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志尊淳演じるボクテ、秋風塾から涙の旅立ち 『半分、青い。』鈴愛がついに漫画家デビューへ

2018年06月17日 06:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 オフィス・ティンカーベルで働く秋風羽織(豊川悦司)のアシスタントであり、漫画塾「秋風塾」で漫画家デビューを夢見る藤堂誠(志尊淳)、通称・ボクテ。『半分、青い。』(NHK総合)第11週「デビューしたい!」は、ボクテがオフィス・ティンカーベルから出て行くことに。アマチュア時代に「金沢の鬼才」と呼ばれたほどの実力を持ち、「ボクって…」が口癖のゲイの美少年というボクテは、自分をしっかりと持ちながら、同じアシスタント仲間の鈴愛(永野芽郁)やユーコ(清野菜名)を思いやることができる人物だった。


 鈴愛が初めてオフィス・ティンカーベルにやってきたとき、最初に声をかけたのはボクテだった。鈴愛が正人(中村倫也)、そして律(佐藤健)にフられたときも、陰ながら彼女を見守り、ユーコとはまた違う形で鈴愛を支えていた。しかし、アシスタント仲間であり、同じ屋根の下でプロを目指すライバルだったユーコが、先に漫画デビューを果たし、秋風が鈴愛の才能を見出し始めると、ボクテは嫉妬とともに焦る。


 そこに拍車をかけたのが、母親からの呉服店を継がせたいという手紙だった。目に見える結果を残したかったボクテは、鈴愛の「神様のメモ」を基に制作した漫画で『月刊アモーレ』でデビューを飾ってしまう。しかし、秋風の指導のもと作り上げてきたボクテの「女光源氏によろしく」も『月刊ガーベラ』大賞新人賞に選出されていた。鈴愛のアイデアを使ったこと、勝手に『月刊ガーベラ』担当者と密会していたこと、ボクテの背徳行為に秋風は激怒。


 「頑張っているものは報われる。そう信じている。一度は終わったと思った命だ。生き直したい、若い者たちと一緒に」。秋風が菱本(井川遥)にそう打ち明けていた通りに、秋風は秋風塾の3人を信頼し、それぞれが独り立ちする未来を夢見ていたはず。「こんなによくして頂いたのにごめんなさい。先生のことを尊敬していたのに、描く世界が好きだったのに」と秋風に泣きながら謝るボクテ。盗作の載った『月刊アモーレ』を机に置き、1人肩を落とす秋風もまた、思わぬ形で教え子を旅立たせることになってしまった。


 オフィス・ティンカーベルを離れたボクテは、ひとまず二丁目の友達のところに向かうと言っていた。性的マイノリティに少しずつオープンになってきた現代に対して、鈴愛たちが生きる1990年代はまだまだ偏見が強く残っていた時代。ボクテが母親からの手紙に書いてある「ゲイとやらも、漫画とやらもやめて」に、「お母さん。漫画家はやめられても、ゲイはやめられないんだよ。ゲイは職業じゃないからね」と天井を見つめ応える姿は、普段は明るく振る舞うボクテが、珍しく弱さを見せる場面だった。


 ボクテを演じる志尊淳は、ドラマ『女子的生活』(NHK総合)で、生まれたときの体の性別とは異なる生き方をするトランスジェンダー・みきを演じていた。“イマドキ女子”として見た目はもちろんのこと、所作や嗜好性までをも完璧に体現し、その演技は各所で絶賛された。そして今回、志尊がボクテを演じる上で気をつけたことは、絶対にイロモノにはせず、表面的にならないこと。『半分、青い。』公式サイトに掲載されている彼のインタビューによると、志尊は、考え方に至るまでボクテになりきるため、80~90年代の性的マイノリティの方々を取りまく環境について調べたり、実際に当事者として当時を過ごした友人に話を聞くことで、声色や口調、姿勢や所作を形作っていったようだ。仕事場での、背筋をピンと伸ばした姿や、オフィス・ティンカーベルを出て行くときに、鈴愛たちへおしとやかに手を振る身のこなしは、志尊がボクテにイメージした“かわいげのある等身大の男の子”そのものだ。


 芯の強さと優しさを持つボクテは、自らの過ちにより、掴みかけた夢の新人賞を辞退。繰り上げによって、新人賞は鈴愛が勝ち取ることとなる。第12週「結婚したい!」では、ついにデビューが決まった鈴愛とユーコ、さらに事務所を去りいばらの道を進むことになったボクテの絆は消えることなく、また少しづつ交錯していく。予告には律の姿も。鈴愛との別れから2年余り、彼はどのように過ごし、何を思ってきたのか。(渡辺彰浩)