フランスGP2日目の土曜日、ホンダは金曜日のフリー走行2回目でトラブルが発生したブレンドン・ハートレーのパワーユニットをすべて新しいものに交換した。
ハートレーに問題が起きて、ピエール・ガスリーに起きなかった要因として考えられるのは、金曜日にガスリーが走らせていたPUが旧仕様だったからだと考えられる。これはガスリーがカナダGPのレースで走らせた新仕様のPUに問題があったわけではなく、マイレージ調整のためだった。
「カナダGPの予選で使用した旧仕様のPUがまだマイレージの範囲内だったので、金曜日PUとしてフランスGPの金曜日に使用しました」(田辺豊治F1テクニカルディレクター)
田辺TDによれば、「いまのところスペックを新しくしたことが理由ではないと考えられるので、フランスGPの土曜日からは、ガスリーもカナダGPのレースで使用した新しい仕様に戻し、ハートレーも新しい仕様のPUにパッケージごと交換して、予選とレースを戦う」という。
ここで2つの疑問が浮上する。ひとつは、壊れたのは、どこかだ。
金曜日にトラブルが発生したハートレーのPUをあらためて説明したいと思う。ガスリーは金曜日PUとしてカナダGPの予選で使用した旧仕様のPUを使用していたが、ハートレーはカナダGPで金曜日から日曜日まで走ったPUを継続して使用していた。
このPUはICE(内燃機関)のみ新しいスペックが投入された。つまり「いまのところスペックを新しくしたことが理由ではない」というコメントを裏読みすると、今回ポール・リカールの金曜日にブロウしたのはICEだったと考えられる。
2つの疑問は、原因はなんだったのかだ。
田辺TDは「スペック起因でもなければ、マイレージが原因で壊れたというわけでもないということになると、逆に問題の原因を特定するのが難しい。品質含めてブツのばらつきが最も疑われるので、そのへんをチェックしていくしかない」という。
もし壊れた場所がICEだとしたら、壊れていないガスリーの新仕様のICEと壊れたハートレーのICEのすべての部品のロットを確認し、違うものをつぶしていけば、自ずと答えは見えてくるはず。しかし、その調査は私たちが想像するほど単純なものではないという。
「ロットをチェックするといっても、部品によっては複数のパーツで構成されているので、ものによってはさかのぼるだけでも複雑で大掛かりな仕事なるものもあります。また部品1つの違いだけでなく、それらを組み合わせて完成品となったときの時期や条件などもチェックしていかなければならないきともあります」
田辺TDによれば、「同じナットでも、作った時期や人が違えば品質が変わることがあり、人が同じだったとしても、その人の勤務状態、例えば直前に休んでいたなどでも変わる」という。
「極端な話、設備が直前にメンテナンスしていたとか、新しいメッキを入れたとかということも要因となる場合があります」
しかも、F1のエンジンは非常に多くのパーツでできている。それらひとつひとつができあがるまでにどんな工程で作られたのか、そしてその工程で何か通常と違うことはなかったかを調査するというのは、想像を絶する作業なのである。しかし、トラブルが出た以上は、やらなければならない。
「原因を突き止められなければ、次へ進めません」(田辺TD)