オーストラリアで長い歴史を誇る人気ツーリングカー・シリーズ、VASCヴァージン・オーストラリア・スーパーカーの第7戦ダーウィン・トリプルクラウンが6月15~17日の週末に開催され、DJRチーム・ペンスキーのスコット・マクローリン(フォード・ファルコンFG-X)がレース1を制して今季6勝目をマーク。続くレース2でも連勝を狙うが、彼のフォードはスタート早々に白煙を上げ、代わってエレバス・モータースポーツのデビッド・レイノルズ(ホールデン・コモドアZB)が今季初勝利を挙げた。
2018年シーズンのVASCを席巻する勢いのマクローリンは、ここ豪州北端のヒドゥンバレー・レースウェイでもプラクティスから速さをみせ、順当にポールポジションを獲得するかに思われたが、彼のフォード・ファルコンに立ちはだかったのはエレバス・ペンライト・レーシングのレイノルズと、ニッサン・モータースポーツのリック・ケリー(ニッサン・アルティマ)で、レイノルズはレース1を、プラクティス1で最速のケリーがレース2のポールポジションを獲得。それぞれがマクローリンを2番グリッドに押し留める意地をみせた。
土曜のレース1スタートから、マクローリンを抑えて首位を快走したレイノルズだったが、序盤のピットストップでポジションを失うと、レース残り20周を切った段階で5台以上の集団バトルに巻き込まれさらに後退。
ミドルスティントで一時首位に立ったアルティマのケリーも、最後のストップを早める戦略を採らざるをえず、結局6位までダウン。
その真逆のストラテジーで各ストップを引っ張り、終盤2番手まで浮上してきたのは、名門トリプルエイト・レースエンジニアリングのSVGこと、シェーン-ヴァン・ギズバーゲンのホールデンで、レッドブル・レーシング・オーストラリアのクルーは迅速な作業で最後のストップを終えると、首位を行くマクローリンを視界に捉えることに成功。
ファイナルラップに向けフォード・ファルコンFG-Xのテールに迫った2016年王者SVGだったが、ペンスキーのエースをオーバーテイクするには至らず。マクローリンが0.4秒差という薄氷のマネジメントで42周のトップチェッカー。2位SVG、3位にポジション挽回のレイノルズが入る表彰台となった。
続く日曜のレース2は、ポールスタートのカストロール・レーシング、ケリーのアルティマと、フロントロウ、マクローリンが序盤から激しいマッチレースを展開。
しかしロングストレートを持つコース特性から、ドラッグを減らしてバトルを優位に展開しようと、アルティマのテールに張り付き続けたマクローリンに異変が遅い、彼のファルコンFG-Xから白煙が上がる事態に。
チームはテレメトリーからすぐさまオイルの温度上昇を確認し、マクローリンに対し「フレッシュエアの状況を確保」するよう通達。このオーバーヒートにより、誰の目にも70周の決勝レースを走り切るのは難しいだろう、との観測が広がるなか、55周目にコース上のデブリ回収でセーフティカー(SC)が導入された時点でもマクローリンはコース上で粘りのレースを披露した。
オイルを吹く状況は変わらないものの、徐々に白煙の量が減りつつあったペンスキーのファルコンは、リスタート時点でレイノルズに次ぐ2番手を走行。
このSCを利用してふたたびピットを引き延ばしていたレッドブルのSVGが、現王者でチームメイトのジェイミー・ウインカップ(ホールデン・コモドアZB)の3番手に続き、4番手に浮上してくる。一方、ポールシッターのケリーはピットストップでポジションを落とすRBRA勢とは逆の展開となり、最終的に5位でチェッカー。
レース1ポールも勝利を逃していたレイノルズが今季初勝利を飾って選手権3位に浮上するとともに、トラブルを抱えながらもマシンをゴールまで運び、2位表彰台を確保したマクローリンが選手権リードをさらに拡大することに成功した。
「最初のスティント、リックの後ろを走っているときに無線で警告を受けたんだ」と、レース後に状況を振り返ったマクローリン。
「ルード(・ラクロワ/担当エンジニア)は『マシンは大丈夫だが、フレッシュエアを探せ』と言ってきた。その時点で何か正しくないことが起きているとは思ったけど、その後何度かマシンのリヤから白煙が上がっているのが見え、キャビンの中にも煙が入ってきて『これはヤバい』と感じたよ」
「最後のピットアウトは本当にクレイジーだった。室内は煙で真っ白だったんだ! あれは明らかにタイヤスモークの類ではなかったね」
「僕らは2台のマシンともに、オイルのオーバーヒートの問題を抱えた。この後、詳しく調査してみる必要がある」
次戦VASCの第8戦タウンスビル400は、7月6~8日に市街中心部の特設ストリートコースを舞台に開催される。