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水谷果穂、歌手活動の中で生まれた“意識の変化” 「自分自身の素を出していく面白さを知った」

2018年06月22日 12:12  リアルサウンド

リアルサウンド

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 水谷果穂が、6月27日に2ndシングル『君のステージへ』をリリースする。


 水谷果穂は、TBS日曜劇場『ブラックペアン』(宮元 亜由美 役)や、日本テレビ系『Going! Sports&News』お天気キャスターなど、映画やドラマをはじめとした多方面で活躍中の女優・歌手。2017年7月に主演短編映画『明日、アリゼの浜辺で』の主題歌「青い涙」を歌唱し、デビューを果たした。


 今作の表題曲の「君のステージへ」は、テレビアニメ『若おかみは小学生!』(テレビ東京系)の主題歌であり、これまで以上に子供から大人まで幅広い層に届く楽曲となった。デビューからおよそ1年。水谷果穂はライブハウスのステージに立ち、またバラエティ番組やお天気キャスターにも挑むなど様々なチャレンジを積んできた。それらの経験を通して得た意識の変化や楽曲に込めた思い、そして今後の活動について、話を聞いた。(編集部)


■「こういうふうに歌いたいという欲が出てきた」


――水谷さんは、女優をはじめ、ナビゲーター、お天気キャスターなど、さまざまな領域で活動していますが、そのなかで“歌手”としての活動は、ご自身のなかでどのような位置づけになるのでしょう?


水谷果穂(以下、水谷):今は「女優のお仕事だけを追求していく」とか、どれかひとつに決めず、いろいろなお仕事をやらせていただいています。歌もそのひとつで、それぞれの活動がきっかけになって、また新しい可能性が見出せるといいなと思っています。


――今回リリースされるシングル『君のステージへ』は、昨年の7月にリリースしたデビューシングル『青い涙』以来、約1年ぶりの2ndシングルになります。もともと歌をやりたかったのですか?


水谷:いえ、自分が歌うというのは想像もしてなかったので、歌手デビューの話が出たときは、正直ちょっとビックリしました(笑)。ただ、その前から歌のレッスンは続けていて、ずっと練習はしていたんですよね。それでちょっとずつ歌えるようになったり、誰かに褒めてもらったり……そういう小さいことの積み重ねで、少しずつ歌に対するモチベーションが上がったところで、歌手デビューの話が出て。だから、確かに戸惑いはあったんですけど、ライブハウスでいっぱいライブをやっている時期があって……。


――ほう。


水谷:女優の活動と並行して、いろんなイベントライブに出させていただいて、そこで歌っていたんです。そういうなかで、ちょっとずつ度胸がついてきたというか、だんだん自分が「歌わなきゃ!」という気持ちになっていったんです。やっぱり、私のステージを観にきてくださるファンがいらっしゃるので。最初は、私のことを“女優”として応援してくれる方がライブにきてくださっていたんですけど、その方たちも、最初はドキドキじゃないですか。どんなふうに歌うんだろうって(笑)。だから、見守ってもらいながら、という感覚ではあったんですが、次第に来て下さる方たちの期待に応えたいとか、自分のなかでもモチベーションが上がっていって。もっと挑戦したいとか、歌が上手くなりたいなって思ったり。そういうものの積み重ねで、これまで歌ってくることができました。


――女優の仕事は、舞台を除けば、それほど客前に立たない仕事のように思いますが、ライブはお客さんの前に出ずっぱりで……そこはやっぱり、ちょっと勝手が違ったのでは?


水谷:そうですね。そもそもステージに立って、お客さんに向かって何かを話すこと――ライブのMCとかも、最初は何をしゃべったらいいのか、全然わからなくて。そういう機会は、女優の仕事ではなかなか体験できないことで自分から何かを話すことを求められたりも、あまりなかったので。極端な話、話すのが苦手でも、そこを改善しようとは思ってなかったんです。でも、お客さんの前でしゃべることが仕事になったときには、やっぱり自分自身のことを話さなきゃいけない。最初はすごく苦手意識があったんですが、回を重ねていくうちに、自分のことを話すことで、私のことをファンのみなさんにもっと知ってもらえるし、それによって返ってくることもたくさんあって。そこで、自分自身の素を出していくことの面白さを知ったというか、「あ、こういうこともあるんだな」って、全然違う世界に行った感じがしました(笑)。


――(笑)。その経験は、歌手以外の活動にも良い影響を与えたんじゃないですか?


水谷:そうですね。いつのまにか自分のなかに作っていた、変な壁みたいなものがなくなったと思います。それは、自分で意識していたわけではなく、単に恥ずかしさや照れだったのかもしれないんですが。バラエティ番組やお天気キャスターだったり、ドラマや映画の現場で“役”を演じるのではない、自分自身としてお仕事をしているときに、その場に居やすくなったというか。それはやっぱり、ライブで話したりして、水谷果穂自身として話す機会が増えたのが、すごい大きかったんだろうなと思います。


――そういうなかで、2枚目のシングルを出すというのは、すべてが初めての経験だったデビューシングルのときと比べると、水谷さん自身の心持ちも、かなり違うんじゃないですか?


水谷:そうですね。前回のシングルから1年近く経って、その間に幅広い経験もさせてもらったので。今回の「君のステージへ」は、こういうふうに歌いたいとか、こういう感じの曲が良いなという欲が出てきたかなと思います。


――今回の「君のステージへ」は、前シングル「青い涙」よりも、ちょっとだけアップテンポな明るい感じの曲になっていますが、最初にデモを聴いたとき、どんな印象を持ちましたか?


水谷:他にもいくつかの曲を歌っているなかで、この「君のステージへ」に出会いました。そのなかでもこの曲は、特に爽快感がある、爽やかなイメージが残っていました。仮で歌ったときも、「あ、歌っていて、本当に気持ちのいい曲だな」と感じましたね。


――本番のレコーディングでは、どんなところを意識して歌ったのでしょう?


水谷:いちばん意識したのは、最初のサビに入る前の歌のところですね。サビですごく盛り上げたくて、最初のところはあえて抑えて歌うようにして。それによって、いろんなニュアンスが出せるんじゃないかなと思いました。


■「頑張るスイッチを、そっと押してあげるような歌」


――「青い涙」は、水谷さんが主演する短編映画『明日、アリゼの浜辺で』の主題歌ということでしたが、今回の「君のステージへ」は、現在放送中のアニメ『若おかみは小学生!』(テレビ東京系)の主題歌になっています。


水谷:『若おかみは小学生!』の主題歌としてどこまでアニメの物語に寄り添えるものになれるか、ドキドキしていました。だけど、実際アニメのオンエアを観たら、その世界観がすごくリンクしていることに驚いて。「君のステージへ」は、誰かを応援するような、誰かの背中を押したいという気持ちで歌った曲なんですけど、それがちょうどアニメの主人公の女の子の「小学生なのに突然旅館で働くようになった」という状況とマッチしていたんです。


――この『若おかみは小学生!』の原作小説シリーズは、水谷さんの世代にとっては、かなり馴染みのある小説なんですよね。


水谷:はい。私の世代では、すごく有名な小説だと思います。多分みんな、小学校の図書館とかで読んでいると思うんですよね。だから、最初にお話を聞いたとき、「え、あの小説のアニメ版なの?」って、すごくビックリしたんです。


――アニメのオンエアを観ましたが、番組のエンディングで、かなり良い感じで流れますよね。


水谷:そうなんです(笑)。歌詞も画面の下に、テロップのように出て。エンディングもとても可愛いらしい映像で、しかも曲が引き立つような演出をしてくださっていたので、それはすごく嬉しかったですね。あと、アニメの本編から通してみると、どんなエピソードでも、次に繋げられそうな歌になっていて……我ながら、「ああ、すごくいいな」「合ってるな」と思いながら観ています(笑)。


――この曲を、水谷さんのファンのみなさんに、どんなふうに受け止めてもらいたいですか?


水谷:「青い涙」もそうでしたが、私の歌って、ちょっと落ち着いて聴くような楽曲が多いと思うんです。今回の「君のステージへ」も、誰かを応援するような歌にはなっているんですが、すごいテンションが上がるような曲かというと、そういう感じでもなく(笑)。どちらかと言うと、頑張るスイッチを、そっと押してあげるような歌なのかなと、自分では思っていて。だから、聴いてくれた人が、「よしっ!」って元気を出せるような、そういうきっかけの曲になったらいいなと思っています。


――この曲は、誰かの背中を押してあげる曲であると同時に、どこか水谷さん自身の背中を押すような曲でもあるように思いました。


水谷:うん、そうですね。自分でも、何かうまく進めない、滞ってるなと感じたときに、この曲聴いて、「でも、前に進むしかないんだよな」と思ったり。前に進めば、必ずゴールや目標に近づくことができるんだっていう、すごくシンプルなことに気づけるんです。「君のステージへ」は、そういうまっさらな気持ちに戻れるような歌だと思います。


――なるほど。


水谷:いただいた歌詞を最初に読んだとき、自分にかけてもらっている言葉のようで。レコーディングでも自分に向けて歌っているようなところがあったんです。だけど、何回も歌っていくうちに、だんだん私のことを応援してくれる人たちや、家族、友達を、私が応援してあげたいなって思うようになっていって。それで、そういう思いで歌ってみたら、より歌が自分の中に入ってきたので、今はその意識のほうが強いかもしれないですね。まだライブでは歌っていないんですけど、ライブで歌ったら、きっとすごく楽しく歌える気がしています。


――そう、この曲のMVには、“うたのおにいさん”こと横山だいすけさんが、水谷さんにダンスを教える兄役として出演されていて。


水谷:そうなんです。だいすけおにいさんは、本当に優しくて、テレビの印象そのままな方でした。子どもたちと一緒に歌って踊るのが、すごい楽しくて好きなんだっていう話もしてくださいました。


――地元の静岡から、水谷さんの実際の友人2人も出演しているのだとか。


水谷:そうなんです(笑)。スタッフさんと話しているときに「本当の友達と一緒に撮れたら面白いかもね」という話になって。それで、私が友達に声を掛けてみたら、「出る!」って言ってくれて。だから、何か「ホントに友達来ちゃったよ」みたいな感じなんですけど(笑)。実際の撮影現場も、ちょっと不思議な感じでしたが、彼女たちのおかげで、いつも以上に自然体で撮ることができたと思っています。


――冒頭に言ったように、現在は女優をメインとしつつ、今回のような歌手としての活動など、幅広い領域にチャレンジしている水谷さんですが、ご自分では今後どんな存在になっていきたいと思っているのでしょう?


水谷:私に限らず、今はいろんな活動を並行してやっている方って結構多いと思うんです。私の場合、女優にしても歌にしてもテレビ番組に出演するにしても、それぞれ役割は違いますが、自分としては、いろんなものをやっている感じはしていなくて。むしろ、それぞれの活動が、どこかで全部繋がっている感覚なんですよね。だから、今はそれぞれが別々に見えるかもしれませんが、いつか、それが一体化して、幅が広がっていくような活動を続けていけたらと思っています。(取材・文=麦倉正樹)