2018年06月19日 06:02 リアルサウンド
馳天馬(中川大志)が、やってしまった。
参考:晴、天馬から“王子様”ポジションを奪う 『花のち晴れ』待ち受けるのは突拍子もないフィナーレ?
今回の天馬の行動は、常に周囲に気を配り、物事に冷静に対処する彼の性格を考えれば当然ではあったが、天馬と過ごす時間に幸せを感じるようになっていた江戸川音(杉咲花)の気持ちをしぼませてしまった。
メグリン(飯豊まりえ)のバースデイ・パーティでケーキが爆発した第8話に続き、音が夜道で何者かに襲われるという事件が起きた『花のち晴れ~花男 Next Season~』第9話。この事件により、うまくいっていたはずの天馬と音の関係にほころびが生じはじめた。
後日、天馬は音から、自分を襲った犯人を裏で操っていたのは天馬を慕う近衛仁(嘉島陸)だと聞かされるが、激昂する音と事件の関与を否定する近衛との狭間で動揺しながら、天馬は音に「何かの見間違いじゃないかな?」と返してしまう。
ふだんは約束を守らないのに、誕生日など大切な日だけは忘れずに祝ってくれる。落ち込んでいるとき、ふいに電話をかけてきてくれる。たとえそれが単なる気まぐれや偶然であったとしても、そんな相手は許せてしまったり、運命的な何かを感じてしまったりする。人間関係、とりわけ恋愛では、地道に積み重ねた優しさや誠実さ以上に、タイミングやポイントを外さない絶妙な言動に心を動かされてしまうことがよくある。
恋人である音が犯人は近衛だと主張しているのに、友人の近衛を疑えるわけはなく、音の証言を鵜呑みにできなかった天馬。一連の出来事を知った神楽木晴(平野紫耀)から「好きな女の言っていること信じなくてどうするんだよ!」と詰められた天馬は、横にいる近衛を気にしながら「音を信じていないわけじゃない」と弱々しく反論。音は天馬の反応に、天馬にとって自分は近衛以下の存在だったのだと思うようになる(以前、天馬が英徳に5000万円寄付してくれたのは忘れてしまったようだ)。さらに、自分が天馬に望んでいた言葉を晴にピタリと言い当てられたことで、一気に晴に気持ちが傾いてしまう。
天馬と音は付き合いはじめ、また、晴とメグリンも“彼女(仮)”の(仮)が取れてカップルとなっていた。しかし、天馬もメグリンも好きな人のそばにいられる幸せを噛みしめつつも、自分たちの関係に自信が持てず相手の顔色をうかがってしまっていて、第9話の天馬は特にそれが顕著で、終始不安げな表情を浮かべていた。
天馬、音、そして晴の恋愛観には少なからず家族が影響している。天馬にとって音は母親を失った悲しみを癒してくれた恩人で、音は天馬の素晴らしさをよく知っているつもりだが、天馬を選んだのは頼りない母親のためであり、かつての家族の暮らしを取り戻すためという理由も含んでいる。そして、晴はと言うと、神楽木家の人間であることを父親に認められたい一心で、メグリンとの交際もその歪な気持ちゆえのものだ。
そんな各家庭の事情を鑑みると、自分の気持ちを抑えて本心とは別の相手を選び、好きになろうと努力してきた音と晴の行動が理解できなくもない。だが、メグリンが身を引くことで四角関係が終息し、再び三角関係に戻ろうとしている。
原作と異なる展開が続き、音をめぐって晴と天馬が剣道、弓道、柔道の武道3種で直接対決する益荒男祭は、晴の父親である巌(滝藤賢一)がけしかける形で決定した。天馬は武道の達人。晴に圧倒的不利なこの対決は果たしてどうなるのか。
LINEで告白するのがごくあたり前なこの時代に、天馬と晴の2人ともが臆することなく真っすぐに音に気持ちを伝えるところがこのドラマの見どころのひとつだろう。ラストシーンでは、晴が路上で後ろから音を抱きしめながら、天馬から視線を外さずにこう言った。「おまえがちゃんと江戸川を捕まえておかないと、誰かにあっという間に取られるぞ」。「おれに」ではなく、「誰かに」と含みを持たせたのがまた秀逸で、紺野亜里沙(木南晴夏)のセリフを借りれば、「もう青春爆発しすぎ!」。
今回は飛び道具的にモデルのメグリンの撮影カメラマンとしてゴールデンボンバーの喜矢武豊を起用、第10話はいよいよ英徳学園のレジェンド、F4の西門総二郎(松田翔太)が満を持して登場する。物語はクライマックスに向けてまた大きく動きそうだ。(古閑万希子)