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SHINeeは“大切なもの”と一緒に歩み続ける デビュー10周年記念アルバムから伝わるメッセージ

2018年06月18日 10:21  リアルサウンド

リアルサウンド

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「SHINee is BACK!」


 SHINeeが沈黙を破って音楽の世界へ戻ってきた。


 昨年、12月に起きた悲しい出来事はまだまだ記憶に新しい。大事なメンバーであり、かけがえのない家族であったジョンヒョンを失った彼らが、音楽の世界に戻ってくるのか、今後どうしていくのかは、多くの音楽ファンが注目をしていたことだろう。SHINeeは、このまま消えていってしまうにはあまりにも惜しい存在だったからだ。


 しかし、SHINeeは新しいアルバム『The Story Of Light』とともに戻ってきた。


■3つのアルバムとタイトル曲で異例のカムバック


 常に革新的なコンセプトと音楽でK-POP界のトレンドリーダーとなってきたSHINeeは、今年デビュー10周年を迎えた。10年という長い月日が経過しても、デビュー当時からの「コンテンポラリーバンド」というコンセプトは変わらず、常に新しい音楽とパフォーマンスを提供してきた。


 今回のカムバックでは、「The Story Of Light Ep.1~Ep.3」 という3枚のミニアルバムと同時に、それぞれ3曲のタイトル曲を2週ごと(5月28日、6月11日、6月25日)にリリースし、音楽活動をするというのだ。通常は1枚のミニアルバム(またはフルアルバム)と1曲のタイトル曲で約1カ月間ほど活動していくが、今回は1.5倍の時間をかけて活動を行うという。ここにもSHINeeらしいチャレンジを感じる。


 5月28日に最初にリリースされた『The Story Of Light Ep.1』のタイトル曲「Good Evening」(オリジナルタイトル「데리러 가(迎えにいく)」)は、90年代のクラッシックR&Bの要素を取り入れたエレクトロポップだ。


 2015年に発表した「View」のようなディープハウスのサウンドも感じられ、オーガニックなリズムが心地よい1曲になっている。世界的なプロデュースチームThe Fliptonesが作曲と編曲に参加し、サビの<데리러 가(デリロガ)>が耳に残る、どこを取ってもSHINeeらしい新しい音楽性とカラーを作り出している。


■ヘビ、キツネ、砂漠、井戸……テーマは『星の王子さま』?


 今回のアルバムのモチーフは サン=テグジュペリの『星の王子さま』だといわれている。実際にメンバーが言及したわけではないので、あくまでファンたちが憶測をしているだけにすぎないが、歌詞やMV、コンセプトフォトの中には『星の王子さま』を連想させるアイテムが散りばめられている。


 たとえば、英語タイトルである「Good Evening(こんばんは)」というフレーズは、地球に降り立った王子さまが出会うヘビと交わした言葉だ。コンセプトフォトやMVに出てくる砂漠や井戸も『星の王子さま』に出てくるシチュエーションだ。


 ジャケットワークからMVまで、アルバム全体を通して出てくるキツネも物語に登場する。王子さまのかけがえのない友達となるキツネは、様々な事を伝える重要な存在になっている。SHINeeは 「Good Evening」 MVの中でキツネに出会い、そしてEp.2の「I Want You」ではキツネを追いかけて森をさまよう姿が描かれている。このキツネはEp.1からEp.3まで通して重要な意味を持つようだ。果たしてキツネが意味するものとは何なのだろうか? それは最後まで見ないとわからないだろう。


 そして、この『星の王子さま』は、ジョンヒョンの愛読書だったことも有名だ。SHINeeにとってもファンにとっても大切な本であり、このカムバックで作品のなかに取り入れたことには、深い意味を感じる。


■菅原小春が手掛ける幻想的な世界観のダンス


 「Good Evening」 のダンスを手掛けたのは、日本人ダンサーである菅原小春だ。彼女はテミンの日本初のソロ曲である「さよならひとり」や、その後の「Flame of Love」、そして2017年に発表された韓国でのソロ曲「MOVE」でも振付を手掛け、「MOVE」のMVでは共演もしている。今回の振付を担当したのは、テミンの強い推しがあったということだが、菅原小春に対するテミンの強い信頼が感じられる。


 今までもSHINeeは仲宗根梨乃やトニー・テスタといった有名な振付師たちと共に、実験的で斬新なダンスを披露してきた。簡単に歌いこなせないような曲を歌いながら、難易度の高いダンスを軽々と(見えるように)踊ってみせる。高い音楽性、そしてそれに伴う高度で完璧なダンスパフォーマンスが、SHINeeの魅力なのだ。


 「Good Evening」は、 浮遊感のあるサウンドに合わせ、柔らかい雰囲気の幻想的なダンスに仕上がっており、今まで多かったテクニカルなダンスとは一味違う世界を醸し出している。これが菅原小春が生み出した新しいSHINeeなのかもしれない。


■デビュー10年を迎えたSHINeeの「決意」


 メンバーのテミンは出演した番組『ラジオスター』で「(この困難に)打ち勝たなければ、メンバーと離れてしまう。それは嫌だから一緒に乗り越えることにした。アルバムをリリースしたこともそうだ」と語っていたが、それこそがSHINeeの決意なのだろう。


 『星の王子さま』には「大切なものは目には見えない」というフレーズがある。SHINeeにも、目には見えなくても存在する大切なものがある。彼らが「続ける」という選択をしたのは、今は見えなくなってしまったけれど、確かにあったジョンヒョンとの絆とともに生きていく決意だったのだろう。再び動き出したSHINeeが今まで以上に自然体のSHINeeであったことが、これを証明してくれたように感じた。(文=西門香央里)