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Theピーズの日本武道館から1年 休止状態にしびれを切らせ、「一人ピーズ」を観に行ってきた

2018年06月09日 10:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 Theピーズの日本武道館から丸1年が経ちました。


 Theピーズのファンではない方のために、補足しておきますね。


 Theピーズが結成30周年の記念日に行い、満員御礼になって大成功を収めた、2017年6月9日の初の日本武道館ワンマンから、丸1年が経った、ということです。


 長いレポのようなものをリアルサウンドに書かせていただいた、あの日本武道館です。レポはこちら(http://www.realsound.jp/2017/06/post-84053.html)。


 で。Theピーズのファンではない方のために、もうひとつ補足しておきますね。


 つまり。バンドとしてのTheピーズは、その日を最後に丸1年間、一切活動をしていない、ということだ。


 上に貼った1年前のテキストにも、本人の発言を入れつつ書いたが、はること大木温之は、日本武道館が終わったらしばらく活動を休むと、前もって宣言していた。


 曰く、50歳をとうに越えて、耳の問題や歌の音程の問題などのフィジカルな面で、勢いまかせ、青春まかせで爆音を出して、3人で合わせてぴったりいったら気持ちいいね、という今のやりかたでは、この先もうライブをやっていけない、と。もっと音量を絞って、3人のアンサンブルなどを考えて演奏していく方向に変えないといけない、と。


 でも当然、そんなの「じゃあ明日からそうしましょう」ってことにはならない。それぞれの演奏の仕方、音の合わせ方から変えなければ無理だろうし、30年「青春まかせ」でやって来たバンドが……あ、4年半休止してたから実際は26年くらいだけど、とにかく、そのように大きくライブのやり方を変えることが、簡単なわけはない。準備期間が必要だろうし、手間もかかるだろう。


 それには、「×カ月間、ライブの予定入れません」とかじゃなくて、「目処がつくまで一切ライブの予定を白紙にします」くらいの覚悟が必要なのもわかる。で、それをするには、日本武道館というのはとてもいい区切りであったことも、わかる。


 というわけで、2017年6月9日で、バンドとしてのTheピーズはいったん止まった。はるは、それまでも行っていたように、アコースティックギター弾き語りの「一人ピーズ」と、TOMOVSKYのサポートベーシストとしてライブを続行しているし、シンちゃんこと佐藤シンイチロウは本業のthe pillowsの活動がある。なので、「止まりました」「いなくなりました」というイメージを、僕もそんなに持っていなかったのだが。


 1年はさすがにストップしすぎじゃないか? 音源出せとまでは言わないけど、ぼちぼちライブやってもいいんじゃないか? というか、そもそも今本当に、ちゃんと「準備期間」になってます? 単に「止まってる」だけになってません?


 Theピーズが止まると同時に我々の眼の前から消えた、ギターのアビさんこと安孫子義一は、本職は(はる曰く)「セメント屋さん」である。現在の東京(かどうか知らないけど東京かその近郊でしょう)でセメント屋さんである、というのはどういうことか。忙しいでしょ、普通に考えたら。東京オリンピックの影響下にあるあれやこれやに、アビさんの会社がまったく関わっていない、と考える方が不自然でしょう。


 というような事情もあったりなんかして、バンドとしてのTheピーズの再始動、なんとなく先送りにしてませんか? はるさん。


 と、気になったので、「一人ピーズ」を観に行って来ました。考えたら僕も「一人ピーズ」のライブ、昨年7月の千葉のフェス『PEANUTS CAMP』で観たきりだし。


 5月4日と5日に、高田馬場に新しくできたBLAH BLAH BLAHというライブハウスでワンマン2デイズがあったので、そこに行きたかったんだけど、あいにく2日とも、知った時には自分に別の予定が入ってしまっていた。


 なので、そのあとのライブを探して、2本行った。5月13日新宿紅布のイベント『新宿コネクション』と、5月19日、水中、それは苦しいのジョニー大蔵大臣プレゼンツで、上野恩賜公園野外ステージで開催されたイベント『水中音楽祭2018』だ。


 まず5月13日紅布。赤い夕陽、ハッチハッチェルオーケストラ、一人ピーズが出るイベントで、オープニングアクトで元ハミングスの角森隆浩がウクレレ弾き語りで出演。なお、ハッチハッチェルオーケストラは元デキシード・ザ・エモンズのハッチハッチェルこと八馬義弘のバンド。赤い夕陽は、Theピーズの二代目ドラマーのウガンダがドラムで、ベースはかつてピーズのサポートを務めたアキラ(活動休止前、はるがボーカル&ギターでサポートでアキラが入って4人編成でやっていた時期があったのです)。ちなみに、この日がレコ発ライブだったようです。


 と、付き合いの長い人たちに囲まれているからか、はる、ちょっとリラックスムードで機嫌よさそう。シャリシャリに歪ませた音のアコースティックギターをかき鳴らしながら、「バカのしびれ」「実験4号」「ブリロー」「眠る前に一発」「ブラボー」「フォーリン」「氷屋マイド」「異国の扉」「電車でおでかけ」「今度はオレらの番さ」の10曲を歌う。


 あ、「フォーリン」というのは新曲、とMCでおっしゃってました。はるのブログによると、昨年の秋あたりからライブで披露している模様。ただ、まだ仕上がっている状態だとは言い難いようで、歌い終わって「ダメだ、まだ6割くらいだ」みたいなことを漏らしておられました。


 で、次、『水中音楽祭』。紅布でもこのイベントの告知をしたことはしたが、野外のイベントであること、天気予報が雨だったことで、消極的に口にした感じだった。あそこ、野外だけど屋根あるから大丈夫ですよ、はるさん、と言いたくなりました。


 さて当日。雨、降らず。はる、「いいとこじゃねえか! もっと宣伝しとけばよかった!」「天気悪いって言うから恨まれそうで誘わなかった。晴れてるじゃねえか!」などと言いながら、「フォーリン」「生きのばし」「このままでいよう」「異国の扉」「ブラボー」「氷屋マイド」「実験4号」「とどめをハデにくれ」の全8曲を歌う。


 紅布の時とは違い、アコースティックの鳴りそのままのやわらかいギターの音だった。この野外ステージ、コンクリの音の反響が強いので、そのへんを意識したのかもしれません。単に前回歪ませすぎだったので修正したのかもしれませんが。


 「上野は俺のことを2、3カ月でクビにした、憎っくき店がある」「今のこのピンピンした状態で見に行ってやろうかな」とも言っていた。ピーズを活動休止して料理人になっていた時代に勤めた店のどれかのことなんでしょうね。で、そうおっしゃるってことは、当時は「ピンピンしてなかった」んでしょうね。


 ちなみに、のちほどアップされた本人のブログを見たら、「上野、昔クビんなった店なくなってた、ザマミロ思ったけど、いいヒトもいたんだった。と今さら丸くなる」と、「デブ・ジャージ」の歌詞をさかさまにしたようなことを書いておられました。「いい奴もいたかも しれないけど おぼえてねー」のとこね。


 なお、このイベントのお客さん、ピーズファン、とても多かった。日本武道館Tシャツを着た人も多数。そのホームなムードと、この上野公園の野外音楽堂の空気が、本人的にとてもよかったようで、「ブラボー」を歌い終えたところで、「いいよ、水中くん! ありがとう!」と、主催のジョニー大蔵大臣にお礼を言う。


 そこまではよかったが、問題は次の発言。


「もう1年バンドやってないけど、悪くないな」


 こんなことを言ってしまうくらい気分がいいステージだったんだな、きっとノドのコンディションとかもよかったんだろうな。と、一応フォローしておきますが、さすがに「おいっ!」と思いました、この時ばかりは。多くのお客さんたちも同じだったようで(そりゃそうだ)、みんな一斉に「えーっ!!」と抗議の声を放つ、はる、思わず「まあ、そのうち」と言葉を足す。


 というわけで。2本とも、とてもとてもいいステージだったんだけど、それを観た僕の率直な感想は、


 この人、1stアルバムの曲名で言うなら「このままでいよう」と思ってるかも。


 でした。


「一人ピーズ」に取り組む姿勢が真剣だし、シリアスだし、「お客が喜ぶ人気曲やりましょう」ってだけじゃなくて、昔の曲と最近の曲を混ぜつつ新曲もやってるし、それをライブで磨いて行っている感もあるし。


 あと、何よりも、楽しそうなのだ、本人が。2002年に復活して以降のTheピーズは、活動に制限ありで、そんなに数多くのライブは行えないという前提で動いて来た。はる、それについて納得はしているものの、やはり可能ならもっと精力的に活動したいという思いはあった、ということが、1年前の日本武道館の時に明らかになった。という件についても書いているので、しつこいですが、まだの方はこちらをどうぞ(http://www.realsound.jp/2017/06/post-84053.html)。


 でも、ひとりだったら、オファーが来れば気軽に動ける。オファーを出す方も気軽に出せる、というのもあるだろう。ここ1年の「一人ピーズ」での精力的な活動は、自分から動いたというよりも「声がかかったら行く」という感じだったのだろうと思うが、そしたら月に5本も6本も予定が入る、つまりバンドの時よりもいっぱいライブできるので楽しくなってしまったのではないか、と、思うわけです。


 うーん。確かにいいライブだったけども。でも、やはり、正直、バンドで観たいです。「一人ピーズ」をやめろ、とは思わないが、以前のようにバンドと並行にしてもらえるとうれしい、やはり。


 その後、2018年6月は「一人ピーズ」のライブが5本あり、7月は「一人ピーズ」5本とバンドTOMOVSKY1本、8月はフェス出演2本が入っている。なお、7月6日の神戸旧グッゲンハイム邸と7月14日の新宿紅布は「一人ピーズ」でワンマン。


 まだチケットあるのかどうか知らないけど、お近くのファンの方、足を運ぶ際はTheピーズ日本武道館Tシャツを着るなどして、無言で「待ってるんですけど」アピールをなさるのがよいかと思います。


 私も、これ以降も、ちょいちょい追っかけようと思います。(文=兵庫慎司)