6月に入り、F1はこの時期恒例となったカナダGPを迎えた。木曜日のFIA会見に出席したのは、今回が母国グランプリとなるランス・ストロール(ウイリアムズ)のほかバルテリ・ボッタス(メルセデス)、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)、ストフェル・バンドーン(マクラーレン)の4人だった。
会見は、まず地元カナダ・ケベック州出身のストロールからスタートした。
「家族と多くの友人たちがいる地元に帰ってきて、本当にリラックスしているし、楽しい時間を過ごしている。いまは、明日から始まるグランプリが待ちきれない気持ちでいっぱいだよ」と、和やかに幕が開けた。
しかし、司会者がウイリアムズのパフォーマンスについて触れる。するとストロールの顔から一瞬笑顔が消えたが、気を取り直して、こんな模範回答を示した。
「ウイリアムズがモナコを得意としていないのは、いまに始まったことじゃない。彼らは自分たちの弱点を分析しているし、ここはモナコとはまったく異なるサーキットだから、気持ちを切り替えて戦いたいね」
この日の会見は、出席者のキャラクターなのか、あるいは質問の内容のせいなのか、この後も全体的に、壇上のドライバーたちが笑顔になることが少なかったのは気のせいだろうか。その中でも特に笑顔がなかったのが、フェルスタッペンだった。
司会者が「チーム内からも『レースに対するアプローチを変えた方がいいのではないか』という声がモナコGPの後にあったようですが、そのことについてはどう考えていますか?」とすると、フェルスタッペンはこんな返答をしたのである。
「アプローチを変えた方がいいんじゃないかって、同じ質問を繰り返されていて、正直ちょっと参っているよ。いままでアプローチを変えたことは一度もないし、アプローチを変えなかったから、いまここでレースができていると信じている」
「確かに今年、僕は何度かミスを犯したけど、ミスを犯したのは今年が初めてじゃないし、それをいつまでも繰り返して質問するなんて理解ができない。とにかく、レースが終わったばかりのいま、その話をするべきじゃないと思うから、僕はだれからの意見にも耳を傾けるつもりはないよ。もっとほかにも質問すべきことがあるんじゃない?」
これぞ、フェルスタッペン節。それに比べると、ボッタスがいかに優等生かがわかる。「もしバクーでトラブルに見舞われていなければ、いまごろはハミルトンやベッテルと接近したタイトル争いを繰り広げていたと思うのですが……」と質問されると、「僕は過去を振り返るのは好きじゃないんだ」と言って、こう続けた。
「いま獲得しているポイントというのは私のポイントであり、それはチームとともに獲得したポイント。それに目を背けることなく、過去を振り返るのではなく、未来を見つめたい」
優等生といえば、バンドーンも負けてはいない。「今シーズンはこれまでのところ、予選ではチームメイトに負けていますが……」と尋ねられると、丁寧にこう反論した。
「僕はその意見には同意できないね。確かに予選の勝敗だけをみれば、そう見えるかもしれないが、それはすぺてを表していない。僕とフェルナンドの予選のタイムは非常に接近している。もちろん、それでもフェルナンドが予選では常に速いことは事実だけど、むしろ僕たちは2台そろって、いい戦いをしていると判断してほしいね」
不良のような発言も優等生的な発言も、勝負の世界では成績が伴わないと、人々の興味は引かないということをあらためて認識したカナダGPの木曜日会見だった。