6月16~17日に行われた『第86回ル・マン24時間レース』において、メカクローム製エンジンを搭載するCEFC TRSMレーシングのジネッタG60-LT-P1・メカクロームは、オリバー・ローランド/アレックス・ブランドル/オリバー・ターベイ組6号車がリタイアとなった一方、チャールズ・ロバートソン/マイケル・シンプソン/レオ・ルーセル組の5号車がデビューレースで完走を果たした。
F1直下カテゴリーのFIA F2やGP3などでエンジンサプライヤーを務めるメカクローム。彼らは今シーズン、イギリスの老舗コンストラクターであるジネッタとタッグを組んだ“マノー”ことCEFC TRSMレーシングのマシンに、3.4リッター直噴V6シングルターボエンジン『V634P1』を供給するとともに、サポート体制を構築してWEC世界耐久選手権のLMP1クラスにプライベーターチームとして参戦している。
しかし、同チームは一部のライバルがオフシーズンの間に2万キロ以上の実走テストを実施するなか、わずか2500km未満の走行しか行えなかったばかりか、5月上旬に行われたWEC開幕戦スパ・フランコルシャンでも資金面の問題からレースに参加することができず。誰の目から見ても充分な準備が整わないままル・マンを迎えることとなってしまった。
たとえ万全の準備をしていたとしても、わずかなミスが命取りとなるル・マンは、そんな彼らに試練を与える。2台のジネッタはクラス9、10番手からスタートすると、スタートからわずか1時間足らずでブランドルの駆る6号車にトラブルが発生。一時的にスローダウンを余儀なくされた。
その後、120周を消化した時点で6号車ジネッタがクラス5位、5号車ジネッタが同7位と順位を上げるも、9時間過ぎにテルトルルージュから第1シケインに向かう先でまたしても6号車ジネッタが電気系トラブルによりストップ。ピットに戻ることは叶わず、そのままリタイアを喫すこととなってしまう。
電気系トラブルは僚友5号車ジネッタにも襲いかかる。チームは問題解消にあたりながら走行を続行させるが、17日(日)朝になってクラッチ・マスシリンダーの修理のため長時間にわたるガレージ作業を余儀なくされた。この際、メカクロームとジネッタのスタッフはタイヤカスなどのデブリによって効率の落ちたインタークーラーとエアフィルターの交換を実施している。
チェッカーまで残り数時間というところでガレージがふたたびコースに復帰した5号車ジネッタだったが、レース終盤となって今度はオルタネーターが故障。電力供給が不可能となったため再度1時間の修復作業に取り掛かることなった。
CEFC TRSMレーシングは最終的に、チェッカー直前にマシンをコースインさせ、5号車ジネッタにチェッカーフラッグを受けさせることでデビューレースとなったル・マン24時間でのLMP1初参戦初完走を達成させている。
「ル・マンは我々にとって容易なレースではなく、どれだけの距離を走れるのかまったく予想できなかった」と語るのはメカクロームモータースポーツのマネージングディレクターを務めるブルーノ・エンゲリック。
「我々(の合同チーム)は24時間レースをシミュレートするための耐久テストを行っていないんだ。だから私たち自身、マシンがレースを走りきれるという確信が得られるものを一切持っていなかった」
「最後の1時間は壊れたオルタネーターの代わりにバッテリーで(エンジンを)作動させなければならなかったが、最後の瞬間までエンジンは問題なく作動していた。しかし、問題の起こった部分もまたメカクロームの責任であるため、何が起こったのかを調査しなければならないね」
エンゲリックはメカクロームとしてLMP1プロジェクトに関わることを「非常に誇りに思っている」と語る。
「ジネッタ、マノー(CEFC TRSMレーシング)、メカクロームは、そのすべておいて完全に手を取り合っており、最後まで決して諦めなかった。我々は将来的にWECの強豪チームになれると信じている。そして、今年のシルバーストン、富士、上海でのレースを楽しみにしているんだ」
「(ジネッタのオーナーである)ローレンス・トムリンソン氏、(マノー代表の)グレーム・ロードン氏、(同じくマノー代表の)ジョン・ブース氏、そしてこの合弁会社の支援をしてくれたメカクロームの経営陣にも大変感謝している」