第86回ル・マン24時間耐久レースは6月17日、フィニッシュを迎え、TOYOTA GAZOO Racingのセバスチャン・ブエミ/中嶋一貴/フェルナンド・アロンソ組8号車トヨタTS050ハイブリッドが優勝を飾った。マイク・コンウェイ/小林可夢偉/ホセ-マリア・ロペス組7号車トヨタTS050ハイブリッドは2位となったが、可夢偉はレース後、「正直『やり切った』感じですね」と清々しい表情で語った。
2台体制でル・マン24時間に挑んだTOYOTA GAZOO Racingだが、今季のLMP1クラスはワークス参戦がトヨタのみと、スタート直後から7号車トヨタと8号車トヨタによるマッチレースとなっていく。そんななか、実は7号車トヨタにはトラブルが発生していたという。
「スタートして第1スティントの3周目くらいに、デフのセンサーのトラブルが出てしまって、レース中にセッティングをいじれなくなってしまったんです。それを誤魔化しながら走っていましたけど、限界があった」と可夢偉はレース後教えてくれた。
「それが僕たちにとってはいちばん大きかったですね。セッティングも決まっていませんでしたけど、路面に対して調整できなかったのが大きかったです。途中試行錯誤しながらやっていましたけど、路面コンディションが変わって合わせられなかった。バランスが変わって、もともとアンダーステアだったのがさらにアンダーになってしまった」
途中、僚友の8号車と競り合うシーンもあったが、「8号車とは無駄に戦っても仕方ないと思っていました。まずはトヨタとして勝つことが目標だったので、こちらもリスクをとらずできる限りのプッシュをして、1台に何かあっても1台が走りきることを任務としていた」とリスクを避ける走りに終始。とはいえ速さの面ではセッティングを合わせられる8号車に分があり、朝には8号車が先行。7号車が追う展開になっていった。
そんな7号車だが、フィニッシュまであとわずかという13時20分、可夢偉のドライブ中にスローダウンする光景が映し出される。まさかのトラブルか……!? と思われたが、実は可夢偉が給油に向かうタイミングで「ピットインを普通に忘れました(笑)」というものだったのだ。
8号車と差がついた状態で、「向こうの方が速いですし、こちらがプッシュしたら向こうもプッシュするので。正直、(チェッカーの時に)記念撮影したいと思ってゆっくり走っていたら通過しちゃったんです(笑)」と可夢偉。とはいえ、これは給油を行い大事には至らず、無事にピットに戻った7号車は、その後ペナルティを受けるものの、無事にチェッカーを受けた。
可夢偉も当然『ル・マンウイナー』の称号は欲しかったものだが、レース後「正直『やり切った』感じしかないですね。悔しさとかはないです」と語った。
「8号車が優勝して、チームの一員としては良かったと思っています。チーム全体にもプレッシャーがあって、ここで勝てなかったらどうなるんだろう……と想像している人はたくさんいた。僕たちもそのなかで走ってトラブルなく、アクシデントなく、クルマを壊さず帰ってこられたので、自分たちのできる限りができたと思います」
「今年のWECはスーパーシーズンで、もう一度ル・マン24時間がありますからね。次はしっかりと体制を作って、もう一度チャレンジしたいと思っています」
「チームみんなも努力してきましたし、今まで勝てなかった中で、自分たちの世代でその歴史を変えることができたのはひとつの誇りです。もちろん勝つのが自分だったら嬉しかったですけど、またチャンスはありますからね」