ル・マン24時間レースを運営するACOフランス西部自動車クラブとFIA国際自動車連盟は6月15日、LM-GTEクラスに参戦するマシンの性能を均一化するBoP(バランス・オブ・パフォーマンス)を更新。予選で速さをみせたポルシェ911 RSRに対して10kgの重量追加を決定するなど、16日(土)15時にスタートが切られる決勝レース前に各車の最終性能値が改められている。
自動車メーカー6社のワークスチームが争うLM-GTEプロクラスは例年、レース終盤まで同一周回でのバトルが続く激戦区だ。昨年のル・マンでもファイナルラップの直前までシボレー・コルベットC7.Rとアストンマーチン・バンテージGTEが手に汗握る好勝負を展開し、多くのファンの記憶の中に残っていることだろう。
そんなGTEプロクラスで採用されているル・マン用のBoPは、6月初旬にサルト・サーキットで行われた“ル・マンテストデー”の結果および各マシンから集められた走行データを基に調整がなされたもの。レースウイークの12日にFIAとACOによって交付されたこのBoPは、13日(水)から始まったフリープラクティスと合計3回の公式予選で使用されている。
しかし、その予選ではテストデーから速さを見せているポルシェ911 RSRがフロントロウを独占したほか、クラストップとなったポルシェGTチームの91号車ポルシェが、競合他社を1.5秒以上突き放す3分47秒504という驚異的なラップを記録しており、一部のライバル陣営からは「ポルシェ(とフォードが)速すぎる」という声も上がっていた。
このような結果を受け、FIAとACOは各マシンの性能バランスの再調整を実施。決勝用BoPとして15日付けで発表した。今回の変更点は車両重量の増減による調整が主な内容で、前述のポルシェ911 RSRは従来の1259kgから1269kgへ変更されている。
また、ポルシェに次ぐ速さを見せているフォード・チップ・ガナッシ勢のフォードGTも8kgの追加ウエイトが課され、最低重量が1275kgとなった。
一方、コルベット・レーシングのコルベットC7.Rは5kg減の1249kgに。BMWチームMTEKのBMW M8 GTEとアストンマーチン・レーシングのアストンマーチン・バンテージAMRは、ともに10kgの減量が許可され前者が1271kg、後者は1258kgで決勝に臨むこととなる。
なお、テストデーからトップと大きく引き離されるだけでなく、LM-GTEアマクラスのマシンに対しても劣勢に立たされているアストンマーチンには、ターボチャージャーの最大過給圧をエンジン回転数の4000~7200rpmの間で0.003バール上昇させる追加のパワーブーストが与えられた。
また、6車種の中で唯一重量に変化のないAFコルセのフェラーリ488 GTE EVO(1291kg)は燃料タンク容量による調整が行われ、ガソリンの最大搭載量が92リットルから93リットルへ微増となっている。
■GTEアマクラスでもポルシェに+10kg
今シーズンよりGTEプロクラスと同じミッドシップレイアウトの911 RSRが用いられているGTEアマクラスにもBoPの調整が入った。
対象となったのはクラストップ3を独占したポルシェと、昨年のWECクラスチャンピオンカーであるアストンマーチン・バンテージの2車種で、ポルシェにはプロクラスと同様に10kgの追加バラストの搭載が義務付けられる。
これに対して予選でクラストップのポルシェから3秒遅れとなったアストンマーチンは10kgのウエイト減となった。なお、日本人ドライバーの澤圭太(クリアウォーター・レーシング)と石川資章(MRレーシング)が駆るフェラーリ488 GTEに関しては一切の調整が行われていない。
いよいよ決勝レースが行われる『第86回ル・マン24時間』は16日(土)15時(日本時間22時)、2018全仏オープンを制したラファエル・ナダルのフランス国旗振動によってスタートが切られる予定だ。