現役日本人F1エンジニアとして、ハースF1でチーフを務める小松礼雄エンジニア。F1速報サイトで好評連載中のコラム、今回はF1第6戦モナコGPをふり返り。現在のF1で起きている真相と、現場エンジニアの本音を読者のみなさまにお届けします。
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モナコGPは、今季初めて大苦戦のグランプリになりました。FP1の走り始めからパフォーマンスが振るわなかったのですが、その原因はパーツの強度不足です。走行中にバージボード周辺のパーツが壊れてしまい、ダメージを受けたままの走行を余儀なくされました。
バージボード周辺のパーツは、フロントタイヤを通り抜けてくる空気を効率よく後方へ流し、またフロアの下にどう空気を流していくのか、ということを司る大切なエリアです。
だからこそ、どのチームもこのエリアの開発に集中して複雑なパーツを入れているわけで、そこが壊れてしまうとダウンフォースが恐ろしく落ちるし、ステアリングを切った時のマシンの反応もまったく変わってしまう。
もっと言えば、車高、ロール角、ヨー角というクルマの基本的な挙動変化によるダウンフォースの出方がまったく設計したとおりに出なくなってしまうわけです。そんな状態ではセッティング作業を進めることはもちろんできず、木曜日の走行はあまり意味のないセッションになってしまいました。
特にモナコはとにかくドライバーに自信を持たせることが大切です。よって走行時間中になるだけクルマの設定を変えずにとにかく走り続けることが必要になってきます。そんなところで、最初のランからクルマのパーツが壊れて安定したグリップが得られなくなってしまうと、お話しにならないんです。
1日置いて、土曜日の走行ではパーツ類の修復が難しいこと、そしてそれらが落ちてしまった時の安全面を考慮し、バージボード周辺のパーツ類を取り外して走行することになりました。設計に根本的な問題があるため、それを現場でどうにかすることはできませんでした。
結果、モナコはとにかく持っているすべてのダウンフォースをつけて走るべきサーキットであるにも関わらず、僕らは実際にはアゼルバイジャンGPと同等のようなミディアムダウンフォースレベルでの走行を余儀なくされていました。
この状況ではタイヤがきちんと作動しないし、当然タイムも出ません。予選順位も振るわず、ロマン(グロージャン)が15番手、ケビン(マグヌッセン)は最下位の19番手に終わりました。
ケビンはマシンが遅いから何とかしようとして逆にオーバードライブしてしまい、ミスを犯してQ1敗退となってしまいましたが、仮にQ2へ進出していたとしてもロマンと同じくらいのタイムが限界だったでしょう。Q2で10番手の(ピエール)ガスリーとは0.415秒差もありましたし、今回はQ3へ進出するのは難しかったと思います。
■完全摩耗した決勝の左フロントタイヤ
■度重なるパーツの強度問題
■急を要するデザインチームの底上げ
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