一般社団法人、日本禁煙学会は5月末、「2017年度無煙映画大賞」の結果を発表した。同賞は2017年度中に一般公開された日本語映画(時代劇とアニメは除く)で、作中にたばこの煙が出ず、誰もが楽しめる内容である作品に贈られる。
作品賞は『ミックス。』(石川淳一監督)、特別賞は『笑う101歳×2 笹本信子 むのたけじ』(河邑厚徳監督)と『米軍が最も恐れた男 その名はカメジロー』(佐古忠彦監督)が受賞した。
女優賞は永野芽郁さん(『ミックス。』『PARKS パークス』『ピーチガール』)、男優賞は亀梨和也さん(『美しい星』『PとJK』)、監督賞は英勉監督(『トリガール!』『あさひなぐ』)となった。
「昔、石原裕次郎の真似をして喫煙するようになった人がいた」
作品賞を受賞した新垣結衣さんと瑛太さん主演の『ミックス』は、「事情を抱えた登場人物が卓球の男女混合ダブルスを通して人生を再生させる物語をコメディタッチで描き、誰でも楽しめる作品」と評価。脚本と演技を褒めた上で「元気が出てくる映画」としている。
同作にも出演していた女優賞の永野芽郁さんについては「多くの無煙映画に出演しタイプの違う女性を演じ分けた」とコメント。また、監督賞の英勉監督については「地味な(部活の)種目を紹介し、いわゆるスポ根ものとは一線を画するさわやかな作品」と評価している。
同賞は2004年度から開催。映画などでたばこの広告・宣伝を禁止する「たばこ規制枠組条約」の啓蒙を目的としている。審査委員長を務める日本禁煙学会の見上喜美江さんは次のように語る。
「『5月31日世界禁煙デー』のプログラムとして表彰式を行うこともあります。受賞者から『こういう賞があることを初めて知りました』という言葉をもらうことが多いですね」
同賞の狙いのひとつに「たばこの害から観客を守ること」もあるといい、
「映画の喫煙シーンがきっかけで依存症になる人も多いです。古い話になりますが石原裕次郎さん全盛期に『彼の真似で喫煙した』という人が身近にいました。アメリカの未成年を対象にした調査でも、俳優たちがきっかけで喫煙を開始したという結果が出ており、映画の存在は大きいとされています」
とコメントした。
汚れた灰皿賞大賞は『火花』 「話題性がある作品にたばこの露出が多いことは残念」
誰もが楽しめる無煙映画大賞がある一方で、「汚れた灰皿賞」も設立している。「喫煙シーンの多い映画に対して授与される不名誉な賞」として2010年から実施。子どもや妊婦の前で喫煙のほか、
・予告編・チラシに喫煙シーンがある
・喫煙シーンが無くてもパッケージをアップで写すなどの表現がある
・飲食店店内、飲食店スタッフなどの喫煙
・たばこだけでなくライターの独特の音
・「たばこ」の看板やのぼり、コンビニのレジ後ろのたばこの陳列棚
などから総合的に判断して決定している。2017年度「汚れた灰皿賞」大賞は菅田将暉・桐谷健太主演の『火花』(板尾創路監督)。理由として「話題性があり、未成年が観たくなる作品にたばこの露出が多いことは残念」と公式サイトでコメントしている。
他にも『新宿スワン2』(園子温監督)、『3月のライオン 前後編』(大友啓史監督)、『キセキ あの日のソビト』(兼重淳監督)、『愚行録』(石川慶監督)が作品賞となっている。『3月のライオン』についてはかつて将棋界のスポンサーがたばこ会社であったことを挙げ、
「今でこそたばこ規制枠組条約効果で子会社の食品メーカーの冠になりましたが、旧態然とした慣習は残っているようです。未成年の対戦相手にタバコの煙を吹きかける場面などは暴力(スモークハラスメント)以外の何者でもありません」
としている。こうした受賞作品の制作サイドには「次回作ではたばこについても考慮して」という旨を伝えているという。これらの賞について見上さんは「目指すところはたばこが過去の産物となり『無煙映画大賞』が不要になること」といい、
「個人的に1993年から映画のたばこシーンをチェックしています。理由は『私がもし俳優だったら』『スタッフだったら』と考えた時、吸わされている俳優が気の毒だったからです。私の願いは、映画がきっかけで制作者も観客もたばこによる被害を受けず、お互いは末永く映画を楽しめることです」
と語った。