第86回ル・マン24時間耐久レースは6月16日~17日、決勝レースが行われた。史上まれに見る激戦区となったLM-GTEプロクラスはポルシェGTチームのミハエル・クリステンセン/ケビン・エストーレ/ローレンス・ファントール組92号車ポルシェ911 RSRが優勝。リヒャルド・リエツ/ジャンマリア・ブルーニ/フレデリック・マコウィッキ組91号車が2位に入り、ポルシェは創業70周年を「パーフェクトな週末」で終えた。
ル・マン24時間でその歴史を築いてきたポルシェにとって、2018年は、なんとしても勝たなければならないレースだった。GTカテゴリーへの集中を決めた初年度であり、創業70周年を祝うアニバーサリーイヤーであったからだ。17台もの強力なラインアップが揃ったクラスではあったが、そのミッションは見事完遂されることになった。
WEC世界耐久選手権にフル参戦している2台、アメリカで活躍する2台という4台体制で挑んだ今季、予選では91号車がポールポジションを獲得し、92号車が2番手に。アメリカ組の93号車(パトリック・ピレ/ニック・タンディ/アール・バンバー)が6番手、94号車(ロマン・デュマ/ティモ・ベルンハルト/スヴェン・ミューラー)が8番手と上位を占めていく。
迎えた決勝では、91号車、92号車がレースを優位に進めていくが、同じく4台体制を敷くフォード勢、そして決勝ペースが速いBMW勢がそのポジションを脅かしてくる。LM-GTEプロクラスは上位から下位までテール・トゥ・ノーズのバトルが延々と続き、テレビの中継画面はその様子に釘付けとなった。
92号車、91号車、さらにフォード勢は序盤からバトルを繰り返しながら周回を重ねるが、スタートから3時間38分が過ぎた頃、このレースで初めてのセーフティカーが導入される。この直前にピットインしていた92号車が、コース復帰のタイミングに恵まれ先行。レースをさらに優位に進めていくことになる。
一方、アメリカ組の94号車にはトラブルも襲いかかった。スタートから6時間半というところで、ロマン・デュマのドライブ中にサスペンショントラブルに見舞われ、リタイアを喫してしまった。また、9時間が近づこうかというタイミングで、93号車はピットイン時にオルタネーターのトラブルに見舞われ25分をロス。一時はトップ3独占も見えていただけに悔しい結果となった。
レース後半に向け、1971年にル・マン24時間を戦ったポルシェ917/20のカラーリングである“ピンク・ピッグ”をまとった92号車は、機械仕掛けの時計のように安定したラップを刻み続け、91号車に対し一定のリードを保っていく。一方、91号車はまたも2台のフォード勢とバトルを展開。日本でも戦ったフレデリック・マコウィッキがサーキットを沸かせる。
最後までパーフェクトなレースを展開した92号車は344周を走りきり、トップチェッカー。ポルシェにとって106勝目のクラス優勝を成し遂げた。さらに、往年のロスマンズカラーをまとった91号車も2位に入りワン・ツーフィニッシュを達成。92号車は、1971年のポルシェ917/20が果たせなかった勝利を38年ぶりに成し遂げてみせた。
「ポルシェにとってパーフェクトな週末だ。私たちのアニバーサリーイヤーに、これ以上のことを望むことは不可能だろう。こういったことを事前に計画しておくことは不可能だが、それを成し遂げたときの感情は言い表せないほどだ。この成功を可能にしたドライバー、チーム、そしてすべてのポルシェ従業員に“おめでとう”と言いたい。私はこれを大いに誇りに思う」とチェアマンのヴォルフガング・ポルシェ博士はコメントを残した。
ポルシェにとってまさしくパーフェクトだったのは、LM-GTEアマクラスで、デンプシー・プロトン・レーシングの88号車ポルシェ911 RSRが優勝。両クラス制覇を成し遂げたことだ。「言葉にできない喜びだよ。どれほど誇らしいか伝えきれないし、ポルシェにとっても喜ばしい」と共同オーナーのパトリック・デンプシーはレース後語った。