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民泊新法で大混乱 Airbnbの大量予約キャンセル、対応は妥当だった?

2018年06月24日 09:12  弁護士ドットコム

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6月15日に施行された民泊新法(住宅宿泊事業法)をめぐり、大きな混乱が起きている。


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民泊予約サイト「Airbnb」が6月7日、自治体への届け出が終わっていない物件の予約(15日~19日分)をキャンセルすると発表した。


民泊新法では、民泊の部屋を貸す人(家主)は自治体への届け出が必要であると規定されている。Airbnbの発表によれば、観光庁の通知(6月1日)により、すでに予約済みであっても無届けの物件はキャンセルするよう指導があったため、「苦渋の判断」(同社)を迫られたという。Airbnbは、キャンセル対象者のために11億円を用意して、クーポンの配布や返金等がおこなうことを表明した。


日本経済新聞(6月22日付)によると、Airbnbでは、虚偽の届け出や、届け出の確認ができない物件の削除も進めており、最盛期の今春に6万2000件あった掲載数は、6月15日時点で2万7000件に減少しているという。


なぜ今回のような事態になってしまったのか。石原一樹弁護士に聞いた。


●今回のキャンセル措置には明確な法的根拠がない

直前の大量キャンセルについてはどう考えればいいのか。


「観光庁とAirbnbとの解釈の違いがきっかけでしょう。観光庁は新法施行前でも旅館業法に違反する物件の削除を求めていた、と主張する一方で、Airbnbは、6月15日以前では、住宅宿泊仲介業でもなく、現状維持、つまり届出がなされていない状況にしていても問題ないと考えていたということです。


このような解釈の相違に対して、観光庁が強い圧力(通知)をかけたことによって、今回、Airbnbが妥協して、キャンセルの措置をとったと考えられます」


このような一方的なキャンセルに問題はないのか。


「少なくとも行政の考える違法主体は、民泊の部屋を貸す人(家主)であるとしながら、キャンセルを断行したのはプラットフォーム事業者であるAirbnbである、という点に問題があると考えます。


部屋の予約については、民泊の部屋を貸す人(家主)と借主との契約であるにもかかわらず、第三者であるAirbnbが半ば横槍をいれるかのように強制キャンセルをすることは利用規約や強行法規に基づかなければできない性質の行為だといえます。


Airbnbの規約上も、行政権の圧力により強制キャンセルできる、という規約は見当たらないため、今回のキャンセル措置には明確な法的根拠がないといわざるをえません。


このような措置は行政による民間事業への不当介入ともいえると思います」


<参考規約>(9.5 Airbnbは、その単独の裁量により、一定の場合に、確定した予約をキャンセルし、適切な返金及び受取金に関する決定をすることが必要であると判断することができます。この判断は、Airbnbの酌量すべき事情ポリシーに規定されている理由、又は(i)Airbnbが両当事者の正当な利益を考慮した上で、Airbnb、その他のメンバー、第三者又は財産に重大な損害がもたらされるのを防ぐために必要であると真摯に考える場合、若しくは、(ii)本規約において規定されているその他の理由でなされる場合があります。)


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
石原 一樹(いしはら・かずき)弁護士
弁護士2012年に弁護士登録後、ヤフー株式会社に入社し、企業内弁護士としてインターネットに関する法務業務に従事。その後外資系法律事務所を経てSeven Rich法律事務所を設立。日本国内外を問わず積極的にスタートアップ企業やベンチャー企業へのリーガルサービスも提供している。

事務所名:Seven Rich法律事務所
事務所URL:https://sevenrich-law.com/