『荒木飛呂彦原画展 JOJO 冒険の波紋』の記者発表会が、東京・六本木の国立新美術館で行なわれ、荒木飛呂彦や国立新美術館館長・青木保らが登壇した。
8月24日から国立新美術館で開催される『荒木飛呂彦原画展 JOJO 冒険の波紋』。昨年に30周年を迎えた漫画『ジョジョの奇妙な冒険』の初公開作を含む原画や関連資料を展示する「JOJOの祭典」だ。彫刻やファッション、映像などの分野で活動する「JOJO派」アーティストたちによるコラボ作も展示される。
■荒木飛呂彦「連載開始30周年。集大成です」
記者発表会に登壇した荒木飛呂彦は、「『ジョジョの奇妙な冒険』が連載開始してから30周年。集大成です。この国立美術館という場所で開催できることを本当に光栄に思います。国の文化として何かお役にたてるならものすごく嬉しいと思います」と挨拶。
本展は中学生以下は入場無料となるが、「印刷とは違ったものが原画には必ずある。『ジョジョ』には友情・努力・勝利というものが描かれていますが、絵としての発想や絵を描くときの考え方、そういうもので若い人の勉強や仕事における考え方の役に立ちたいなというのが密かな僕の野望でした」と明かした。
■空条承太郎とDIOが描かれたキービジュアルがお披露目。構図やポーズのこだわりも明かす
記者発表会では、『荒木飛呂彦原画展 JOJO 冒険の波紋』が11月25日から大阪・大阪文化館 天保山でも行なわれることが発表。あわせて東京展、大阪展それぞれのために描き下ろされた2種のキービジュアルがお披露目された。
東京会場のキービジュアルに登場するのは、荒木が「自分の中では最強なのかな」と語るキャラクター・空条承太郎。富士山をバックに承太郎とそのスタンドのスタープラチナが描かれている。
東京会場と2枚1組として制作されたという大阪会場のビジュアルにはDIOとそのスタンドであるザ・ワールドが描かれている。荒木は「悪役が大阪っていうのはあれなんですけど」と笑わせつつ、「とにかく最強の2人です。これをペアにした2枚組ということで描きました」と明かす。
さらに「富士山の三角と、DIOとDIOのスタンドがいる月の円という絵画的な構図にも注目していただきたい。色も夜と昼というイメージで描きました。自分でもとても想いを込めた作品」「風神雷神から発想を得たというのもあるし、風神雷神と捉えても良い。対照的に善悪の象徴ではあるが、僕は1人の神格化されているキャラクターとして描いた」と対になった2枚の絵に込めたこだわりを披露した。
また描かれたDIOと空条承太郎のポーズについては「DIOは一応敗北しているので感慨にふけっている。(ロダンの)『考える人』のような、石仮面の上に肘という構図でこだわった」「承太郎はクリント・イーストウッドからきている決めポーズなんです」。
■実物大の12体のキャラを描いた12点の新作大型原画を展示
展覧会は「ジョジョクロニクル」「宿命の星 因縁の血」「スタンド使いはひかれ合う」など8章で構成され、テーマに合わせて豊富な原画の魅力に触れることができる。さらに記者発表会では、本展のために描き下ろした、会場でしか見ることのできない新作が展示されることが明らかになった。
出来上がったばかりだというこの新作は、約2メートルの大型作品12点。荒木が「実物大のキャラクターを描こう」との目的で制作した12のキャラクターとそのスタンドの原画となる。「キャラクターが実物大なので、同じ場所に存在しているように」との思いで描いたという。
また荒木は本展の音声ガイドにも参加。会場では荒木の解説を聞きながら作品を見て回ることができる。
■「漫画界に感謝。先輩方の作品や助言がなければ『ジョジョ』はなかった」
最後に荒木は次のように締めくくった。
「『ジョジョ』の原画展については、漫画界に感謝をしたいと思います。手塚(治虫)先生をはじめ、先輩方の作品や助言がなければ『ジョジョの奇妙な冒険』は影も形もなかったと思います。また私より年下の漫画家のみなさんが盛り上げていただいているので、今回の国立新美術館での開催があると思います。みなさまありがとうございます」。
そして自身の口から『ジョジョの奇妙な冒険』の第5部にあたる『ジョジョの奇妙な冒険 Parte5 黄金の風』のアニメ化を発表した。
■国立美術館で個展を行なうのは現役の漫画として初めて
国立美術館で漫画家の個展が開催されるのは、手塚治虫以来28年ぶり2人目。現役の漫画としては初めてのこととなる。
2015年から『ニッポンのマンガ*アニメ*ゲーム』展などを開催し、日本のアニメやゲーム、漫画といったこれまであまり美術館が取り上げてこなかった分野に力を入れてきたという国立新美術館では、『ジョジョの奇妙な冒険』第8部にあたる『ジョジョリオン』が2013年に『第17回文化庁メディア芸術祭』マンガ部門大賞を受賞した際に同館で受賞作品展が行なわれたことや、『ニッポンのマンガ*アニメ*ゲーム』展にも荒木の作品が出展されていたことから荒木とのつながりが生まれた。
国立新美術館の主任研究員・教育普及室長の真住貴子は、同館で荒木の展覧会を開催することについて「国立の美術館で展覧会をやるにふさわしい実力をお持ちだということは申し上げる必要もないと思うが、これまでの荒木先生の展覧会とは違った切り口で漫画の新しい可能性をお見せできる展覧会になるというのが最終的な開催の決め手」と明かす。
「荒木先生の作品はアニメやドラマ化といったメディアミックスを超えて、現代アートやファッションとのコラボレーションなど新しい展開を見せている。王道の漫画でこれだけ長く愛されている作品が新しい切り口で漫画の可能性を切り開いているということは、展覧会としても新しい視点を示せるのではないか」という思いが背景にあるという。
さらに「国立の施設でやると『国のお墨付きがついた』と思われたりするが、上から目線で国がこれを見なさいと言う時代ではなく、多くの人に支持されているからこそ国立でみなさまにお見せする義務があるのではないか。ファンのみなさまが開いてくださった展覧会という側面もある」。
■集英社・常務「『ジョジョ』史上最高、空前の祭典」
また同じく記者発表に登壇した同館の青木保館長は国際巡回展である『ニッポンのマンガ*アニメ*ゲーム』展に触れ、「日本のアニメやゲーム、漫画というと世界から引きがあり、ヨーロッパやアジア、南米、ロシアなどからも来てほしいと要望があり、大変ありがたいことだと思っています。そういう状況の中で『荒木飛呂彦原画展』を催すことができて本当に嬉しく、光栄に感じております」。
集英社の常務取締役・廣野眞一は「この原画展は荒木先生のこれまでの執筆活動の軌跡と共に、『ジョジョの奇妙な冒険』の歴史と魅力を詰め込んだ、『ジョジョ』史上最高、空前の祭典となります。同時にこれまでに作品を支持していただいた読者の皆さまへの感謝を込めた展覧会でもございます。荒木先生の作品世界の魅力を全身で体感し、楽しんでいただければ」とそれぞれコメントした。
『荒木飛呂彦原画展 JOJO 冒険の波紋』は、8月24日から国立新美術館、11月25日から大阪文化館・天保山で開催。チケットは完全日時指定制となり、6月23日10:00から先行予約券およびグッズ付先行予約券の販売がスタートする。