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Le Beausset Motorsports スーパー耐久第3戦冨士 レースレポート

2018年06月13日 16:41  AUTOSPORT web

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クラス2位を獲得したLe Beausset Motorsports
50年ぶりの『富士24時間』で、686周を走りきる
さまざまな局面を克服して、2位表彰台を獲得!

スーパー耐久第3戦
6月1日(金)~3日(日)
富士スピードウエイ 4.563km

 ル・ボーセモータースポーツは、ピレリスーパー耐久シリーズのST-3クラスをDENSO Le Beausset RC350で戦う。その第3戦が6月1日(金)、2日(土)~3日(日)に、富士スピードウェイ(静岡県)で『富士SUPER TEC24時間レース』として開催された。
 
 ドライバーを6名まで登録できる長丁場のレースとあって、嵯峨宏紀と山下健太、そして今シーズンから加入の宮田莉朋といったレギュラーの3人に、石浦宏明と平手晃平を助っ人として加えたラインアップはドリームチームとも称され、大きな注目を集めた。
 
 加えて、富士SUPER TECは参戦以来、負け知らずの3連覇中と非常に相性のいいレースとなっている。シリーズ一番の晴れ舞台で狙うは今シーズン初勝利、そして富士SUPER TECの4連覇だ。

予選
6月1日(金)
天候/晴れ
コース状況/ドライ

 今回は土曜日の午後3時にスタートが切られ、日曜日の午後3時にゴールを迎える、24時間レースということもあって、予選は普段より1日早い金曜日に行われた。今回は普段のレース以上に一発の速さは必要とされず、決勝でのコンスタントラップを重視してセットが進められていたため、木曜日の専有走行でトップが1分53秒台を記録していたのに対し、1分54秒222がベストタイムとなっていたが、いざ予選となるとドライバー達は本領を発揮しスピードアップしていった。
 
 今回は山下が決勝からの合流とあってEドライバーとして登録され、代わりにBドライバーを宮田が務める。まずはAドライバーセッションに嵯峨が挑み、1分53秒715をマークして4番手につける。この時に嵯峨は穏やかなコンディションの割には路面状態の影響なのか、タイヤのウォームアップに違和感を覚えていたことから、宮田にいつも以上に入念にタイヤのウォームアップを行うよう指示を出す。これが功を奏して、続いて挑んだ宮田は最初のアタックで1分52秒968にまで短縮を果たして3番手につけ、合算タイムでもクラス3番グリッドを獲得する。
 
 続いて行われたCドライバーセッションでは石浦が1分53秒984を記してトップにつけ、Dドライバーセッションでは平手が1分55秒244で4番手につける。いずれもユーズドタイヤで周回を重ねることで、24時間の決勝レースへの確認も行い万全を期して臨むこととなった。

決勝
6月2日(土)~3日(日)
天候/晴れ
コース状況/ドライ

 国内レースとしても『十勝24時間』以来10年ぶり、『富士24時間』としては50年ぶりの開催となるため注目度は予想以上に高く、土曜日のスピードウェイには1万6700人もの観客が訪れていた。いつものレースと異なるのは、スタンドよりコースサイドに多くの観客がキャンプ感覚でのレース観戦を楽しんでおり、随所にテントが設けられ、脇ではBBQを楽しんでいる様子は、日本のレース文化に新たな一章が加えられた感さえあった。
 
 決勝日の午前にはウォームアップが行われ、ここで初めて山下が走行を開始。マシンの状態を確認するため、まわりが抑え気味の中、攻め込んで走って1分53秒699をマークし、トップに躍り出る。
 
 今回は初めて宮田にスタートを託すこととなった。カート時代に手慣れたローリングスタートを宮田はそつなくこなし、DENSO Le Beausst RC350は4番手から24時間レースを開始する。もちろん前を行く3台から遅れをとることなく続いて、早くも6周目には3番手に返り咲く。
 
 そして、レースは始まって30分を経過して間もなく、いきなり動いた。1コーナーでアクシデントが発生したため、フルコースイエロー(FCY)からすぐにセーフティカー(SC)が導入される。約10分後にレースは再開、これで3番手との差が一気に詰まったこともあり、25周目に宮田は2番手に浮上することとなる。ただし、総合トップの車両よりSC導入時に#68-マークXだけが前を走っていたため、#68-マークXが1周稼ぐ格好となっていた。
 
 しかし、その#68-マークXが早めにドライバー交代を行なったこともあり、宮田は42周目からトップに浮上、スタートから1時間50分間ほど経過した54周目に山下と交代、給油とタイヤ4本の交換をしてコースに送り出す。
 
 これでいったんは3番手に後退するも、わずか3周後には#38-IS350を抜いて2番手に返り咲く。その先は、1時間50分間前後の間隔でドライバー交代が行われ、108周目から嵯峨が、156周目からは石浦がDENSO Le Beausset RC350をドライブしていた。
 
 あたりがすっかり夕闇に包まれ、スタートから5時間半ほど経過した166周目に、2度目のFCYが提示され、石浦をピットに呼び寄せ、給油を行う。ここでトップの#68-マークXもピットインし、今回の24時間レースで特別に規定された、8分間のメンテナンスタイム2回の義務の1回目を早くも行なっていたため、DENSO Le Beausset RC350はふたたびトップに躍り出る。

 213周目の平手への交代のピットインでは、タイヤ交換をフロント2本のみとして送り出し、トップをキープ。そして、レース開始から8時間45分、1/3を経過していたことから、260周目に最初のメンテナンスタイムが行われ、フロントハブ、ブレーキローター、ブレーキパッドを交換。更にエンジンオイル、ミッションオイルも交換。そして宮田がコースに乗り込んでいき、5番手で復帰するが、この時点でメンテナンスタイム1回目を消化しているのは#68-マークXとDENSO Le Beausset RC350のみとなる。

 315周目からふたたび嵯峨がコースインすると、13コーナーで大きなクラッシュが発生。SC導入後に直ぐに赤旗が提示され、ホームストレートで車両を停止すると、運よく総合トップ車両は直後におり、再開時には最後尾になるものの1周を加算して再スタートとなり、325周目には直前の#39-RC350をパスして3番手に浮上する。
 
 368周目からは石浦が担当。ST-4クラスの車両がトラブルでコース1周に渡ってオイルを撒く場面など荒れた展開に遭遇するも、石浦はタイヤを労わりながら安定したドライビングで周回を重ね夜明けを迎える。
 
 規定によりナイトセッションをEドライバーが走ることは認められていないため、あたりがすっかり明るくなった416周目、石浦のタイヤを労わる走りからタイヤ無交換を遂行して、いよいよ山下が走行を開始。この頃、他車が続々と1回目のメンテナンスタイムを実施し#68-マークXはまたも早々と2回目のメンテナンスタイムを行なっていたこともあり、434周目に山下はふたたびトップに浮上する。
 
 その後、462周目からの平手を間に挟んで、509周目に再び山下に交代するが、その直後にFCYが導入される。これに合わせて2回目のメンテナンスタイムを行うも、FCYは短い時間で終了となったため、絶対のマージンを生み出すまでには至らず。
 
 すでにトップ争いは一騎討ちの様相を呈していたが、555周目から石浦が、590周目からは山下の担当となり、それぞれ当初の予定よりプッシュし最初のSCランで築かれたトップ#68-マークXとの1周差を逆転するべく周回を重ねて行く。
 
 スタートから21時間を経過し、残り3時間を切ったところで3回目のSCランが行われた後に赤旗が出されて、レースが中断。#68-マークXは総合トップの前、それに対してDENSO Le Beausset RC350は後ろで、またも1周を失うことになる。
 
 再開後は宮田が614周目から走行し、残り1時間半を切った644周目から嵯峨が最後のドライブを担当する。タイヤ無交換でロスを最小限とし、一縷の望みを託したものの、勝利の女神は最後まで微笑んでくれず。DENSO Le Beausset RC350は686周を走りきり、2番手でチェッカーが振り下ろされることとなった。
 
 24時間もの長丁場のレースの中で、トラブルへの対応や戦略変更などさまざまな局面を、ドライバー、スタッフとも克服しならが、大きなミスひとつなくゴールできたことは、チームにとって大きな成長をさせてくれるレースとなった。シリーズポイントも3位と、シリーズチャンピオンに挑めるポジションをキープすることとなり、残る後半3レースも勝利を目標に臨む。

レース後コメント
坪松唯夫 チーム監督
「24時間をトップでゴールする戦略を持っていたが、幾つかの要因から実行できずに終わったことが自分たちのペースを狂わせ、相手に楽なレースをさせてしまった。チームはこの結果を受け止めさらに強くなる必要がある」

「ドライバーラインナップは速く個性的なメンバーを揃えたことでバトンをつなぐと言う意味で不安がなかったことではないが、自らル・ボーセのドライバーとして各パートを確実にこなしてくれ、高い次元でバランスの取れたチームになった。素晴らしい24時間レースを開催してくれた富士スピードウェイに感謝したい」

嵯峨宏紀
「運がこちらに向いてくれませんでした。最初のSCでいきなり1周遅れになりましたし、最後のSCも僕らにはいい方向にはいきませんでした。僕らはずっと戦略通りコンスタントにラップを刻み続けていたのですが、間のSCでうまくはまらないようになってしまいました」

「ドライバー全員ミスなく、コース上でのアクシデント回避や車両のトラブルなどが起きても局面毎にシッカリ対処し克服して、全力を出し切っての結果だったと思います」

山下健太
「僕自身このレースウイーク、しっかり練習はできなかったのですが、足を引っ張らずに済んだことにはホッとしています」

「登録上、スタートとナイトセッションを走ることができなかったので、夜が明けてから、精一杯プッシュして逆転を目指してトップを追い続けたのですが、最後のSC時にポジションが悪く追いつけなかったのは残念でした。シリーズチャンピオンを狙える位置にまだいるので、次のオートポリスから勝てるように頑張ります」

宮田莉朋
「スーパー耐久では初めてのスタート担当でしたが、長距離レースはフォーミュラと違ってリスクを負う必要もないし、特に今回は24時間レースということで、その先に何があるか分からないので、そこではあまり頑張りませんでした」

「むしろコンスタントなペース配分が大事だと思ったので、そこだけ意識しつつペース的には良かったので、すぐ2番手に上がれたこともあって、最初のスティントは順調に行けました」

「それ以降は運が悪かったですね、SCの場所だったり。ただ、ウエイトを積んでいるクルマの中ではトップでしたし、この結果をポジティブに受け止めて、次のレースも頑張りたいと思います」

石浦宏明
「序盤から展開には恵まれない感じがあって、そういうところで遅れたものを、自分たちが様々な条件下でもペースを上げて、けっこう高度なことをやりながら徐々に差を詰めて行ったんですが、結局また展開にやられ……という繰り返しで、24時間ずっとトップを追い続けたまま、終わってしまったという感じでしたね」

「勝てなかった悔しさと、24時間ずっと見えないところで競っていたという、24時間レースならの面白さと難しさは味わえました。いろんな作戦を立てましたし、臨機応変にペースも変えましたし、作戦も変えましたし。そういうチームワークで、いろんなトライをしたことは、ものすごい経験になったと思います」

平手晃平
「僕にとって人生初めての24時間レースは、当初から自分で立てていた『とにかく襷はつなぐ』という目標は達成できて、チームに貢献はできたと思いますが、結果的には負けてしまいました」

「でも、やっぱり24時間レースはゴールすることにすごく意義があるから、チームのみんな、ドライバーもスタッフも頑張って、2位表彰台には立てたので、初レースにしては良かったと思っています」

「このレースを経験したことによって、勝つためには何が必要なのか、戦略であったり、クルマであったりをチームがデータ分析してくれると思いますので、また機会があれば出させてもらいたいと思っています」