前戦テキサスの後、佐藤琢磨は日本に一時帰国しブリヂストンのイベントに参加するなど、相変わらず多忙なスケジュールを過ごした。
その合間にはこのロードアメリカでテストに参加していた。
琢磨は「タイヤの仕様が少し違いタイム的には良くなかったですが、いろいろなことを試せて充実したテストだったと思います」と言っていた。
その甲斐があったのか、プラクティスは1回目から好調で、FP1が2番手、FP2も8番手とまずまず。FP2では「出だしは良かったけども、気温と路面の変化で少し戸惑った」と言う。
翌日のFP3、そして予選までにどこまで修正してくるかが鍵であったが、予選が始まると琢磨のペースは決して悪くなかった。予選のグループは速いドライバーが偏り、しかもチームメイトのグラハム・レイホールと一緒だったが、Q1は5番手で通過。Q2では6番手だったウィル・パワーに4/100秒届かず、ファストシックスに進めなかった。
「悔しいですね。ほんのちょっとでしたがやるだけの事はやって力を出し切れたと思います。それだけ僅差の予選でした」と悔しい様子だったが、それなりの手応えを得た予選だった。そしてここでレッドタイヤを少し温存出来た分、決勝でのタイヤ選択が楽になっていた。
ここ三日間でもっとも気温が高くなった日曜日。レースはオンタイムでスタートが切られた。予選2番手のウイル・パワーが失速し、うまくポジションをあげた琢磨は、1周目を4番手で戻ってきた。
後ろのセバスチャン・ブルデーは、レッドのニュータイヤを履き、ユーズドレッドの琢磨を隙あらば抜こうと窺っている。
トップはポールポジションのニューガーデン、2番手にライアン・ハンター-レイ、3 番手にアレクサンダー・ロッシ、そして琢磨。その後ろのブルデーは8周目にトラブルがありピットに入り、ロバート・ウィケンスが上がってきた。
上位の間隔はつかず離れずの状態が続いたが、まず先に動いたのは琢磨だった。13周目にピットに入りレッドタイヤを脱ぎ捨て、ブラックに変えてコースに戻る。上位陣もその翌周にピットに入り、6番手のスコット・ディクソンだけは1周ピットインを遅らせていた。
ブラックタイヤでややペースが上がらず、ウィケンスに迫られたシーンがあったものの、27周目に再度ピットインした際にはユーズドのレッドタイヤを選んでいた。
そのピットアウトした翌周、1周後にピットアウトしてきたロッシとターン5からサイド・バイ・サイドに。ターン6ではアウト側となった琢磨は幅寄せされグリーンに追い出されてしまった。
無線ではヒートしてピットボックスに猛烈にアピールしていたが、ロッシにはペナルティは出ず、一度抜かれたウィケンスから5番手のポジションを奪い返すことができたのは幸いだった。ロッシはスタート後にもウィッケンスに対して同様の動きをしており、フェアでない走りには疑問の声が多かった。
ロッシにバチが当たったかどうかわからないが、サスペンションにトラブルを抱えたロッシは38周目に緊急ピットインをする羽目に。
残り15周を切ると各車最後のピット作業を行った。琢磨はニューレッドのタイヤで最後の追い上げモードだったが、燃費を稼ぎながらピット作業ごとにポジションを上げてきた前のスコット・ディクソンとは7~8秒の差となっており、最後までプッシュしたものの、今季初の表彰台には手が届かなかった。
「ロッシとのバトルは残念でしたね。彼は僕以外にもそういう事をしているみたいですし。どうしてああいう事をするのかな? 僕らはトップカテゴリーなのだから、フェアなレースをしなくてはいけないですし、インディカーもきっちりと判断してほしいと思います。若いドライバーにも示しがつかないですからね。アレがOKなら、じゃあ次は僕も!ってことになってしまう。後でちゃんとインディカーの見解を聞こうと思っています」
「今日は表彰台には届かずに悔しいレースとなってしまいましたけど、4位と言う結果はチームにとっても良かったと思います。途中ユーズドのレッドを使っていた時、ブラックのグラハムも追いかけてきたけど、2台揃ってトップ10になれたし、この後のロードコースのレースでも良いレースが出来そうな気がします」
「シーズン序盤にレースの取りこぼしが多くて、本当はここから開幕戦にしたいくらいですけど、レース後半もこの調子で頑張りたいですね」
7月はアイオワ、トロント、ミドオハイオと3レース。琢磨が得意とする場所だけに、楽しみな7月になりそうだ。