6月16~17日に開催される『第86回ル・マン24時間レース』でWEC世界耐久選手権にデビューすることになるジェンソン・バトンは、所属するSMPレーシングの新型LMP1カー、BRエンジニアリングBR1・AERのエアロダイナミクスに変更が加わった後でも好ペースを維持できるだろうと語った。
今シーズンよりスーパーGT500クラスへのフル参戦を開始した2009年の元F1ワールドチャンピオンは、2018年から2019年に渡って争われるWEC“スーパーシーズン”にも開幕戦を除く全ラウンドに出場することを発表。まもなく迎えるル・マン24時間でWECデビューを果たす。
バトンを擁すSMPレーシングは、LMP1クラス唯一のメーカーワークスであるトヨタに対抗する5つのプライベーターチームのうちのひとつで、イタリアのダラーラとロシアのBRエンジニアリングが共同開発した『BR1』を2台仕立ててシリーズに投入している。
このBR1は今年5月に行われたWEC開幕戦スパ・フランコルシャンで3台中2台が立て続けに重大アクシデントを起こしており、このうちSMPレーシングの17号車BR1はオー・ルージュの頂上付近で宙を舞った。
ダラーラとBRエンジニアリングはアクシデントを受けてマシンフロント部のダウンフォースを増加させるべく、カナードを左右1枚ずつ追加するとともにフェンダー形状を一部変更して安全性の確保を図ったが、バトンはこのモディファイによってBR1の武器であるストレートスピードが犠牲になったという。
しかし、6月3日のテストデーでル・マン初走行を果たしたバトンは「(エアロの)変更が必ずしもネガティブではない」と語った。
「たしかにストレートでは遅くなったが、現時点で必要なレベルのダウンフォースがクルマに備わったと思う。ポルシェカーブでの印象は素晴らしかったし、ロングランでのリヤタイヤの摩耗も理想的といえるものだった」
「これらの変化はダウンフォースが増加した結果によるものだと思うが、増加したドラッグについても考えなければならない。シミュレーションしながらセットアップを続けていくよ」
「ただし、僕たちのマシンのドラッグが極端に大きくなったということはないんだ。それでいて必要なダウンフォースが得られていることから、実は今回のエアロの変更はポジティブな方向に働いているのかもしれないね」
走行後、このようにマシンの印象を語ったバトンは、決勝レースの結果について「スプリントならトヨタが勝つと断言できるだろう。しかし、ル・マンの結果を予測するのは誰にとっても不可能だ」とコメント。
「僕たちはレースペースでトヨタに挑戦するべきではないが、ノンハイブリッド勢の最上位を争える実力はあると信じている。また、ラップタイムでは(3分)18~19秒台をマークすることを期待しているんだ。これはプライベーターにとってはとても速いラップだ」
6月3日に行われたテストデーでは、8号車トヨタTS050ハイブリッドを駆るフェルナンド・アロンソが3分19秒066という全体ベストタイムをマーク。これに0.614秒差でレベリオン・レーシングの3号車レベリオンR13・ギブソンが続き、センサートラブルによって走行時間が削られたバトン、ビタリー・ペトロフ、ミカエル・アレシン組の11号車BR1はトップから約2.5秒遅れの総合5番手となっていた。
13日(水)から始まる練習走行、予選1回目でこのタイム差がどこまで縮まるのか注目したいところだ。