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中条あやみが語る、『覆面系ノイズ』で得た自信 「10代最後にめぐりあえたことを幸せに思います」

2018年06月05日 16:21  リアルサウンド

リアルサウンド

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 中条あやみが主演を務める映画『覆面系ノイズ』のBlu-ray&DVDが6月6日より発売される。白泉社『花とゆめ』で連載中の同名コミックを実写化した本作は、伝えたいのに伝えられない想いを抱える高校生たちが、その想いを歌や音楽にのせて相手に届ける模様を描いた青春ラブストーリー。主演の中条は、「in NO hurry to shout;」のボーカル・アリスとして力強い歌声も披露し、その歌唱力は大きな話題となった。


 リアルサウンド映画部では、Blu-ray&DVDの発売を記念し、中条あやみにインタビューを行った。本作で得た役者としての覚悟、10代最後となった作品への思いなど、たっぷりと語ってもらった。


●“演じる”というよりも“寄っていく”


――映画公開から半年、撮影からは約1年が経ちますが、改めて“歌”が最重要な課題となった本作を振り返っていかがですか?


中条あやみ(以下、中条):人前で歌うのは苦手でしたし、上手く歌える自信もなかったので、「なんでこの役をオファーしていただけたんだろう?」という思いが最初でした。実は撮影中も、自分が歌うことにも慣れなかったぐらいで。


――本作は人気少女マンガが原作です。音楽をテーマにした漫画の場合、読者がそれぞれ歌声を想像している分、単純な実写化以上にハードルがあったと思います。でも、中条さんが有栖川ニノをこれ以上なく体現されていてびっくりしました。「in NO hurry to shout;」(以下、略称イノハリ)のライブシーンもとても格好よかったです。


中条:最高の褒め言葉でうれしいです。チープじゃなくてよかった(笑)。


――劇中でもニノのボイトレシーンがありますが、実際に中条さんも?


中条:撮影に入る半年ほど前からボイトレを始めて、とにかく毎日歌っていました。ニノちゃんの声は、繊細な声なのにすごい力強さがあり、ユズとモモを惹きつけるものでなければいけない。観客の皆さんにも説得力を持って伝えられるかが大切なので、いかに体現することができるか、そのプレッシャーはありました。


――さらに人気少女コミックということで、原作ファンからどう見られるかというプレッシャーもあったかと思います。


中条:わたし自身も好きな漫画の実写映画化が発表されると、「自分の思っていたイメージと……」と思ってしまうこともあったりします(笑)。なので、原作を好きな方にとっては「ニノちゃんだな」と思ってもらえるように、知らない方にとっても、「こんなキャラクターいそう」と思ってもらえるように、“演じる”というよりも、自分がニノちゃんに“寄っていく”感覚が本作ではありました。


――2017年は本作の前に『チア☆ダン~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~』に出演されていますが、こちらもダンス部の部長でダンススキルも要求される難役だったかと思います。でも、それ以上にニノの方が難しかったそうで。


中条:原作がある作品の場合、キャラクターのイメージは必ずあるので、まずニノちゃんに寄っていくことが難しかったです。「自分だったらこういう表情をするな」と思っても、「ニノちゃんは絶対に違う」と考えながら表情を作ってみたり。それは初めての経験でした。


――ニノの自分の想いに真っ直ぐ過ぎる性格は、ともすれば周囲に嫌われかねないほどですよね。でも、打算があって行動しているわけではないから不思議と許せるというか。そのバランスは演者として難しかったのでは?


中条:作品を観た女性から「ぶりっ子」「思わせぶり」と思われるような人物にしたくないと思っていました。ニノのユズやモモへの想いも、子供の頃に受け取ったものをずっと大切にしてきて、それが衝動的な行動につながっているからだと。途中からは演技としてではなく、いかに自分がニノとしていられるか意識していたところはあります。


●役者としての壁を乗り越えた


――このたび発売されるBlu-ray&DVDの特典には、撮影のメイキング映像が多数収録されています。ニノがイノハリとして最初の収録を行うシーンは、志尊さん、磯村さん、杉野さんと本当に心から楽しんでいる様子が伝わってきました。


中条:わたしが歌を練習していたのと同じように、みんなも未経験から短期間で楽器をそれぞれ練習していて、あのシーンでやっとみんなでひとつの音を奏でることができた。その喜びはすごくありましたし、バンドとして空気がひとつになった感じでした。


――本編では使用されなかったNGカットとして、歌の最後に中条さんが感極まって涙してしまうシーンにグッとくるものがありました。


中条:それも入ってるんですか? みんなの想いがひとつになって1曲になっていく感じがすごく気持ちよくて感動してしまって。熱い想いが溢れ出て気がついたら泣いてしまいました。


――その一方で、観客も入るライブシーンの撮影前は「逃げ出したい」と語っているメイキングもあって(笑)。


中条:今だったら歌いたい!って図々しく思う部分もあるんですが(笑)、あのときは恥ずかしいという以上に、自分がステージに立っていい存在なのかという思いがありました。さまざまな思いを抱えた方が歌ってきた神聖な場所だからこそ、中途半端な気持ちでステージに上がってはいけないと思っていたんだと思います。


――最後のライブシーンが圧巻だけに直前でそんな気持ちだったのは意外でした。イノハリの「Close to me」は、ニノ、ユズ、モモ、三人の関係性とも歌詞がリンクしてすごく素敵です。


中条:本当にうれしいです。私の力ではなく、楽曲を作ってくださったMAN WITH A MISSIONさん、イノハリのメンバー、スタッフの皆さん、ライブに参加してくださった観客の皆さんと、すべての思いが集まった結果、素敵なシーンを残すことができたのかなと思っています。改めて感謝したいです。


――単独主演映画という意味では本作が初めての作品となりましたが、座長として得たものは?


中条:本当にこの作品では根性を鍛えさせていただきました(笑)。『チア☆ダン』では、年下のすずちゃん(広瀬)の主演の背中を見て、「私も頑張ろう!」と思って『覆面系ノイズ』に入ったんですが、思うようにいかなくて空回りしてしまったところもあって……。でも、共演者のみなさん、スタッフさんに支えていただいて、ひとつ壁を乗り越えることができたと思っています。『チア☆ダン』の監督の河合(勇人)さんと『ニセコイ』で再びご一緒させていただいているのですが、「『チア☆ダン』の後に何かあった? なんか肝が据わったね」と言われて。「おそらく『覆面系ノイズ』です」と(笑)。それぐらい本作の経験は大きかったです。


――中条さんが壁を乗り越えた要因として、やはり三木康一郎監督の存在が大きかったですか?


中条:監督は何を求めているんだろう?と本当に分からないときもあって、とても怖かったときもありました。でも、ニノはいまどんな感情でいるのか、私が何をしなくてはいけないのか、すごく丁寧に話して下さって。三木監督には本当に鍛えていただきました。


――10代最後にこの作品にめぐりあえたことは大きかったと。


中条:今、本作の現場に行ったら逃げてしまうかもしれません(笑)。このときでしかできない表情もあったでしょうし、感情もこのときにしか感じられないものがあったと思います。10代最後の何が何でも!という時期に、本作にめぐりあえたことを改めて幸せに思っています。


(取材・文=石井達也)