2018年06月20日 10:52 弁護士ドットコム
景品が取れないように設定したクレーンゲームを稼働させていたゲームセンターの経営者らが6月12日に有罪判決を受けました。
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朝日新聞などによると、この経営者は大阪市内の2店舗で、8人から計約123万円をだまし取ったと認定されました。1ゲーム1000~5000円で、「今やめるともったいない」などと客をあおっていたそうです。
経営者らは「詐欺罪」で起訴され、(1)経営者に懲役3年執行猶予4年、(2)元従業員3人に、それぞれ懲役1年6カ月執行猶予3年の刑が言い渡されています。被害者に弁償し、閉店したことも考慮されました。
クレーンゲームの中には、「これ絶対取れないだろう」というものもあります。一般的に「景品が取れない」場合は、今回のように詐欺罪になってしまうのでしょうか。大村真司弁護士に聞きました。
ーー景品が取れないクレーンゲームは「詐欺」なのでしょうか?
私は、クレーンゲームで詐欺罪になることはないと思っていて、今回の判例は正直驚きました。色々調べてみたのですが、今回の事例は機械の特殊性が関係しているのではないかと思います。
詐欺罪というのは、人を騙して金品を交付させる犯罪です。要件として、(1)人を騙す行為(欺罔行為)、(2)被害者が騙されること、(3)その誤信に基づいて金品を交付することが必要です。
クレーンゲームと言われて、私がイメージするのは、昔ながらのアームを動かして景品をつかんだり、すくったりするものです。アームは自分の思い通りに動くけど、景品が難しい位置にあるとか、アームの力が弱いためにほぼ取れないというときに、詐欺罪は適用できるのかを考えてみましょう。
この場合、(1)の「欺罔行為」が存在するかという点で大きな問題になるのが、「絶対に景品を取ることが不可能」と言い切れるかということです。また、景品を取るのが難しいのは、少なくとも何回かやれば分かるはずですし、(2)の「客が騙された」と言えるのかも疑問です。そうすると、詐欺罪成立は難しいと考えます。
ーーだとすれば、今回の件で有罪になった理由は何だと考えられますか?
報道によると、問題のゲームセンターには、はさみがついたクレーンを動かし、景品をぶら下げている紐を切るタイプのゲーム機がありました。
停止ボタンを押した際、操作者の意思とは無関係にはさみの位置がズレ、うまくやっても取れないことがあるようです。つまりパチスロのように、腕と運を両立させる前提のゲームだといえます。
この「ズレる」確率は設定により変更できたようで、設定によっては絶対に取れないようにもできたみたいです。この機能を悪用し、店員が見本を見せるときには簡単に取れる設定にし、客が使うときには、絶対に取れない設定に切り替えていたとのことです。
取れると思わせておいて絶対に取れない、しかも、それを店員が見本を見せてあおっているのですから、どう考えても(1)「欺罔行為」ですし、(2)「客が騙された」のも間違いないですね。判決では「犯行は組織ぐるみで常習的」とも指摘されていました。
なお、仮に店員のあおり行為がなくても、取れる確率ゼロの設定で運用していれば、詐欺罪でしょう。有料で景品を取るゲームが置いてある以上、うまくやれば取れると思わせていると言わざるを得ませんから。しかし、そもそも機械に何でそんな設定があるのか謎ですね。
ーー純粋な技術だけでは取れないクレーンゲームもあるんですねぇ
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
大村 真司(おおむら・しんじ)弁護士
広島弁護士会所属。日弁連消費者問題対策委員会委員、広島弁護士会 非弁・業務広告調査委員会委員長、消費者委員会委員、国際交流委員会副委員長、子どもの権利委員会委員
事務所名:大村法律事務所
事務所URL:http://hiroshima-lawyer.com