2018年06月16日 10:22 弁護士ドットコム
保育士が少なくても保育所を設置しやすくする特例を、国家戦略特区の地域に限定して導入することが6月14日に決まったと報じられた。保育所の職員に占める保育士の割合が6割以上などの条件を満たせば、認可保育所と同じように、国が運営費の補助をする。待機児童が解消するまでの期間限定の措置だという。
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保育に従事する職員が原則として全て保育士である認可保育所と異なり、認可外保育施設は3分の1が保育士であればいいことになっている。認可外は、国の基準を満たさないため補助金などの公的支援を得られず、設置が進まない一因になっていた。今回、特区の中なら要件が緩和されて補助金がもらいやすくなるため、施設が増える可能性がある。
報道によると、保育士の配置基準の緩和を提案した大阪府などでの導入が想定されるという。配置する「無資格者」には一定の研修を受けさせるほか、施設を「5年以内に認可保育所へ移行する」などの条件もつく。ただ、5年以内という期間は自治体の判断でより長期にすることも可能。朝日新聞は「期限は形骸化する可能性もある」と伝えている。
今回のニュースを受けて、TwitterなどのSNS上ではさっそく反応が相次いでいる。「苦肉の策だ」と理解を示す声がある一方、「保育士の給与をまず上げるべきだ」「保育士の仕事は誰にでもできるということか」などと反対・批判する声が少なくない。
弁護士ドットコムニュースの取材に対し、民間保育所などで働く人でつくる全国福祉保育労働組合の澤村直書記長は次のように語った。
「今回の取り組みは、最低限の基準として決まっている割合を、資格のない方で置き換えようというもの。重大な保育事故が発生するリスクが格段に高まる。子どもの命や安全が守られるのかという発想が欠けている。現場では、保育士が資格のない人たちを指導することになる。賃金が上がらないのに負担が増えるのでは、保育士をしてくれる人が減ってしまう」
(弁護士ドットコムニュース)