カナダGPでレッドブルとルノーがまた意見を衝突させた。「カナダGPのアップデートを見たうえで、2019年に使用するパワーユニットを決定したい」というレッドブルの要求を受け入れていたルノー。
しかし、カナダGPでレッドブル側が「発表はチームの母国グランプリとなるオーストリアGPになる」と発言したからだ。
つまり、ルノーはあと3週間待たなければならない。これにシリル・アビテブール(ルノー/マネジングディレクター)が激昂した。
カナダGPのレース後、レッドブルのクリスチャン・ホーナー代表は、2019年のPUに関して次のように語った。
「カナダGPで多くのデータを得ることができた。ホンダに関しては、われわれはアップデートの詳細を知る立場にないので、GPSデータなどから、正確なパフォーマンスを判断することとなる。われわれはオーストリアGPで発表しようと考えているから、もう1戦様子を見る時間がある。エンジニアたちの意見を聞いたうえで、最終的に(ディートリヒ・)マテシッツが判断することになるだろう」
アビテブールは「もう彼らが必要としている情報はすべてそろっているのだから、なぜ決定しないのか理解できない」と海外のメディアに不満を述べている。
ルノーとホンダのアップグレードされたPUのピークパワー時の馬力は、GPSのデータとその時採用していた空力パッケージの空気抵抗から、おおよそ弾き出せる。おそらく、アビテブールはルノーのエンジニアたちからホンダの情報を知らされており、ルノーが依然としてホンダを上回るパワーを維持していることを知っているのだろう。
しかし、レッドブルにしてみれば、ピークパワーの馬力では、データは十分ではない。マックス・フェルスタッペンは3位に入ったが、チームメイトのダニエル・リカルドはドライバビリティに苦しみ、フェルスタッペンから12秒遅れの4位に終わった。
「僕たちは今週末にアップグレードされたPUを得たけど、僕のマシンはその調整とドライバビリティに苦しんだため、アップグレードの恩恵がどれくらいあるのかは、今はまだわからない」(リカルド)
対照的にホンダの新しいPUを走らせたピエール・ガスリーは、ドライバビリティに満足していた。
「パワーだけでなく、デプロイ(回生エネルギー)も改善された。それだけではない。バッテリーやエネルギーマネジメントなどすべての面でパフォーマンスが上がった。本当に良いステップを踏むことができた」
ホンダの田辺豊治F1テクニカルディレクターも「通常、新スペックを持ってくると、いきなりうまく機能させることができずに、ドライバビリティに苦しむということが珍しくないんですが、今回は週末を通して、ドライバビリティがとても良かった」と新スペックのポテンシャルを評価した。
カナダGPの1戦だけでは評価できないというレッドブルの考えは、決して無茶な理屈ではない。
なお、アビテブールは「このままではオファーを取り下げる」と警告しているようだが、申し込み期限の5月15日にFIAに対して2019年のPU供給チームとしていったんレッドブルの名前を書いた以上、勝手に取り下げることはできないはず。逆にレッドブルがルノーからホンダに変更するにはメルセデスとフェラーリの了承が必要だが、両者にとってはレッドブルがルノーとホンダのどちらを選択するのも関心がないことから、同意すると考えられる。
つまり、この一件はレッドブルだけがイニシアチブをとって進めることができる特異な交渉で、決定はフランスGP期間中かその直後。発表はオーストリアGPとなることはほぼ間違いない。