金銭面で諦める人が多かったのです。(文:篠原みつき)
「30代になってようやく非正規から抜けだして、自分1人で生きるのが精いっぱいだよ…」
この調査結果はネット上でも話題になりました。5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)では1万件近い書き込みがあり、関心の高さがうかがえます。反応は様々で、
「40代氷河期ですが結婚、いや恋愛ですら金銭面で厳しいです」
「30代になってようやく非正規から抜けだして(中略)自分1人で生きるのが精いっぱいだよ…20代から正社員だったらまた違った人生だったかもしれないが」
「子供持つってことじたいが凄く贅沢な趣味だからね」
などの絶望や諦め、
「もう一夫多妻制にして金持ちに人口維持してもらうしかないわな」
「独身子ナシは公的年金および健康保険給付ゼロ 」
「3人目以降は所得制限なしに高校無償、大学も無利子奨学金でいいよ」
など、独自の少子化対策を語る人が相次ぎました。世帯年収が共働きで1000万円以上だけれど、出産によって労働力が減ると「カツカツになる」と不安を訴える人もいます。
氷河期世代の嗚咽が多く見られましたが、「氷河期世代はまだ親に金がある」のほか、「氷河期世代、可哀想とか思ってたが 実は20代30代も年収氷河期だったんだな」と追い打ちをかける人も。貧困と学歴に関する議論もヒートアップして果てしなく続くようでした。
希望がない社会へ子どもを送り出すのは不安です。塾や習い事、大学までの費用を考えると、「500万600万で何人も作ってる人が信じられない」というコメントも。「自分自身の老後の貯蓄」も考えないと子どもに迷惑がかかる、だから「作らない」と考える人のなんと多いことか。
確かに筆者も、こうした不安はよく感じるため読んでいると胸がざわざわしてきます。子どもは好きでもっと欲しかったのですが、まさに金銭面で厳しいためなかなか出来ない二人目を不妊治療してまでは作りませんでした。
「お陰で死ぬまで働き続けることが確定してる。幸せだからまあいいけどな」
中には、「600万だけど、二人目産んだぞ。贅沢しすぎなんじゃね? 」という人や、「年収260万だが、子ども二人と仲良くくらしてるよ。残業0なんで、子どもの勉強は自分で見てる。高校レベルなら全科目余裕だからな」など、自身の価値観を貫く声もありました。
実際に学費を払い終えた人からは、「3人を都会の大学出したけど都心のマンション買えるくらいかかったと思うわ。お陰で死ぬまで働き続けることが確定してる。幸せだからまあいいけどな」とのご報告も。
子どもにお金がかかるのは確かですが、単にお金が出ていくだけとは違います。きれいごとのようですが、何にも代えられない喜びや経験、思い出ができるのもまた事実。こんな書き込みに共感しました。
「子供いるって本当に幸せなんだよ。私の人生、子供いなかったら意味半減。本当に楽しかった。 子供たちは自立して家を出て数年だし 執着はないよ。本当に幸せだった。そんな思いを他の人にもしてほしい」
調査では、夫婦ともに「"チーム育児"をしているほうが、次の子どもの出産意向が高い」という、考えてみれば当たり前の結果も出ています。お金の問題はもちろんありますが、子育ての負担と喜びを夫婦や社会で分け合うこと、そして、できない人や作らない人を責めても誰も幸せにはならないということを、もっと意識してもいいのではと感じました。