2018年06月23日 09:52 弁護士ドットコム
夫が既婚女性とW不倫。相手女性の夫から慰謝料を請求されてしまったーー。こんなトラブルに巻き込まれた女性から、お互いに慰謝料請求せずに和解することはできないのかを尋ねる投稿が、弁護士ドットコムの法律相談コーナーに寄せられました。
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相談者の女性は、夫が慰謝料請求されているならば、自身も夫の不倫相手である女性に慰謝料請求をしたいと思っているそうです。一方で、相談者にも相手方にも子どもがいることから、「これ以上お互いの家族が更に傷つくような事はやりたくない」と考えていて、できるなら、互いに慰謝料を請求せずに和解することを望んでいます。
互いに慰謝料請求せずに和解することは、ゼロ和解とも言われているが、どのような場合に可能なのでしょうか。渡邊幹仁弁護士に聞きました。
「全員が合意すれば可能です」
全員ということは、相談者である妻、夫、そして相手の妻、夫の4人の合意が必要だということですね。
「そうです。(1)相手の夫からの自分の夫に対する慰謝料請求(『夫→夫』)と、(2)自分から相手女性に対する慰謝料請求(『妻→妻』)は、当事者もそれぞれ異なりますし、あくまで法的には別の件ということになります。
ですから、(2)『妻→妻』でどのような解決をしたとしても、それが、直接(1)『夫→夫』の件に影響することはありません。
しかし、お互いの夫婦が離婚しない場合には、例えば、(1)で『夫→夫』慰謝料100万円、(2)で『妻→妻』慰謝料100万円になったとすると、家族(夫婦)単位で見れば、お金が行ったりきたりするだけで、あまり意味のない結果となってしまいます。
このような意味のない結果を避けるために、関係者全員、すなわち、こちらの夫・妻と、相手の夫・妻の全員が、(1)と(2)のそれぞれの請求をお互いにやめようと合意することで、和解(ゼロ和解)することが可能だと言えます」
ゼロ和解が決まった場合、するべきことはありますか。
「口頭でお互いに請求し合わない(請求を取り止める)ことを確認するだけでもいいのですが、後々に紛争が再燃しないよう、示談書を取り交わすといいでしょう。
通常は、先ほどの(1)、(2)の両方について、慰謝料を請求しないということで合意する内容の示談書を取り交わすことになるかと思います」
ゼロ和解の成立が難しいケースもあるのでしょうか。
「一般的にゼロ和解が成立するのは、先ほど述べたように『家族(夫婦)単位で見れば、お金が行ったりきたりするだけで、意味のない結果になるからだ』というところにあります。
ですから、相手の夫婦が離婚するという場合には、和解する動機が生まれないことが多いでしょう。相手の夫からすれば、妻が相手に慰謝料を支払ったとしても、自分の懐に直接影響がないためです。
また、この場合(相手は離婚、こちらは離婚しない場合)、相手の夫からの慰謝料額の方が高額になることが多いので、この点からも、ゼロ和解は難しいでしょう」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
渡邊 幹仁(わたなべ・みきひと)弁護士
離婚・親子関係などの家事事件、男女問題、不法行為に関する事件や、刑事事件・犯罪被害事件を数多く取り扱っている。
事務所名:新潟菜の花法律事務所
事務所URL:http://niigata-nanohana.com/index.html