政府や財界が成立を急いでいる高度プロフェッショナル制度。これまでも"過労死を増やす"として批判を浴びてきたが、法案が審議される過程で様々な問題点が明らかになってきた。
厚生労働省は6月14日の参院厚労委で、同制度の年収要件となっている1075万円には通勤手当も含まれるとの見解を示した。立憲民主党の石橋通宏氏が「通勤手当など、手当は(年収に)入るのか」と尋ねたところ、山越敬一・労働基準局長は「(額の決まった通勤手当のように)確実に払うものは入る」と回答したのだ。
働き手の健康よりも経営者の都合優先、「勤務間インターバルは労務管理上の問題あり」
高プロは一部の高所得者を対象にした制度とされてきたが、要件となる年収に通勤手当や住宅手当、資格手当などが含まれるとすると、これまでの想定より低い年収の人にも適用されることになる。
現在は1075万円に設定されている年収要件も、今後引き下げられる可能性が高く、ますます多くの人が労働時間の規制から外されてしまうことになりかねない。
また同日、野党側が仕事と仕事の間に一定の休息時間を設ける「勤務間インターバル」を義務化するよう求めたところ、山越労働基準局長は、
「勤務間インターバルは重要だが、突発的な事情で残業した場合の翌日の代替要員の確保が難しいなど、労務管理上の課題もある。導入している企業はわずかだ」
と答えた。高プロの対象者は、労働時間規制の対象から外れるため、勤務間インターバルがなければ、労働時間が際限なく伸びる可能性もある。実際、加藤勝信厚生労働大臣は、月に4日間休ませれば、連日24時間働かせることも違法ではないと認めている。
聞き取り調査はわずか12人から、うち9人は人事担当者が同席
政府は高プロ導入について「成果で評価される働き方を希望する方のニーズに答える」と説明していた。しかし、働き手へのヒアリングは制度案が作られた後にしか行われていなかったことも明らかになっている。ニーズがあったから制度設計をしたのではなく、制度を正当化する"アリバイ作り"のためにヒアリングを行ったようだ。
しかも、このヒアリングは計5社からわずか12人を対象に実施されたにすぎない。しかもそのうち9人は人事担当者が同席していたという。政府が高プロの創設ありきで調査を進めていたことがわかる。
そもそも「成果で評価される働き方」が高プロによって可能になるわけではない。法案には「労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定は、対象労働者については適用しない」とあるだけで、成果による評価制度を導入したりするものではないからだ。
数々の問題点が指摘されているにも関わらず、与党は19日の法案採決を求めていた。野党は審議が不十分だとして応じず、今後も協議が続けられる見込みだ。