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吉高由里子×安田顕コンビが輝いた最終話 『正義のセ』が示した“人を思いやる心”

2018年06月14日 06:11  リアルサウンド

リアルサウンド

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 『正義のセ』(日本テレビ系)が6月13日、ついに最終回を迎えた。1話完結型のドラマとして、検事の竹村凜々子(吉高由里子)、担当事務官の相原勉(安田顕)はこれまで様々な事件に立ち向かってきたが、ラストは衆議院議員の息子が犯した殺人事件という、いまだかつてないプレッシャーのかかった事件を担当することになる。そして、凜々子と相原それぞれが持つ“正義”と、検事とは何かが問われた物語のラストとなった。


参考:吉高由里子が見せた“正義”という名の怒り 『正義のセ』向井地美音から背負った勇気


 衆議院議員・中条(宅麻伸)の息子・秀成(落合モトキ)は、自身が犯した殺人事件を、被害者・入江(佐藤祐基)に包丁で脅され、身を守るための正当防衛だったと主張。しかし、入江の彼女だった笑子(岡本玲)から彼の人柄を聞いた凜々子は、真相を突き止めるべく、事件をさらに捜査していく。結果、事件の真実は、秀成が入江に逆恨みしたことによる犯行であり、中条は正当防衛を主張するために息子の秀成を殴り、傷を負わせていた犯人隠避罪だった。


 残された恋人の笑子は、入江が密かに渡そうとしていた結婚指輪に、2人で歩むことのできなかった人生に想いを馳せ、最期にどうやって彼が死んだのかが心残りだった。秀成への取り調べにて、凜々子は瞳に涙をためながら、入江は最期どのように亡くなったのかを問いかける。「笑子……」、入江は亡くなるその瞬間まで彼女のことを思い続けていたのだ。これまで、凜々子は事件の真相を突き止めていくうち、犯人の身勝手な犯行理由により苦しんでいる被害者を目の当たりにし、その怒りを握りこぶしで表すことが多くあった。最終回となる今週にも、その描写は存在する。人が人を思うこと。笑子の無念を晴らすために、凜々子は入江の最期を秀成に供述させたが、結果的に彼の情に訴える形となり、秀成は全てを自白することとなった。


 中条は子供の人生に傷を残したくないという理由から、そのためならなんでもするのが親だと主張する。これに相原は「親の愛情にはいろいろな形があっていいと私は思います。しかし、その愛情のかけ方が間違っていることもある。そう気付いたとき、親がそれを認め、立ち止まること。それが大事なんじゃないでしょうか」と同じ父親として中条を諭す。凜々子は第9話で、か弱い女性が痴漢の被害者として苦しんでいることに、相原は第7話で1人の娘を持つ父親として、事件に正義を持って立ち向かってきた。言うなれば、今回はその2つの要素が合わさった事件であり、凜々子と相原のバディが輝く物語であった。


 「検事ってなんだと思いますか?」、ラストに相原は凜々子にそう問いかける。検事とは、人間。被疑者同様に、検事も完璧ではない。人の人生を、時に生命を裁かないといけない大変な仕事だ。人間的な感情をたっぷり持っていないと検事は務まらない。それが、相原の出したひとつの答え。全10話を振り返れば、凜々子の無邪気に笑った顔と、握り拳とともに見せた怒りと、被害者のために流した涙と、彼女の様々な表情が思い出される。人を思いやること。それが、凜々子や相原が持つ、“正義”への第一歩なのかもしれない。(渡辺彰浩)