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E-girlsの真価は革新的ライブパフォーマンスにあり 最先端のサウンドと演出で輝く11人の個性

2018年06月22日 08:01  リアルサウンド

リアルサウンド

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 E-girlsのパフォーマンスを『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)などのTV番組で目にしたことがある方は少なくないだろう。キャッチーで親しみやすい楽曲と、本格的なダンススキルを持つメンバーによるキレのあるパフォーマンスは幅広い層から支持を得ており、特に同世代の女性にとっては憧れの存在でもある。藤井夏恋や楓、佐藤晴美といったメンバーが女性ファッション誌でモデルとして活躍しているのは、その人気の表れだ。石井杏奈や坂東希、山口乃々華などのメンバーは、女優としても躍進中で、E-girlsが多方面から注目されていることが伺える。


参考:E-girls振付師が語る、11人それぞれのダンサーとしての個性 「鷲尾伶菜は妥協なく踊りきった」


 だが、メディアにおける彼女たちの姿は、華やかで心惹かれるものではあるものの、その魅力の一部を表しているに過ぎない。E-girlsの真価は、なんと言ってもその革新的なライブパフォーマンスにこそある。E-girlsのライブを実際に鑑賞したか否かで、そのイメージは全く異なったものになるだろう。2014年に行われた初のライブツアー『COLORFUL LAND』から、現在開催中の11人体制によるライブツアー『E.G. 11』まで、常に想像を超えるエンタテインメントを実現してきたE-girlsのライブの凄さを、サウンド、パフォーマンス、メンバーの個性という3つのポイントから余すことなく解説したい。


■アリーナをクラブに変える斬新なサウンドメイキング


 E-girlsの楽曲の多くは、思わず口ずさみたくなるようなJ-POPならではの甘いメロディが耳に残るが、トラックは一線で活躍するクリエイターたちが手がけた最新のダンスミュージックである。普段、TV番組やiPhoneなどで聴いていると、可愛らしい印象の方が強いかもしれない。しかしライブでは、まるでクラブを訪れたかのような音楽体験ができるのがポイントだ。


 たとえば、代表曲のひとつ「Follow Me」は、KARAや乃木坂46やAAAといった人気グループに楽曲提供を行っているJam9と、90年代後半から世界中のダンスミュージックシーンで活動してきたnukesことArmySlickが手がけている。耳馴染みの良いキュートなメロディとは好対照に、バウンシーなシンセベースを効かせたこの楽曲は、爆音で浴びるとその印象がガラリと変わる。BPM140近いテンポはダンスミュージックとしてもかなり早く、身体の芯まで響くビートに合わせて踊っていると否応無しに高揚感が訪れ、サビのフックとなる〈Follow Me〉のリピートが恍惚を伴って響くのだ。一度、ライブでこの曲を聴いたら最後、しばらくは脳内で〈Follow Me〉がエンドレスで流れ続けるはずである。


 ライブの定番曲「DANCE WITH ME NOW!」のフロアアンセムぶりも素晴らしい。日本のR&B/ヒップホップ界を牽引してきたヒットメイカー・T.Kura & MICHIYO夫妻による渾身のダンスミュージックで、ブラックミュージックのエッセンスをたっぷりと効かせたファンキーなグルーヴは、アリーナを熱狂へと誘うパワーがある。ライブではさらにアレンジを施したリミックスバージョンが、ノンストップで他の楽曲と繋げられるDJ的な演出が加わることもあり、改めてE-girlsの楽曲群のダンスライクな作りに驚かされることもしばしばだ。


 11人体制になってからは、より玄人好みの高度な楽曲も増えている。たとえば「Pain, pain」。アンビバレンスな恋愛感情をドラマティックに表現したこの曲は、ミステリアスなストリングスが緊張感を煽るAメロから、トラップの複雑なビートを要所に効かせるBメロへと向かい、ブリッジではノンビートで鷲尾伶菜の澄んだ歌声を聴かせたかと思えば、サビでは一転して煌びやかなダンスミュージックに変化するというギミックに富んだ展開となっている。この曲をライブで聴くとどうなるか? 斬新なサウンドメイキングは、ぜひライブツアー『E.G. 11』に足を運んで体感してほしい。


■最先端のテクノロジーを駆使したライブ演出


 初めて武道館でE-girlsのライブ『COLORFUL LAND』を観たときに大きな衝撃を受けたのは、最先端のテクノロジーを駆使したライブ演出が惜しげもなく投入されていることだった。武道館のセンターに据えられたステージは、360度、どの席から観ても楽しめるように様々な工夫がなされていて、レーザーや映像パネルによる演出は、離れた席にも群舞のダイナミズムをしっかりと伝えていた。


 SAMURIZE from EXILE TRIBEの存在を知ったのも、このライブだった。全身にコンピューター制御されたLEDを仕込んだ覆面ダンサーたちによる光のパフォーマンスは、これまでに観たことがないハイテクノロジーなエンタテインメントで、ダンスとLEDの高度な融合に、ライブ演出の新時代の幕開けを感じたものである。もちろん、E-girlsのパフォーマンスにも様々な仕掛けが施されており、見飽きるということが全くなかった。毎年ごとに異なるコンセプトで世界観を構築し、ストーリー仕立てでライブが展開していくのも楽しく、見応えがあった。


 E-girlsのハイクオリティーなライブ演出を支えているのは、LDHのクリエイター集団である「TEAM GENESIS」だ。伝説的なダンスチーム・RAG POUNDのメンバーでもあったコレオグラファーのPATO氏をはじめ、SAMURIZEの生みの親であり“LED博士”とも呼ばれる藤本実氏など、各ジャンルのスペシャリストが結集したTEAM GENESISは、常に最先端のライブ演出を研究しており、そのためE-girlsのライブは毎年大きな進化を遂げているのだ。


 さらに、メンバーそれぞれのアイデアが反映されることで、E-girlsのライブはより一層、刺激的なものになる。ネタバレを防ぐために詳述は避けるが、今回のライブツアー『E.G. 11』は「スポーツ」をコンセプトにしていて、ダンスの概念そのものを覆すようなユニークな演出もある。メンバー曰く「全員がアイデアマン」とのことで、随所に観客を楽しませるための工夫が凝らされているのは、その表れだろう。ちなみに今回は、ブラックライトを使った演出が抜群にかっこよかったことを付け加えておきたい。


■メンバーそれぞれの魅力が爆発!


 斬新なサウンドメイキングと最先端のライブ演出によって輝くのは、メンバーたちの個性だ。


 パフォーマー陣でまず目を惹かれるのは、SAYAKAとYURINOだろう。最前列でパフォーマンスすることが多い二人は、小柄ながらスキルフルなダンサーで、特にヒップホップダンスをグルーヴィーに表現するのに長けている。ストリート感覚に溢れたファッションと、明るい笑顔も二人のチャームポイントだ。


 彼女たちと好対照なのは、“ツインタワー”の相性で親しまれる佐藤晴美と楓だろう。ジャズダンスのスキルを持つ佐藤晴美と、ハッピーなバイブスを持つ楓のダンスは、繊細さと伸びやかさを兼ね揃えており、長い手足を活かした気品のある動きに魅了される。さすがはモデルとしても活躍する二人である。


 俊敏なダンスが持ち味の須田アンナと、雅やかなダンスを得意とする坂東希も、魅力的な対比となっている。それぞれHappiness、Flowerと対極的なグループで活躍する二人だけに、そのダンスの違いを見ることで、E-girlsの表現の幅広さを感じることができるはずだ。


 ライブでもっとも印象が変わるのは、女優としても活躍する石井杏奈と山口乃々華の最年少コンビかもしれない。映画作品などでは可憐で清楚なイメージを打ち出している二人だが、ひとたびステージに上がると、ダンサーとしてのストイックな顔を見せてくれるのである。前述の「DANCE WITH ME NOW!」や、新曲のダンスナンバー「Show Time」などでは、普段のイメージとのギャップもあり、そのキレのあるパフォーマンスとクールな表情に心を奪われることうけあいだ。前列で鑑賞していて石井杏奈と目が合おうものなら、たとえ気を強く持っていたとしても、簡単にノックダウンされてしまうことだろう。


 そして、鷲尾伶菜、藤井夏恋、武部柚那の3ボーカル。リードボーカルを務める鷲尾伶菜の声はどこまでも伸びやかで、藤井夏恋のタイトな歌い回しが楽曲全体を引き締め、武部柚那のハイトーンボイスが彩りとなるーーまさに三位一体といえるマイクリレーによって、E-girlsの楽曲はさらに表現としての明瞭さを増したといえるだろう。また、この組み合わせのバランスを意図的に変えることによって、バリエーション豊かな楽曲をものにすることができたのも、11人体制による進化の一つだ。


 11人体制によって獲得した新たな魅力を感じるうえで、ぜひ注目して欲しいのは、やはり「Show Time」のパフォーマンスである。“E-girls史上最強のダンス曲”を謳う同楽曲は、パフォーマー全員のダンススキルを最大限に引き出すべく作り込まれたハイレベルなコレオグラフに加えて、藤井夏恋と武部柚那のシンギング・ラップを軸に据え、鷲尾伶菜の歌声を飛び道具的に活用するというコペルニクス的転回のボーカル編成によって、これまでにないE-girlsを心ゆくまで堪能できる仕上がりである。ライブツアー『E.G. 11』では、さらにあっと驚く演出が施されているので、その目で確かめる日を楽しみにしていてほしい。(松田広宣)