2018年創設のWTCR世界ツーリングカー・カップの第6戦として、テルマス・デ・リオ・オンドで開催予定だったアルゼンチン戦の開催が中止され、代替ラウンドがスロバキアで開催される見込みとなった。
2013年からWTCRの前身であるWTCC世界ツーリングカー選手権の舞台となり、シリーズのレギュラー・サーキットとして認知されてきたテルマス・リオ・オンドは、同国出身でWTCC3連覇を成し遂げたホセ-マリア・ロペスを筆頭に、エステバン・グエリエリやネストール・ジロラミなど、数多くのドライバーをグローバル・カテゴリーに輩出しているトラックとして認知されている。
そのアルゼンチンラウンドはWTCCでの成功を継承し、今季からWTCCとTCRインターナショナル・シリーズが併合して誕生したWTCRでも、カレンダーの1戦に組み込まれていた。
既定のカレンダーでは6月末の第5戦ポルトガル、ビジャレアル戦を経てヨーロッパ・ラウンドを締めくくったシリーズは、8月4~5日の日程でこの南米アルゼンチン戦を組み込み、続く9月29~30日に中国・寧波で始まるアジア・ラウンドとの重要な橋渡し役として機能することが期待されていた。
しかし、WTCRをプロモートするユーロスポーツ・イベントと、サーキット側のオーガナイザーがアルゼンチンの首都ブエノスアイレスで会合を開き「アルゼンチン国内の経済情勢悪化の余波は避けられないことから、今季開催予定のラウンドを中止せざるを得ない」との結論に至ったため、スケジュールがキャンセルされる見通しとなった。
アルゼンチンの経済情勢悪化はWTCR以外にも影響を及ぼしており、6月初めにはダカール・ラリーのディレクターを務めるASO(アモリ・スポール・オーガニゼーション)のエティエンヌ・ラヴィンも、2019年大会からアルゼンチンステージを除外すると発言。さらにはアフリカ大陸での開催復帰をも示唆した。
これは2009年にダカール・ラリーが南米大陸で移転開催されて以降初の出来事となり、ラヴィンは「この決断は、同国内の経済的困難の影響によるものだ」とも明言している。
近年のアルゼンチンは年率が20%にも達しようかという極度のインフレ率を記録しており、先の5月には中央銀行が政策金利を40%にまで引き上げると発表。IMF国際通貨基金に緊急の財政融資の打診を行ったばかりだ。
WTCRアルゼンチンの代替ラウンドについては、当初5月中に発表される見通しだったが、最終決定は持ち越し。6月7日にフィリピン・マニラで開催されるワールド・モータースポーツ・カウンシル(WMSC)で採決が行われる予定となっている。
代替戦の開催候補地は2012年から16年にかけてWTCCの開催実績もあるスロバキアリンクで、すでにカレンダーと候補地はFIAのツーリングカー委員会による承認を完了。代替ラウンドは7月14~15日の開催が濃厚だ。
同日にはFIA格式の選手権であるETRCヨーロピアン・トラック・レーシング・チャンピオンシップが同サーキットで開催されることから、WTCRはETRCとの併催となる見込み。
このスケジュール変更により、WTCRは7月半ばから9月末の中国ラウンドまで、長期のサマーブレイクを挟む形となりそうだ。