ドラマ『Aではない君と』が今秋にテレビ東京系で放送される。
同番組は『第37回吉川英治文学新人賞』を受賞した薬丸岳の同名小説のテレビドラマ版。1人息子の翼が起こした死体遺棄事件により、翻弄されていく会社員・吉永圭一と、逮捕後も何も語ろうとしない翼を担当する弁護士・神崎京子が真相に立ち向かっていくというあらすじだ。
吉永圭一役に佐藤浩市、神崎京子役に天海祐希がキャスティング。佐藤がテレビ東京のドラマに出演するのは約10年ぶりとなる。監督は『アンナチュラル』の塚原あゆ子。塚原監督が2時間枠の特番ドラマを演出するのは今回が初となる。脚本は『ゲゲゲの女房』や『コウノドリ』を手掛けた山本むつみが担当。
佐藤浩市は「薬丸岳さんの原作モノは今回で2作目ですが、どちらも“加害者家族”という、子供が殺人の罪に問われたときに、どういう形で受け止めるのかという正解のなさ……贖罪を含め、ただ『謝る』ということでは何もクリアできないという、答えがあるようでないような、そういうテーマの作品です」とコメント。
また天海祐希は「台本を読み終わり、胸の痛みが止まらずにいました。誰の、どの立場も分かるが故、とても苦しかったです。しかし、だからこそこのドラマには、意味があるのではないかと」と述べている。
■佐藤浩市のコメント
・出演にあたっての意気込み、吉永役について
薬丸岳さんの原作モノは今回で2作目ですが、どちらも“加害者家族”という、子供が殺人の罪に問われたときに、どういう形で受け止めるのかという正解のなさ……贖罪を含め、ただ「謝る」ということでは何もクリアできないという、答えがあるようでないような、そういうテーマの作品です。そんな薬丸さんの原作の難しさを僕はどういう形で提示できるのかなと…。その難しさと今、向き合っています。前回出演した(映画)『友罪』とはまた違った形で踏み込んだあり方、子どもとの距離感であったり、何かそういったものがひとつ踏み込んでできるのではないかな、と。
・天海祐希との共演について
天海さんと共演するのは久しぶりで…子供を持つ女性弁護士という役柄を、彼女が彼女らしく、また彼女らしくなく、どう演じてもらえるのか非常に今から楽しみです。
・視聴者へのメッセージ
テレビを観られる方々が、テレビに何を求めているのかでずいぶん感じ方が変わってしまうのだと思うんだけれど、こういう題材の作品をテレビで放送するということ、それを視聴者の方に提供するということの意味を、ぜひご覧になる方々にも感じていただけたらと…。
できれば避けたほうがいい題材なのかもしれないけれど、この作品に我々ができるだけ逃げずに、向き合って、向かい合って、これから作品を作ろうとしています。その想いを視聴者の方々にも何か、受け止めていただきたいなと思っています。
■天海祐希のコメント
・出演にあたっての意気込み、神崎役について
私は、加害者、加害者側家族を支える弁護士の神崎京子を演じさせていただきます。
台本を読み終わり、胸の痛みが止まらずにいました。
誰の、どの立場も分かるが故、とても苦しかったです。
しかし、だからこそこのドラマには、意味があるのではないかと。
この作品に参加させて頂けて、大変光栄です。
丁寧に丁寧に、心を込めて演じたいと思います。
「Aではない君と」
この作品に対する、主演の佐藤浩市さん、携わる全ての人々の思いが沢山の方々に伝わる事を願っています。
・佐藤浩市との共演について
佐藤浩市さんは、心から尊敬する先輩で、素敵な兄貴で、お芝居や向き合う姿勢、人としてなど....沢山の事を教えてくださいます。
共演の経験はあるのですが、今回の様にがっつりとお芝居させて頂くのは、初めてなんです。
なので、怖い反面、とても嬉しくて、やっぱり緊張して....
でも、成長を見て頂きたいし。非常に複雑な心境ですが(笑)
こんなに幸せな事はないなと思って、全身全力でぶつかろうかと。
えへへ。
■薬丸岳のコメント
デビュー作である『天使のナイフ』からいくつかの少年犯罪にまつわる作品を描いてきました。その多くが、残忍な罪を犯す加害者への怒り、被害者やそのご家族が感じてらっしゃるであろう悲しみと無念、そして加害者を護るために存在する少年法への理不尽さを訴えるものでした。
テレビのニュースなどで悲惨な事件に触れると、わたしは必ず被害者やそのご家族に感情移入してしまいます。そんなわたしが殺人を犯した少年とその親に寄り添う物語である『Aではない君と』を紡いでいくのはとても難しい作業となりました。ただ、どんなに困難であっても描きたい題材でした。この作品で描かれる問題を考え続けることで、どうすればこのような悲惨な犯罪をなくすことができるのかという答えの一端が見えてくるのではないかと感じたからです。
そのような思いで紡いだ『Aではない君と』が今回、わたしも大好きな役者さんである佐藤浩市さんと天海祐希さん、また素晴らしいスタッフの手によってドラマ化していただけることになり、望外の喜びを感じております。
殺人という取り返しのつかない大きな罪を犯した少年に、佐藤さん、天海さん、そしてスタッフの皆さんが、ドラマの中でどのように寄り添い、どのように向き合い、また視聴者に向けてどのようなメッセージを導き出されるのか。今から作品の完成が楽しみでなりません。
■塚原あゆ子監督(ドリマックス・テレビジョン)のコメント
もし、近しい人が殺人罪で逮捕されたら。
その人の無実を信じられるだろうか。
その罪を受け入れられるだろうか。
許されることのない、その苦しみを一緒に背負えるのだろうか。
原作の中に流れる、答えのない問いに、胸を掴まれました。
映像化する事は非常に難しいけれど、この問いを出来るだけ多くの人に投げかけたいと思いま
した。翼という少年の真実とそれを探る父親の姿を、スタッフ一同真摯に描いていきたいと思
います。
■稲田秀樹チーフプロデューサーのコメント
数年前に原作を読んだ時、そのテーマの奥深さに心が震え、ぜひ映像化したいと思い立ち
ました。もともと薬丸岳先生の作品のファンでしたが、本作品はそのミステリー性の巧みさとともに、親子の情を描いたヒューマン性の豊かさが際だっています。難しいテーマながら、誰もが同じような体験をしかねない「普遍的」な内容でもあり、誰もが気軽に見られる「テレビドラマ」という形で世に出したいと考えました。
その後、様々な困難があり、なかなか実現に至らなかったのですが、結果、主要キャストに佐藤浩市さん、天海祐希さんという当代最高峰のカップリングといっていいお二人をお迎えすることができ、さらには脚本に『八重の桜』、『ゲゲゲの女房』、『コウノドリ』などでご活躍の山本むつみさん、そして『夜行観覧車』や『リバース』、最近では『アンナチュラル』などのヒット作が続く、今一番脂の乗ったクリエイターである新井順子プロデューサーと、塚原あゆ子監督のコンビにも参加して頂き、これ以上は望むべくもない最強の布陣が揃いました。本当に待った甲斐があったと思っています。
これからスタッフ・キャストともに難しい戦いへと挑むことになりますが、あえてエンタテインメント性にこだわりながら、最後に「何か」を残せるドラマになればと考えています。テレビ史に残る第一級のヒューマン・サスペンスを目指します。