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aiko、エレカシ、RADWIMPS、三代目JSB……トップアーティストたちの新作から見える現在地

2018年06月05日 11:41  リアルサウンド

リアルサウンド

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 切なさと愛らしさが充満したaikoの2年ぶりのフルアルバム、31年目を迎えたエレファントカシマシの渾身の新作、ボーカリストのソロ作を含む三代目 J Soul Brothersの3枚組ニューアルバムなど、J-POP、ロックを中心に各ジャンルを代表するアーティストがこぞって新作をリリース。トップアーティストたちの現在地が見える、魅力的なニューアイテムを紹介します。


(関連:aikoの「ストロー」は新たな代表曲に? クセになるフレーズが生み出す効果を考える


aiko『湿った夏の始まり』
 aikoの2年ぶりのアルバムのタイトルは『湿った夏の始まり』です、と聞いただけでもう切ない。気温も湿度も高く、ぜんぜんスッキリしないけれど、この湿り気と熱気のなかじゃないと感じられない、かけがえのない気持ちがあるーーそれは彼女が生み出すラブソングそのものだ。シングル「恋をしたのは」「予告」「ストロー」を含む本作でもaikoは、恋愛のなかにしか生じない繊細で狂おしい感情を、独特のブルーノート感に溢れたメロディとともに丁寧に紡ぎ出している。個人的ベストトラックは「愛は勝手」。ジャズとソウルを行き来するようなオーガニックなサウンドのなかで、思うようにいかない愛の行方を美しく描き出すこの曲からは、彼女のソングライティングの深まりがはっきりと伝わってくる。


エレファントカシマシ『Wake Up』
 31年目を迎えてまたもや覚醒。やはりエレカシは不世出のロックバンドである。オールタイムベスト『All Time Best Album THE FIGHTING MAN』を中心にした30周年アニバーサリーを駆け抜けたエレカシ。「Easy Go」(テレビ東京 ドラマ25『宮本から君へ』主題歌)、「風と共に」(NHK『みんなのうた』)などのタイアップ曲を含む本作『Wake Up』で彼らは、世間とか常識みたいなものに抗い、自分自身の意志で生きようとする決意をダイナミックに響かせている。<もう一度 ここからスタートだ>と宣言するアッパーチューン「Wake Up」から、自らの生を全うしたいという切実な思いを綴った「オレを生きる」まで、すべての楽曲に溢れんばかりの情熱が漲っているのだ。エレカシの激しさをポップに彩る村山☆潤のアレンジも見事。


RADWIMPS『カタルシスト』
 2018フジテレビ系サッカーテーマ曲となったRADWIMPSの新曲「カタルシスト」は、ドープかつエッジーなトラック(ドラムンベース的要素も少し)のなかで<ただ願うだけ 君の夢が咲き誇るまで>という前向きなラインを高らかに響かせるナンバー。基軸になっているのはヒップホップだが、高揚感溢れるサビのメロディを加えることで、リスナー(とサポーター)を力強く鼓舞するアンセムに結びつけている。「HINOMARU」というタイトルを冠したカップリング曲は、ノスタルジックな旋律、壮大なスケール感を備えたアレンジとともに、この国に脈々と根付く精神、それを受け継ぐ者としての誇りを歌い上げた勇壮な楽曲。ロックバンドの枠を軽々と超えるサウンドメイクも印象に残る。


三代目 J Soul Brothers『FUTURE』
 グループの楽曲に加え、今市隆二、登坂広臣の作品もまとめた三代目 J Soul Brothersの約2年ぶりのニューアルバム『FUTURE』(3枚組)。三代目の新作には、オランダ発のベースミュージックデュオ・Yellow Claw、ジャスティン・ビーバーとのコラボでも知られるBloodPop®など海外のクリエイターが参加し、最先端のトラックと親しみやすいJ-POPをつなぐスタイルをさらにアップデートさせている。郷愁感を描き出すバラードナンバー「蛍」など、しっとりと聴かせる楽曲も本作の魅力だ。今市のソロ作にはNe-Yoとのコラボ曲「Shining」、ブライアン・マックナイトとのデュエットソング「LOVE HURTS」を収録。登坂作品はAfrojackが全曲プロデュースを担当、ダンスミュージックと歌モノを上手く融合させている。いずれも音楽的ルーツとボーカリストとしての個性が実感できるアルバムと言えるだろう。


『hide TRIBUTE IMPULSE』
 hide没後20年のタイミングで制作されたトリビュートアルバム『hide TRIBUTE IMPULSE』。原曲へのリスペクトを率直に示したDragon Ashの「ROCKET DIVE」、アコギを軸にした有機的なアレンジで歌詞に含まれた深遠なテーマ性を描き出したCoccoの「GOOD BYE」など、個性豊かなカバーを堪能できる。特筆すべきはアイナ・ジ・エンド(BiSH)、UK(MOROHA)による「Bacteria」。ジャンル、性別、年齢を超越したこのコラボレーションは、すべての枠を超えようとした生前のhideのスタンスに直結していると思う。ドキュメント映画『HURRY GO ROUND』の制作過程で発見されたhideの未発表ボーカル音源を使った「HURRY GO ROUND(hide vocal Take2)」も収録。(森朋之)