6月14日、トライアンフモーターサイクルズジャパンが東京都武蔵野市のトライアンフ東京で、ニューモデル発表会およびトライアンフ東京オープン1周年記念パーティーを行った。
この日トライアンフ東京で行われたのは、新型Speed Triple RS(スピードトリプルRS)の発表に加え、Tiger800XC(タイガー800XC)をベースにパン・アフリカ・ラリー参戦のために造られたTRAMONTANA(トラモンターナ)の発表、そしてオープンから1周年を迎えたトライアンフ東京の記念イベントだ。
■新型スピードトリプルRSは「熟成されたモデル」
まず最初に、新型スピードトリプルRSがトライアンフモーターサイクルズジャパン代表取締役社長の野田一夫氏によってアンベイル。野田氏はライディングギヤに身を包み、フルフェイルヘルメット姿で登場。スピードトリプルRSにまたがり、1050cc3気筒エンジンの咆哮をとどろかせた。
スピードトリプルは1994年にデビューし軽量な車体とパワフルなエンジン、クールなデザインで人気を集め、トライアンフにとって重要な位置づけのモデルとされている。今回発表されたスピードトリプルRSの『RS』は『レーシングスポーツ』を意味しており、最高峰モデルとして登場した。
水冷並列3気筒DOCH12バルブのエンジンは大幅に刷新され、旧型よりも10馬力引き上げられた150馬力。シャシーは軽量化され、Arrow製スポーツサイレンサーやオーリンズのサスペンション、ラジエターカウルなどにはカーボンが採用された上質感あるモデルだ。
アンベイル後には、モータージャーナリストの佐川健太郎氏が登場。野田氏とともにトークショーを行い、新たなスピードトリプルRSについて語った。佐川氏はスペインのアルメリアサーキットで行われたスピードトリプルRS試乗会のほか、同地で実施されたMoto2テスト車両のシークレット試乗会にも参加した。
トライアンフは2019年からエンジンサプライヤーとして、ロードレース世界選手権MotoGPのMoto2クラスに3気筒765ccエンジンを供給する。
佐川氏はスピードトリプルRSについて、「熟成されたモデルですね。パッと見て外見が劇的に変わったという印象はないのですが、元々レベルの高いモデルでしたから、あらを見つけるのが難しいですよ」と印象を語る。
「乗ったときすぐに、中間トルクを感じました。トップスピードの伸びもあります。それから、切り替えしのフットワークの軽さというのもありますね」
同じアルメリアサーキットでMoto2エンジンを搭載したプロトタイプ車を走らせた佐川氏は、話のなかでそのインプレッションを交え「中間トルクがすごくあるし排気量もこちらの方が大きいこともありますから、もしかしたらスピードトリプルRSの方が速いかもしれないですね」と比較する。
佐川氏が乗ったのはデイトナ675のシャシーにMoto2エンジンを搭載したプロトタイプ車。速さはあるがレーサーだけに扱いにくさもある。一方、スピードトリプルRSは扱いやすく「イージーに速い」のだそうだ。
「スピードトリプルRSはバイクがライダーをサポートしてくれるので、一般道でも快適に乗れます。快適性を持ちながらサーキットも走れる。スポーツ嗜好もありつつツーリングも走りたい、という人にはぜひおすすめしたいです」
スピードトリプルRSは希望小売価格が185万7000円(税込み)。カラーはクリスタルホワイトとマットジェットブラックの2色展開となっている。
■オフロード性能を追求したラリー参戦用ワンオフモデル、トラモンターナ
スピードトリプルRSに続いてアンベイルされたのが、アドベンチャーモデルのタイガー800XCをベースに製作されたタイガー トラモンターナだ。2018年2月に発表されたアドベンチャーモデルのタイガー800、1200だが、一般客が試乗できるのは一般道のみ。そこでオフロード性能のアピールの一貫として、トラモンターナが生み出された。
トラモンターナはタイガー800XCをベースとし、パン・アフリカ・ラリー参戦用にシャシー開発エンジニアによりこの1台だけ製作されたスペシャルモデル。主な変更点としては軽量化、そして悪路を走るための足回りだが、基本的には量産パーツやアクセサリーが使われている。
2017年9月に行われたパン・アフリカ・ラリーは、全7日間、うち5日がスペシャルステージとなり、走行距離は1300キロにもなる。砂漠のなかを走破するレースだが、その厳しさゆえ四輪は開催されず、二輪のレースのみが行われている。このパン・アフリカ・ラリーを戦ったトラモンターナは、初参戦にしてマキシクラス2位入賞を果たした。
ここではモデルであり、ダカールラリー参戦ライダー、そしてタイガー800のアンバサダーを務める風間晋之介氏が登場。スペインで行われたトラモンターナの試乗会にも参加したという風間氏は、そのときの様子を語った。試乗会は1日350キロのオフロードを走るものだったという。
「ギャップでジャンプしたりしても全然平気でした。すごく楽しめるバイクだと思いましたね。これまで僕が乗っていたバイクは単気筒が多かったのだけど、トライアンフの3気筒は極低速でもトルクフルなんですよ。ビギナーの人にも扱いやすいのではないかと思います」
ただ、トラモンターナはラリーレースという過酷な状況下で走ることを想定しているため、一般のライダーには扱いにくいところがあるという。
「一方で、ノーマルのタイガー800の方は誰でも扱えると思います。トラモンターナのシャシーはノーマルのタイガー800を活かしていて、そこはすごく驚くべきところです」
実は風間氏、「僕はお話聞いたとき、(このバイクで)砂漠を走れるのか、と思ったんですよ」と笑う。「でも乗ってみたらそのくらいのポテンシャルは秘めていました」
「最近はアドベンチャーブームで1000cc以上のモデルもありますが、日本で走るなら800ccはちょうどいいのではないでしょうか。車重も軽く扱いやすいですし、タイガー800はオフロード未経験の人にもすすめたいですね」
スピードトリプルRS、トラモンターナのお披露目とトークセッション後には、トライアンフ東京のオープン1周年記念パーティーが実施された。初年度は計画台数150台を超える210台の登録台数を達成したと発表し、トライアンフ東京を「バイクを販売するだけではなく、バイクのライフスタイルの発信基地にしたい」と思い入れを語った野田氏。終始フランクで活気あるイベントとなった。