藤田貴大(マームとジプシー)が演出と上演台本を手掛ける舞台『書を捨てよ町へ出よう』が、10月7日から東京・池袋の東京芸術劇場 シアターイーストで上演される。
寺山修司による同名の評論、戯曲、映画のそれぞれで内容が異なる『書を捨てよ町へ出よう』。1960年代から1970年代に生み出された戯曲を若手演出家の解釈により、再発見する東京芸術劇場のシリーズ企画『RooTS』の一環で上演される今回の公演は、2015年に映画版に基づいた藤田の演出で発表された公演の再演となり、都電沿線の廃墟のような長屋で万引き常習犯の祖母、無職の父親、ウサギを偏愛する引きこもりの妹と暮らす21歳のフリーター「私」の鬱屈した青春を、音楽と実験映像を交えて描く。『RooTS』では初の再演作。主演を務めるのは、初舞台となる18歳の佐藤緋美。「寺山修司の世界観は理解できないことだらけですが、わからないから演ってみたいし、それが自分のためになることだけは間違いないので、頑張るだけです」と意気込みを語っている。
共演者は青柳いづみ、川崎ゆり子、佐々木美奈、召田実子、石井亮介、尾野島慎太朗、辻本達也、中島広隆、波佐谷聡、船津健太、ドラマーの山本達久。さらに穂村弘と又吉直樹(ピース)が映像出演する。宣伝美術はブックデザイナーの名久井直子、衣裳はミナ ペルホネンが担当。チケットの販売は8月11日からスタートする。東京公演終了後には長野、青森、北海道、フランスでの公演を実施。
■藤田貴大(マームとジプシー)のコメント
もちろんぼくはその時代のことを身をもって知っているわけではないけれど、だけれど、想像してみたくなったのだった。演劇を、彼らはどういう風にして捉えていたのだろう、そして、彼らにとって路地とは?道ゆく人々を、特殊な窓をとおして見つめてみたときに思い浮かんだものがあったのだろう。時代から弾かれたひとたちはどこへ向かうのか。自分たちは、この国で、どうなのか。これでもかってくらい叩き込まれた敗北感と、それでもどうしたって納得がいかなかったこと。その両方をそのままのかたちで、つよい焦燥とともに、舞台に、路地に、現しつづけた彼らの姿を想像するに、ぼくはぼくらと無関係だとはおもわなかった。あのころの日本と現在の日本は、じゃあどうちがうのだろう。現在の、路地は?これはただの再現ではなく、現在の音と色と言葉が、これでもかってくらい練り込まれた、まったくあたらしい作品だとおもっている。しかし、あたらしいとは、なにを持って、あたらしいと云えるのか。あたらしい、というのは、じつは、もともとあるものがなくては、あたらしくないのではないか。もともとあった音を、色を、言葉を、切り刻んで、解体して。あたらしく、構築していく。現在として、構築していく。かつて、彼らがそうしたように、ぼくらも舞台のうえで、または路地で、さまざまなシーンをその場で、コラージュしていく。まさに、閃いたのは、色でいうと、銀色だった。銀世界に、音を、色を、言葉を置いていくイメージで。また、つくっていきたいと、おもっている。