映画『形のない骨』が7月28日から東京・渋谷のユーロスペースほか全国で順次公開される。
格差社会から生まれる一般家庭の貧困や希薄な人間関係、女性蔑視などを描いた同作。地方都市の一軒家で暮らす34歳の良子が、刺々しい姑の態度や画家である夫の暴力にうんざりしながらも、弟の圭人と息子の宏を心の支えに生きていたが、ある日思いがけない事件により夫を失い、追い詰められていくというあらすじだ。
メガホンを取ったのは「TSUBAKI」や「マキアージュ」など、資生堂のCMを長年にわたって手掛け、NHK連続テレビ小説『わろてんか』のオープニング映像でも知られる小島淳二。長編映画監督としてはデビュー作となる『形のない骨』は、小島が企画から立ち上げ、5年の歳月をかけて制作した。
ヒロイン・良子を演じるのは、200人から選出されたモデルの安東清子。その他の出演者もオーディションで集められ、約3か月のワークショップ、1か月の稽古を経て撮影に臨んだ。
同作について映画監督の深田晃司は「曖昧な感情を徒らに濾過せず曖昧なまま差し出してくれる挑戦的な映画でした」、アートディレクターの秋山具義は「観ていくうちに、どんな人間にも潜んでいる悪の部分のうすら怖さにぞわぞわしてきた」とそれぞれコメントを寄せている。
■深田晃司のコメント
曖昧な感情を徒らに濾過せず曖昧なまま差し出してくれる挑戦的な映画でした。
だからこそその果てにある水の清明さにハッとさせられる。
『形のない骨』とはなんだろう、と思った。その骨が支える体はなんなのだろう。
形のない骨とはいつも困った顔をして受け身でいるヒロインかもしれない。
しかしそのヒロインによってギリギリ成り立つ家族の不思議。
考えてみたら僕らの人生はあちこち形のない骨だらけだ。
■秋山具義のコメント
観ていくうちに、どんな人間にも潜んでいる悪の部分のうすら怖さにぞわぞわしてきた。
観客に、お前はどんな人間だ?と小島淳二監督は問いかけているのだろう。
アートに見識のある人がニヤニヤしちゃう仕掛けも入っていたりして、憎いなぁと思いました。