TCR規定を採用して2シーズン目を迎えたSTCCスカンジナビアン・ツーリングカー選手権の第2戦アンダーストープ・ラウンドが6月16~17日に開催され、レース1はフィリップ・モーリン(セアト・クプラTCR)がPWRセアト・ディーラーチームを率いてワン・ツー・スリー・フィニッシュを飾りキャリア初勝利をマーク。レース2はブリンク・モータースポーツのトビアス・ブリンク(アウディRS3 LMS)が勝ち、アウディにとってSTCCで11年ぶりの勝利をもたらした。
開幕戦で圧倒的強さをみせたPWRレーシングのセアト・クプラTCR勢は、選手権リーダーのチーム代表、ダニエル・ハグロフと王者のロバート・ダールグレンを筆頭に、このアンダーストープでも猛威を振るうと予測されていたが、その勢いに待ったを掛けたのはWorldRX世界ラリークロス選手権の現役王者で、今季父のチームからSTCCにフル参戦するヨハン・クリストファーソン(フォルクスワーゲン・ゴルフGTI TCR)だった。
予選でハグロフを抑えてポールポジションを獲得したクリストファーソンは、レース1スタートでも危なげなくホールショットを決め、そのままレースを支配するかに見えたが、オープニングラップの早い段階からセアト・ディーラーチーム勢が逆襲。
ハグロフ、モーリンの2台がすぐさまWorldRX王者を捉え、リードを広げていく展開に。一方、もう一台のセアトである王者ダールグレンはスタートでミスし、ウェスト・コースト・レーシング(WCR)のフレデリック・エクブロム(フォルクスワーゲン・ゴルフGTI TCR)、レストラップ・レーシングのアンドレアス・ウェルナーソン(フォルクスワーゲン・ゴルフGTI TCR)のゴルフ2台に先行を許す苦しい立ち上がりに。
それでも他を圧倒する決勝レースペースを有するセアトは、2周目にウェルナーソン、3周目にエクブロム攻略を助け、そのままクリストファーソンを猛追。同ラップ中にクリストファーソン・モータースポーツ(KMS)のゴルフGTIを視界に捉えるとすぐさまオーバーテイクを仕掛け、早々にPWRがワン・ツー・スリー体制を築くことに成功する。
また、同じタイミングで先頭2台にも動きがあり、ルーキーのモーリンがチーム代表のハグロフをパスし首位に浮上。そのまま2.6秒のリードを築き12周のレースを走りきった。
2位ハグロフ、3位ダールグレンと続きPWRレーシングが表彰台を独占し、4位にはエクブロム、ウェルナーソンのバトルに乗じてポジションを上げ、クリストファーソンもかわしてきたホンダ・シビック・タイプRのマティアス・アンダーソンが入った。
またPWRレーシングの紅一点、ミカエラ-アーレン・コチュリンスキー(セアト・クプラTCR)も8位に入り、今季初ポイントを獲得している。
続くレース2は予選トップ10のリバースグリッドとなり、ポールポジションにはレース1で4位に入ったホンダのアンダーソンがつけ、初優勝に向け絶好の機会……かと思われたが、スタートを前にトラックには大粒の雨が落ち、路面は半乾きのダンプコンディションでレーススタート。
その背後、2番手と3番手に並んだのはレース1でコースオフやジャンプスタートのペナルティを受けタフなレースを強いられていたブリンク・モータースポーツ、ミュッケ・オーソンとトビアス・ブリンクのアウディRS3 LMS勢で、1コーナーには3番手のブリンクがチームメイトを制して2番手でターンイン。
しかしレースは直後に、ウェットパッチによるオーバーランやコースオフが多発しセーフティーカー導入となり、グラベルトラップに捕まり身動きが取れなくなったマシンのなかには、レース1勝者のモーリンも含まれる波乱の展開に。
マシン回収後のリスタートで仕掛けたのは王者ダールグレンで、バックストレートからのブレーキングでエクブロムを捉えて4番手に浮上すると、そのダールグレンに追随したハグロフ、レストラップのゴルフGTI、ウェルナーソンも相次いでエクブロムをパッシング。
その同じ周回で、今度は首位を行くアンダーソンのシビックに異変が生じ、右フロントタイヤのパンクで最終コーナーをワイドラン。これでブリンクのアウディRS3が労せずして首位に浮上することとなった。
8周目にはダールグレンとともに首位を追っていたハグロフとウェルナーソンが1コーナーでバトルを演じ、ハグロフが止まり切れずにグラベルへとマシンを落とすと、なんとかコース復帰を果たした彼のクプラTCRもパンクに見舞われ、そのままピットへ。
残り2周となったところで2番手を走行中だったブリンク・モータスポーツの一角、オーソンのアウディRS3 LMSはタイヤの消耗が激しくペースダウンを喫すると、ダールグレン、エクブロム、ウェルナーソン、そしてクリストファーソンが相次いで先行し、6番手にまでドロップ。同じ症状が首位を行くブリンクにも現れるかが焦点となったが、彼のRS3 LMSはペースダウンを喫する前に12周のラップを乗り切り薄氷のトップチェッカー。
このブリンクの勝利で、アウディにとってはTCR規定のSTCC初優勝を記録するばかりでなく、STCCの歴史においては2007年にテッド・ビョークが記録したA4以来、11年ぶりの優勝となり、週末を通じて伏兵ともいうべきドライバーたちが活躍を演じて見せた。
一方、このレース2で2位表彰台を獲得したダールグレンが、チームメイトのハグロフを抜いて12ポイント差でシリーズランキング首位に浮上。次戦第3戦ファルケンベルグは、3週間後の7月7~8日の週末に開催される。