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完走必須なレースでやるべきことを成し遂げたガスリー【今宮純のF1カナダGP採点】

2018年06月15日 13:31  AUTOSPORT web

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2018年F1第7戦カナダGP ピエール・ガスリー
F1ジャーナリストの今宮純氏が独自の視点でドライバーを採点。週末を通して、20人のドライバーから「ベスト・イレブン」を選出。予選やレースの結果だけにとらわれず、3日間のパドックでの振る舞い、そしてコース上での走りを重視して評価する。今回は第7戦カナダGP編だ。 

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☆ ジャック・ビルヌーブ(特別枠)


 長年プロモーターを務める『オクタン・レーシング・グループ』が企画。故ジル・ビルヌーブ78年初優勝から40年、息子ジャックにそのフェラーリ312T3でデモ走行をと。超満員ファンの前でよみがえった「ビルヌーブ伝説」に特別な☆、毎年30万人で盛り上がるカナダGPは2029年まで長期開催契約がある(うらやましい)。

☆ ロマン・グロージャン


 ノートルダム島に棲む小動物はなぜか“小チーム”マシンの前に飛び出る。金曜FP2、最終コーナー手前のストレートでグロージャンが遭遇、新パーツのノーズを破損してしまった(07年にはスーパーアグリのアンソニー・デビッドソンがレース中に遭遇、緊急ピットインの末に11位)。土曜予選ではPUブローに見舞われたグロージャン、連続する不運もなんのその最下位から8ポジションアップして12位に。

☆☆ エステバン・オコン


 対ルノー・ワークスの闘い、ミドル・リーグ攻防はスリリングだ。11周目ピットストップ、リヤジャッキの不具合で4.8秒かかってしまった。タイムロスはあったものの9位2ポイントを得て5位マクラーレンに“12点差”まで接近だ。

☆☆ ルイス・ハミルトン


 珍しい。モナコGP以後セッショントップが全くない。ニコ・ロズベルグの言葉を借りると「たまに起きるルイスの“スランプ”状態」。得意なここでブレーキングに切れ味が無く予選4位、決勝5位。マイレッジが伸びたPUに異常発熱症状、それでも『32戦連続入賞』したレース後には、ニューヨークに飛んで仲間たちと“気分転換”か(?)。


☆☆ ピエール・ガスリー


 重大なミッション。ホンダの新PUアップデート効果を体感し、比較データをチームにもたらすこと。グリッドペナルティ後の19位から抜くべきときに抜き、ハイパーソフトで引っ張り最長23周(!)。STR13の長所を活かしつつ終盤オーバーステア症状も克服、無得点でもミッションはしっかり遂行。

☆☆☆ ニコ・ヒュルケンベルグ


 グリッド7位は彼の指定席、今季4度目。ミドル・リーグPPを堅持し、周回遅れながらもタイヤをケアして7位入賞。マクラーレンに16点差のもう56点、ランク4位を固めるルノー昨年はシーズン合計57点。

☆☆☆ ダニエル・リカルド


 PU設定やシャシー・セットを細かく変えた三日間。今季このコースに合わせこむのに、いちばん苦労したのではないか。目に見えて分かりやすかったのは“レーキ角”の変更、セッションごとにフロアからのスパーク(火花)の出方が違った。前後ライドハイトなどを調整、予選5位からまずライコネンをかわし、さらにハミルトンをオーバーカット作戦で攻略。現在ランキング4位・84点は昨年の5位・67点を大きく上回っている。

☆☆☆ バルテリ・ボッタス


 ハミルトンの得意コース、実は彼も得意なコースなのだ。ウイリアムズ時代15年と16年に3位表彰台、昨年も2位。その隠れた実力が露わになり、スランプ気味な相手を速さで超えた。全周回2位キープ、ベッテルに仕掛けられなかったのはPU燃費コントロールが必要だったから(弱気ではない)。ランク3位・86点へ、それだけにアゼルバイジャンGPのパンクが悔やまれる。あの25点を得ていれば今ごろは……。


☆☆☆☆ マックス・フェルスタッペン


 いつも攻め攻め“MAXモード”ではなく、ややミニマム・モード(?)でFP1からFP3までトップ。徐々に壁際とのクリアランスを計り、ブレーキングポイントもじわじわと。モナコGPでの反省からか、ここでは一度も危ういプレーは無かった。“6戦連続インシデント記録”ストップ、顔つきが急に大人っぽく見えた。

☆☆☆☆ セバスチャン・ベッテル


 チェッカーフラッグは2度振られた。こういう出来事、何度かあった。40年前、アルゼンチンGPで母国の英雄ファン・マヌエル・ファンジオ氏がウイナーでなく5位に振った事件。85年イギリスGPでは首位プロストに1周早く、14年中国GPでも同じようにハミルトンに。全周回リードしていたベッテルは事態に冷静に対応した。PPウイン、首位奪還よりも彼の落ち着いた行動を誉めよう。

☆☆☆☆☆ シャルル・ルクレール


 もしも今、お元気だったバーニー・エクレストンさんがいたら、あらゆる政治力を用いてルクレールをフェラーリ、もしくはマクラーレンに押し込んだだろう。ザウバーもその見返りを得ることで、チーム間のパワーバランスもとれる。

 それくらいの逸材、20歳ルクレールを来月37歳のフェルナンド・アロンソは直感したはず。01年ミナルディでミナルディ以上のレースをした彼には、今ザウバーでザウバー以上のレースをする『新鋭力』が分かった(と思う)。この10位はルクレールの“未来扉”を開く1点かもしれない。