2018年06月21日 19:12 弁護士ドットコム
介護従事者が加盟する労働組合「日本介護クラフトユニオン」は6月21日、介護現場で働く人たちが受けているハラスメントの調査結果を公表した。回答者の74.2%が介護サービスの利用者・家族からセクハラやパワハラを受けており、過酷な状況に置かれている実態が浮き彫りになった。
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調査は今年4月から5月に行われ、介護従事者2411人(女性2107人、男性293人、性別無回答11人)が回答。セクハラを受けたことがある人は、全体の29.8%で、性別にみると、女性が32.6%、男性が10.2%だった。パワハラを受けたことがある人は全体の70%で、性別にみると、女性が70.6%、男性が65.9%だった。
「ハラスメントが発生している原因」についての質問(複数回答)では、「生活歴や性格に伴うもの」が63.9%でトップだが、「介護従事者の尊厳が低く見られている」が61.3%で2位。日本介護クラフトユニオンは、介護従事者が利用者やその家族から、低く見られている実態がハラスメントの背景にあると指摘している。
セクハラを受けた人に対して、「どのようなセクハラに遭遇したか」と質問したところ、「サービス提供上、不必要に個人的な接触をはかる」(53.5%)、「性的冗談を繰り返したり、しつこく言う」(52.6%)の順に多かった。
その具体的な内容を一部抜粋する。
・利用者の息子(70歳位)に手を引っ張られ、寝室に連れ込まれて体中を触られる。逃げて退室した。(訪問介護・介護員・女性)
・入浴介助の際、一緒に脱衣所に行くと、服の上からではあるが胸やおしり、股間をさわられた。入浴介助の際ほぼ毎回のようにあった。(グループホーム・職員・女性)
・陰部清拭中、こすってくれと手をさすられた。他の人は出来るのに何でできないんだと罵倒される。(訪問介護・介護員・女性)
・ケア中、性的なビデオを流す。(訪問介護・サービス提供責任者・女性)
パワハラを受けた人に対して、「どのようなパワハラに遭遇したか」と質問したところ、「攻撃的態度で大声を出す」が61.4%で最も多かった。「『○○さんはやってくれた』等他者を引き合いに出し強要する」(52.4%)「制度上認められていないサービス強要する」(31.9%)など、サービスに関するものも多かった。「強くこづいたり、身体的暴力をふるう」(21.7%)のように、刑事事件に発展しかねないものもあった。
具体的な内容を一部抜粋する。
・数年前の話ですが、30分のサービス中に利用者家族(息子)から暴言を言われた。(訪問介護・介護員・女性)
・たくさんありすぎて書ききれませんが、利用者、家族からよく言われるのは「金を払っているのだから、何でもやれ!」です。(訪問介護・介護員・女性)
・居室内の利用者様の傘で、暴言と共に襲われた。物を投げつけられた。(グループホーム・介護員・男性)
・過度なサービス要求をされ、断りを入れると包丁を向けられた。土下座の強要による謝罪を言われ、やむを得ずその旨対応した。(訪問介護・管理者・サービス提供責任者・男性)
今回の調査では、セクハラ・パワハラを受けた介護従事者の約9割に心理的影響が出ていることもわかった。精神疾患を罹患する人もいるほか、離職をしてしまう人も多いという。
日本介護クラフトユニオンは、相談先となりうる管理職や上長の教育を事業者がおこなうことや、行政や国が介護従事者を守るためのルール作りをおこなうことなどを提言するとともに、「介護従事者の尊厳も守られるべき。社会全体で向き合ってほしい」と呼びかけている。
(弁護士ドットコムニュース)