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「トップガン2」に各軍も注目 Twitter上で小競り合い

2018年06月04日 15:22  おたくま経済新聞

おたくま経済新聞

「トップガン2」に各軍も注目 Twitter上で小競り合い

 トム・クルーズさん主演の名作映画「トップガン」。日本にアメリカ海軍のエリートパイロット養成機関であるファイター・ウエポンズ・スクール(戦闘機兵器学校)の存在を知らしめ、同時にファッション面でフライトジャケットのブームを起こした作品です。この続編「トップガン2」の撮影が始まったことをトム・クルーズさんがTwitterでほのめかすと、戦闘機を運用する軍の公式アカウントが次々と反応し、途中から「誰がベストなのか」という、まるでミリタリーファンの間で交わされるような展開になりました。


【さらに詳しい元の記事はこちら】


 きっかけは、トム・クルーズさんが2018年5月31日にツイートした「#Day1」というハッシュタグのみの文と、パイロットスーツ姿(右肩にトップガン卒業生を示すパッチが付いていることにも注目)のマーベリックがF/A-18Fの方を振り返っている「FEEL THE NEED.(何を欲しているか、肌で感じろ)」という写真の投稿。



 これに多くのファンが「トップガン2」の撮影が始まった!と色めき立ちました。反応したのは一般のファンだけでなく、軍の公式アカウントも。アメリカ空軍の公式アカウントが引用リツートでまず反応。


 「もしマーベリックが本当にスピードが欲しいのなら、我々のF-15Eストライクイーグルに飛び乗ることができるよ。知ってるかい?(F-15Eは)時速1875マイル(3000km)のトップスピードがあるんだ」



 最新のF-22やF-35ではなく、F-15Eにしたのは、最高速度がF-22より若干速いとともに、F-14やF/A-18Fと同じく複座(パイロットと兵装士官の2人乗り)であることを意識したものでしょう。


 これにカチンときたのがアメリカ海軍。空軍の「スピードが欲しいのなら」と、「トップガン」での「(もっと)スピードが欲しい」というセリフを意識したものだったので、こちらも「トップガン」のセリフを引用して空軍に反論。


 「忘れるなよ坊や、2番目にはポイントなんてつかないんだぜ」



 ここから軍同士の誇りをかけた(?)言い争いに発展。空軍が


 「F-15はお前さんの言うような『2番目』なんかじゃないぜ。スコアボードを見てみろよ!# undefeated(難攻不落)」



 と、F-15が空中戦において撃墜されたのがただ1度(1995年11月22日、航空自衛隊第303飛行隊での訓練中、僚機のミサイル誤射によるもの)だけだということを引用して反論すると、今度はアメリカ海兵隊が「伝家の宝刀」で横槍を入れます。


 「空軍さんは空母から発着艦できたっけ?」(現在は削除済み)


 空軍パイロットと海軍・海兵隊パイロットが言い争いになるときに、必ず持ち出されるフレーズがこれ。空母の限られたスペースで発着できる技術と度胸を、海軍と海兵隊のパイロットは誇りにしている訳です。


 これに対し空軍の反撃は
「タンカーが空にいるのに、何でまた海に降りなきゃいけないんだい?」



 と、KC-10から空中給油を受けるF-15とF-16の写真をつけてツイート。しかし、空中給油に関しては空母艦載機も行えるので、これはパイロットの「腕」についてあげつらった海兵隊に対して、空軍が論点ずらしを行なったとも取れそうです。


 そんな中、6月1日になってフランス海軍の戦闘機部隊「Chasse Embarquée」公式アカウントが参戦。


 「フランス海軍のパイロットは準備万端だよ!」



 と、トム・クルーズさんの写真をネタにして、フランス海軍の戦闘機パイロットがラファールM(ラファールの空母運用型)を振り返って「THE NEED…(欲するものは)」という写真をつけてツイート。アメリカだけの話ではなくなりました。


 カナダ空軍のCF-18デモチーム公式アカウントも6月2日に、「トップガン」のセリフを引用してリツート。


 「スピードが欲しい!!(…the need for speed!!)」



 カナダは「何が最強か」というところからは一線を引いた立場のようです。


 このような「最強の戦闘機は」などという論争は、ミリタリーファンや航空ファンの間で時折交わされる定番のネタで、各自が好みの戦闘機を推しまくる……という展開になります。各軍の公式アカウントととしては、それぞれの「誇り」もあるので、おふざけも挟みつつ真剣勝負ですね。日本の公的なアカウントが「公務員だから」「お役所だから」と真面目な運用になってしまい、ちょっと弾けたことをすると抗議の声が寄せられて自粛する……という状況に比べると、このような自由度の高いツイッターアカウントの運用が許されるのは羨ましい限り。


 さて最後に、人類で初めて水平飛行で音速を突破した人物として知られる、第二次世界大戦のエースパイロットで、テストパイロットとして数多くの戦闘機に乗ってきたチャック・イェーガー氏が、かつて自身のTwitterに寄せられた「あなたの乗った中で、最高の戦闘機はどれですか?」という質問に答えたツイートをご紹介して、この項を締めたいと思います。イェーガー氏はただ一言。


 「任務内容による(Depend on the mission)」


 それぞれの機体には適した任務、そしてウイークポイントがあるので、一概に「これが一番」とは決められないということでした。「最強」というものは、実はとてもあいまいな概念なんですね。


Image: U.S. Navy、USAF


(咲村珠樹)