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天馬の瞳が完全に凍りつく 『花のち晴れ』音と晴の“もどかしさ”を助長する巧みな演出

2018年06月06日 07:12  リアルサウンド

リアルサウンド

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 友情を誓い合う握手に、音(杉咲花)の家でメグリン(飯豊まりえ)、愛莉(今田美桜)、紺野(木南晴夏)の4人で行う女子会に、“C5”のメンズ4人でプールサイドで好きなタイプを語り合う男子会。英徳学園に不穏な前兆が訪れる中で、キラキラとした青春模様が描き出された6月5日放送のTBS系列火曜ドラマ『花のち晴れ~花男 Next Season~』第8話。


参考:『花のち晴れ』放送前の平野紫耀【写真】


 前回のエピソードで、“庶民狩り”の廃止を宣言した晴(平野紫耀)に心動かされ、桃乃園への転入をやめることにした音。そんな中で、英徳の学内では“C5”への絶大な信頼が崩れ始め、「英徳に未来はない」の落書きが。その犯人探しもつかの間、学内で催されるメグリンの誕生パーティーに脅迫状が届けられる。


 海斗(濱田龍臣)曰く、“英徳最後の希望”である晴とメグリンの交際。それが結実する寸前での一連の出来事以上に“事件”と呼べるのは、音と晴、天馬(中川大志)とメグリンの四角関係にも不穏な空気を漂わせる中盤での映画ダブルデートのシーンだろう。以前この4人での遊園地ダブルデートとは一転して、音と晴の関係は“友情”の名の下に修復。対照的に天馬はどこか自信を失いはじめているのだ。


 意識せずに隣り合った席に座る音と晴を、両サイドから挟むように座る天馬とメグリン。上映中も同じタイミングで笑い、同じタイミングで涙ぐむ姿に、完全に2人だけの世界が作られてしまう。そこに駄目押しをするかのように、上映後の甘味処でのかき氷のやり取りとなれば、これは音と晴の楽しげなデートのシーン。すっかり背景と化してしまう天馬とメグリンの表情には、観ているこっちがザワついてしまうほどだ。


 それでもクライマックスでは音と天馬、そして晴とメグリン、2組とも一件落着の様相を見せるわけだが、晴から名前を呼んでもらい想いが実ったことに喜びの涙を浮かべるメグリン以外、3人の表情はどこか曇っている。晴の目の奥にはきっと食事会から見送る音の姿がフラッシュバックしていただろうし、音の表情にも揺らぎが感じられる。そして何よりも、天馬は完全に凍りついた瞳をしており、波乱の展開が容易に予想できる。


 ところで、4人が観る映画が杉咲の代表作『湯を沸かすほどの熱い愛』をもじった「湯をわかせないほどの冷めた愛」であったり、上映中にポップコーンをぶちまける晴の姿だったり、最高級に“青春”している男子会であったり、逃げる犯人を一撃で倒す愛莉の姿だったりと、楽しい要素が満載だった今回のエピソード。


 その中でも、落書きを消すシーンで音が晴に雑巾の絞り方を教える流れに、このドラマらしいデジャブ的なリンクが感じられた。思い返してみれば、第1話での紺野とのやり取りの中で音は、バイトを始めた頃は雑巾の絞り方もわからなかったと語られていたではないか。さらに、これまで音から晴に向けられていた「しょーもない」のフレーズが、逆に晴の口から音に向けて放たれるシーンも登場。“相性の良さ”という漠然としたシナリオを超えて描かれる、音と晴が互いに影響を与え合う様や、似た境遇に置く演出。ますますこの2人の関係のもどかしさが助長され、いてもたってもいられなくなる。(久保田和馬)