2018年06月25日 10:12 弁護士ドットコム
月給20万円だから税金も、保険料も支払えないーー。ネットの掲示板に、都内在住の男性からこのような投稿が寄せられた。
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この男性は、食費や光熱水費、家賃などの支払いに加えて、大学の奨学金を返済しなければならず、月給20万円では生活がとても苦しいという。さらに、年金や健康保険などの各種保険料、所得税や住民税として、月々6万円を支払わなければならないそうだ。
奨学金はともかく、税金や保険料の減免制度はないのだろうか。
一般的に、月収20万円(年収240万円)の人の所得税は年間約4万円、住民税は約8万5千円で、あわせて12万5千円ほどです。もっとも、専業主婦や16歳以上の子どもがいて、配偶者控除や扶養控除が適用される場合には、この額よりも安くなります。
月収20万円の人に配偶者控除が適用される場合、所得税の配偶者控除額は38万円なので、所得税額は年間約2万円となります。一方で、住民税の配偶者控除額は33万円なので、住民税額は年間約5万8千円となります。
さらに、16歳以上の子どもがいる場合は、配偶者控除に加えて扶養控除額が適用されます。たとえば、高校2年生の娘がいる場合には、住民税に33万円、所得税に38万円の扶養控除が、配偶者控除と合わせて適用されます。
住民税や所得税には、非課税措置が存在します。その適用条件は、(1)生活保護の受給者であること、(2)未成年や障害者、片親で前年の合計所得が125万円以下であること(3)控除対象配偶者や扶養親族がおり、課税対象所得が35万円×世帯合計人数+21万円以下の場合(4)控除対象配偶者や不要親族がおらず、課税対象所得が35万円以下の場合のいずれかに該当することです。
月収20万円の場合、課税対象所得は80万円以上になるので、非課税措置が適用されることはないでしょう。
また、所得税の非課税措置は、収入が103万円以下の場合に適用されるので、月収20万円の人には適用されません。
生活が苦しく、保険料を納めることが難しい場合、国民年金保険料の免除・納付猶予制度の手続きを行えば、保険料免除や納付猶予を受けることができ、その期間は年金の受給資格期間に算入されます。
ただし、もらえる年金額が保険料を納めた場合の半分になる(全額免除の場合)など、減額のデメリットもあります。これを回避するには、保険料を後から追納する必要があります。
もっとも、いずれの制度についても、月収20万円の人は、失業した場合を除けば、申請基準を満たしません。
さらに、国民健康保険料も2割からの軽減制度を設けていますが、世帯内の加入者数が1人の場合、東京23区や横浜市などのサイトによると、1人の場合、所得額が83万円以下で適用されるので、月収20万の人はこの軽減制度を利用することはできません。
低所得者向けに、各種保険料や税金の免除や軽減制度はありますが、月収20万円は低所得者向けの制度の大半を利用することができないのです。
残念ながら、今回のような場合ですと、税金や保険料の減免は難しいのが現状です。そもそもの収入アップや、奨学金の返済猶予などの手段で何とかするしかなさそうです。
【監修税理士】
蝦名 和広(えびな かずひろ)税理士
税理士・特定社会保険労務士・海事代理士・特定行政書士。北海学園大学経済学部卒業。札幌市西区で開業、税務・労務・法人設立まで幅広くクライアントをサポート。趣味はクレー射撃、一児のパパ。
事務所名 : 蝦名事務所
事務所URL: https://office-ebina.com
(弁護士ドットコムニュース)