カナダGPの土曜日に行われたマクラーレンの会見で、ザク・ブラウンがあらためて2019年以降のインディカー参戦を検討していることを明らかにした。
「我々は真剣にインディカーを検討している」
インディカー参戦する場合、提携するチームとして最有力候補に挙がっているのが、昨年のインディ500でフェルナンド・アロンソが参戦した際に組んだアンドレッティ・オートスポーツだ。だが、そのアンドレッティは現在、ホンダ・エンジンを搭載している。もし、ホンダが来年もアンドレッティへエンジンを供給し、マクラーレンがアンドレッティと提携を組むことになった場合、マクラーレン・ホンダがアメリカのインディで復活することになる。
そこで筆者がブラウンに「F1でホンダと提携を解消したばかりのマクラーレンが、インディでホンダと組むことは問題ないのか?」と尋ねると、ブラウンはこう回答した。
「われわれはホンダと再びレースができることを願っている。彼らは素晴らしいエンジンを作っているだけでなく、インディで長い経験がある。ホンダと組むことにためらいはいささかもない。すでにわれわれはインディにエンジンを供給している2社と話し合いを始めている」
ブラウンは昨年の最終戦で「ホンダと再び手を組む日が、もう二度と来ないなどとは言わないでおこう」と語っていたように、マクラーレンの中にあっては、どちらかといえば『親ホンダ』派だった。しかも、マクラーレンのアメリカでのレース・プロジェクトを指揮しているのもブラウンなので、マクラーレン側にとっては、『マクラーレン・ホンダ』復活の障害はほとんどない。
しかし、ホンダの事情は別だ。昨年のマクラーレン・ホンダの提携解消は、ホンダにしてみれば、かなり屈辱的な決定だった。ホンダも昨年までの3年間のパフォーマンス不足は認めている。だが、マクラーレンはパートナーでありながら、ホンダに手を差し伸べるどころか、超えてはいけない一線を超えて、強引に提携を解消してきた。それをホンダの本社は良しとは思っていない。
ホンダの山本雅史モータースポーツ部長はこう語る。
「インディカーシリーズについては、アメリカ・ホンダの子会社であるHPD(ホンダ・パフォーマンス・ディベロップメント)社長のアート(・セントシアー)が決断することなると思います。ただし、インディはル・マン24時間レースやF1とともに、世界を代表するレースなので、F1でライバルとなっているホンダとマクラーレンが、インディで手を組むというのはグローバルな視点で考えると、非常に難しい判断となるでしょう」
アメリカ・ホンダの社長である神子柴 寿昭は、本社の取締役でもあり、昨年のマクラーレンとの経緯もよく知っている。
レースの世界では『昨日の敵が今日の友』になることは決して珍しいことではない。しかし、それはきれいに別れた場合の話。別れ際にもめると、その関係がなかなか修復できないというのは、ホンダとマクラーレンの関係以外でもいくらでもある。
したがって、もしホンダがインディでマクラーレンと組むことに「ノー」と言ったとしても、それは決して理不尽な決定とはいえない。果たして、どんな決定をホンダが下すのか。その前に、マクラーレンが2019年からのインディ参戦を本当に行うのか。その鍵のを握るのは、アロンソが参戦する今週末のル・マン24時間。決定はその後となるだろう。