2018年06月16日 10:22 弁護士ドットコム
「お客さまが少ないんで、空気を乗せて走ってるようなもんです」。崖っぷちに立つローカル鉄道が、関東の最東端を走っている。醤油や漁港の街として知られる千葉県銚子市にある銚子電鉄だ。5月中旬、ふるさと納税のクラウドファンディング(https://www.satofull.jp/static/projects/city-choshi-chiba/01.php)で車両の検査費を集める取り組みが始まった。目標金額は1000万円で、8月31日まで寄付を募る。
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銚子電鉄の営業区間は、銚子駅から外川駅の6.4km。地元のシンボルとして愛される一方、沿線住民の減少や東日本大震災後の風評被害などの影響を受け、廃線の危機と隣り合わせの状態にある。「苦しい時こそ笑いを」と語る竹本勝紀社長に6月11日、話を聞いた。(概要は以下のとおり)
ーーいまどのような経営状況なのでしょうか
「年間でおよそ4億8000万円の収入があって、そのうちの約7割が『ぬれ煎餅』による販売収入です。残りが運賃収入ですが、運賃収入の約8割が観光客などが乗ることによる定期外収入となっています。つまり、観光客頼みのアトラクション状態です。現状は残念ながら、単月でみると赤字が続いています」
ーー定期利用者などによる固定収入が多く見込めないのは厳しいですね
「はい。沿線人口は2万人もいません。経済合理性から言うと、ここに鉄道があるのはおかしいんです。でも、鉄道は経済合理性だけでは語れない。少なくなったとはいえ、小学生や中学生、高校生は乗っているし、お年寄りも乗っています。『交通弱者の足』としての機能は失われていないんです」
ーークラウドファンディングは目標金額の達成ができそうでしょうか
「今のままのペースでは厳しいかもしれないです。目標を達成するために、さらに話題を提供していく必要があると思っています。導火線に火をつけるために、考えていることがあります。経営が『まずい棒』というのをやろうと思っています」(6月13日時点で、寄付合計は67万5000円)
ーーどういうことですか
「経営がまずいことになっているので、『まずい棒』というお菓子を作って売ろうと思っています。PVも作成します。少しでも話題になって、銚子電鉄を応援してくれる人が増えたらという狙いです」
ーーいつから販売する予定ですか
「7月中には売り出したいと考えています。『苦しい時こそ笑いを』という思いです。目立っていかないと生き残っていけない。我々としては自虐ネタはオッケーなんです」
ーー竹本社長は電車の運転もすると聞きましたが、いつ免許をとったのでしょうか
「2016年に免許を取りました。社員とできるだけ同じ目線でいたかったためです。実技試験が難しかったですが、何とか合格できました。今は他の社員と同じようにシフトに入って、週2回運転しています」
ーー社長に就任したのはいつですか
「2012年12月です。もともと税理士をしていて、社長就任前から銚子電鉄の社外取締役をしていました。前社長が交代するタイミングで就任要請を受けて、引き受けました。人生の集大成は銚子電鉄だという気持ちです」
ーー10年先の銚子電鉄はどうなっているでしょうか
「昨年、台湾の鉄道路線と『姉妹鉄道』になる締結式を開きました。あちらも銚子電鉄と同様に短い距離の路線で、相互に観光客の誘致をより進められたらと考えています。
自分の大きな役割のひとつは、資金調達だと思っています。そのために色々なことに挑戦していきたい。厳しいからといって下を向いていてもどうにもなりません。企業経営としては、会社分割とか大きな会社に株を取得してもらうとか、いくつか選択肢はあるでしょう。銚子のシンボルを存続させなければいけないと思っています」
(※6月25日追記:銚子電鉄が販売を目指す「まずい棒」について、当初の記事では「もちろん、やおきんさんには既にお話を通しています」との記載がありましたが、関連部分を削除します。銚子電鉄より、説明に不十分な点があったので訂正したいと連絡があったためです)
【プロフィール】
竹本勝紀(たけもと・かつのり)。千葉県出身、56歳。銚子電鉄の社外取締役を経て2012年、社長就任。竹本税務会計事務所代表。大学の非常勤講師としてマーケティングなども教える。乗り物が好き。
(取材:弁護士ドットコムニュース記者 下山祐治)早稲田大卒。国家公務員1種試験合格(法律職)。2007年、農林水産省入省。2010年に朝日新聞社に移り、記者として経済部や富山総局、高松総局で勤務。2017年12月、弁護士ドットコム株式会社に入社。twitter : @Yuji_Shimoyama
(弁護士ドットコムニュース)