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「週末映画館でこれ観よう!」今週の編集部オススメ映画は『劇場版 ドルメンX』

2018年06月15日 18:32  リアルサウンド

リアルサウンド

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 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、リアルサウンド野球部・横浜DeNAベイスターズファンの石井が、『劇場版 ドルメンX』をプッシュします。


 中学から大学まで10年間続けた部活を引退した後、毎日当たり前のようにあった時間が、どれだけ貴重で輝いたものだったかを知った。そのせいか、「一心不乱に目標のために、努力し続ける」「仲間と頑張る」というテーマの作品には、作品の出来不出来に関わらず、すぐに涙腺が緩んでしまう。


 自ずと高校生部活ものや、チームスポーツものにめっぽう弱いのだが、“アイドル青春コメディ”と謳う本作も、ストライクゾーンど真ん中。不器用に必死にもがく“ドルメンX”の姿に、不覚にも涙してしまった。


 高木ユーナの原作コミックを基に、今年3月に深夜ドラマとして放送したものを再編集し、追加映像が盛り込まれたのが『劇場版 ドルメンX』。とある惑星からやってきた宇宙人の5人(隊長、イチイ、ニイ、サイ、ヨイ)は、武力を行使することなく、誰にも宇宙人だと気づかれないように地球を侵略するミッションを課せられる。彼らは地球侵略の手段として、地球人の心を魅了する“アイドル”を目指すという物語。


 一見、荒唐無稽な設定に思えるものの、「何者でもなれる、どんなキャラ設定も付けられる」アイドルは、宇宙人の隠れ蓑にはぴったり。常に帽子をかぶっている隊長(志尊淳)のおかしさも、彼らが一般常識を知らなくても、「そういうキャラのアイドルだから」で納得できてしまうのだ。


 アイドルオタクの女子ヨイ(玉城ティナ)に導かれ、彼らは“ドルメンX”として一歩ずつアイドルの階段を登っていく。タイムスリップもの、旅行もの、そして宇宙人ものなど、いわゆる異文化交流によって生まれる価値観の違いは、コメディの定番の型として数多くの作品で描かれてきた。本作でも、ドルメンXのメンバーが初めてのダンス&歌レッスンに四苦八苦したり、人間社会の常識を初めて知る模様は確かに笑える。特に志尊淳のぎこちないカクカクダンスは、あまりにも必死に頑張っている分、そのギャップに笑ってしまった。だが、本作が秀逸だったのはそういった頑張る姿を、作品の世界の中では誰も茶化そうとはしなかったところにある。


 彼らはアイドル活動を通して嫉妬や苦悩といった感情を初めて経験する。グループの楽曲制作を任されたサイ(堀井新太)が、どんな評価をされるか恐ろしいから曲をみんなに披露できなくなるシーンがある。そんなサイに、グループのマネージャーであるヨイは「プライドとか見栄とか関係ないの、頑張っている人は、裏でたくさん悔しい思いをして、たくさん恥かいて、強くなってる」と語りかける。ヨイのこの言葉をはじめ、本作では“頑張る”人へのエールがとにかく熱い。地球を侵略するという純粋(?)な目標のもと、打算や思惑のないドルメンXの頑張りが胸に響くのだ。


 一見、コメディ全開のビジュアルと設定だが、いま頑張っている人、これから頑張りたい人の背中を押してくれる熱い作品に仕上がっている。志尊淳をはじめ、今をきらめく若手俳優たちのダンスと歌も必見だ。(リアルサウンド編集部)