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爆笑問題も絶賛、サザン「闘う戦士(もの)たちへ愛を込めて」の“凄み”を考察

2018年06月07日 18:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 すでに全国のラジオ媒体において、サザンオールスターズの新曲「闘う戦士(もの)たちへ愛を込めて」のオンエアが始まっている。6月6日発表のラジオオンエアチャートでは、解禁1週目にして1位を記録。さっそく聴いて、心躍らせた人も多いことだろう。


 パーソナリティやDJの人達も、曲紹介の際は力が入るのではなかろうか。なにしろサザンオールスターズの40周年へ向け、具体的なキックオフを告げるのがこの作品だ。


 5月29日放送のTBSラジオ『JUNK爆笑問題カーボーイ』では、「凄いですね。恰好良すぎる。今の時代を斬ってるし」(太田光)、「桑田さんの“あの感じ”でありつつ、また新たな(曲な)んだよね」(田中裕二)と、辛口で知られる二人も絶賛していた。特に“時代を斬る”ことへのシンパシーは、先輩に対する単なる美辞麗句とは違う、太田自身の本音だろう。


 「闘う戦士(もの)たちへ愛を込めて」は、そもそも映画『空飛ぶタイヤ』の主題歌として書かれた作品である。池井戸潤による原作は、大企業のリコール隠しが題材の企業小説であり、歌詞に関しては、映画の内容からインスパイアされた部分もあるのだろう。


 歌詞に使われている用語からして、そうである。「戦士」に“もの”、「企業」に“ばしょ”とルビがふられ、歌う際にそう発音され、さらに〈弊社を「ブラック」とメディアが言った〉というフレーズも散見する。


 実際の桑田には、“企業戦士”としての経歴はないが、組織の狭間で矛盾やストレスを抱え、それでも前を向こうとする人達の心情が、実にリアルに響く作品に仕上がっている。


 なぜ彼は、このような世界観を描けたのだろうか? 組織ではなく、生身の人間にこそ注がれる、あたたかな眼差しがあってこそだろう。


 聞こえてくるサウンドは、夏へ向け、ただ原色というわけではない。イントロのキーボードからして、どこかに影が差し込む音色である。でも物事の真実とは、そんな光の加減があってこそ、逆に浮き立つものなのである。


 これまでのサザンオールスターズには、ありそうでなかった感覚かもしれない。今度のサザンオールスターズの新曲は、拡がりもそうだが、むしろ奥行きこそが快感な、そんな聴き心地にも思えるのだ。もちろん、気付けば宇宙をも取り込むかのような、そんなメロディのダイナミズムは、まさに桑田ならではのものだが。


 バンドの40周年ということでは、どんな立ち位置の作品だろうか。充分過ぎる実績を誇る国民的なバンドが、さらに踏みしめ、進んでいく場所とはどこなのか? 


 先日、桑田に会った際に伝わってきたのは、ともかく前向きに、サザンオールスターズとしての楽曲を、新たに作っていくことへの強い意志だった。


 でも確かに、バンドの現役性を証明する、最大にして唯一ともいえる手段がそれだろう。まずは「闘う戦士(もの)たちへ愛を込めて」が、確かな始動の役割を担った。


 すでに伝えられている通り、まもなく彼らのライブも予定されている。新曲の音源配信が映画『空飛ぶタイヤ』の公開日と同じ6月15日。ライブは40周年を迎えるまさに当日の6月25日と、その翌日の二日間である。


 場所はNHKホール。この会場はキャパが3500席ほどであり、観ることができるのは、よほど運の良い人達になりそうだ。26日の公演は全国47都道府県の映画館でライブ・ビューイングも実施されるようだが、日本中にサザンファンがいることを考えるとこちらもチケット即完必至なことは間違いないだろう。ただ、あくまでこれは、“キックオフライブ”と銘打たれたものであることを忘れないようにしたい。


 コンサートのタイトルも発表されており、「ちょっとエッチなラララのおじさん」である。ライブ開催の一報で心拍数が上昇し、しかしこのタイトルを見た途端、スーッと平常に戻る気もする。


 いったいこれはどういう“おじさん”なのか。この“おじさん”には紅一点・原由子も含まれるのか……。もしかして、昨年日本でも一大ブームを巻き起こしたミュージカル映画、『ラ・ラ・ランド』を意識しているのかもしれないが、自愛と自虐が混ぜご飯になったような、実にサザンオールスターズらしいタイトルとだけ言っておくことにしよう。


 ともかく6月15日。間もなくだ。この日を待つことにしよう。(文=小貫信昭)