フロントウイングから、かつてあったウイングの概念が消え去って久しい。それほどまでに、近年のF1におけるフロントウイングの役割は大きく変化してしまった。
もちろん、もともとの目的である、フロントウイング単体でのダウンフォース獲得に向けて、飽くなき探求は続いている。だが、もはやフロントウイングはそれ単体で語られるものではない。
現在ではフロントウイングとノーズは後方へ向かう空気流がマシンに触れる最初の接点であり、フロントウイングは空気と車体とのコラボを操作する、まさにインターフェースと言える存在だ。
フロントウイングの最新トレンドは、まずは空気をなるべく跳ね上げず、ウイング下面の空気流速を上げることだ。正面中央部下面は可能な限りの空気流をフロア下面に送ることが求められる。
そして、タイヤと車体の空間、サスペンションアームエリアに流れる空気流は、上方はポッド上面に、中間は冷却とポッドサイドへ、そしてノーズ下にバージボード等で形成されたトンネルはキールによって左右に別れ、フロアフロント部にダウンフォースを発生させながらマシン後方へと渦を巻いて行く。
また、フロントウイングのウイングエンドプレートエリアは、フロントタイヤとの巧みなコラボが現在の重要なエアロ処理となっている。エンドプレートエリアの最初の役割は、まずはなによりフロントタイヤ正面に可能な限り空気流を当てないこと。
そのため、エンドプレートエリアでは思い切りタイヤの外側に空気流を飛ばし、またウイングエリアの空気流は可能な限りタイヤを避けて車体側へと導き、この後方への抜けで、流速を速めることでダウンフォース発生を導き、同時に下面流のエアフローを床下へと運ぶ。
今回掲載する写真は、モナコGPで覗いたフェラーリSF71Hのフロントウイング下面を撮影したもの。サブ写真として、フロントウイング右側をやや上方から撮影した写真を右上に掲載している。フェラーリのフロントウイング下面の写真で面白いのは、エンドプレート床面、矢印の部分だ。
スロットはすべて床に向かって刻まれ、フロントタイヤ正面に向かうはずの空気流を極めて低く路面に吐き出している。今シーズンのトレンドを二分する処理で、フェラーリはメルセデスやフォース・インディアとはフロントタイヤへの空気流の処理へのアプローチが異なり、トンネル形状のエンドプレートを採用していない。
もちろん、この処理の違いはフロントウイング単体の話しではなく、マシンの総合的なエアロコンセプトの違いから導き出されたものなのだろう。