インディカー・シリーズ第8戦となるデトロイト戦日曜のレースは下り坂の天気予報の通り、朝9時過ぎから大雨となりしばらく降り続いた。もしかすると予選がキャンセルされるのでは?と思う程の大雨だったが、午前10時45分の予選開始時間の前には雨は上がりつつあって、路面清掃の甲斐もあり、ウエットコンディションながらほぼ予定時刻通りに開始となった。
琢磨は悪天候でもこのデトロイトのコースは得意としていたし、本人も「ヘルメットの中でやった!と思っていた」と言う程だった。
2グループに分かれ、今回は最初のグループのタイムアタックで、琢磨の走りに大いに注目が集まったが、最初のアタックラップ以降タイムが上がる兆しを見せず、むしろほかのマシンにどんどんと抜かれていく。
トップは1分33秒中盤で周回しているのに琢磨は1分37秒台で、そこからは浮上してくることなく終わった。このグループで10番手でクラッシュしたトニー・カナーン、走行できなかったレネ・バインダーを除けば、ほぼ最後尾。マシンを降りた琢磨は意気消沈していた。
「まったくと言っていいほど、グリップしなかった。タイヤの内圧が原因なのか、他に原因があるのか今はわからないけど、何かがおかしい……」
恵みの雨か、琢磨に流れが向いてきたかと思ったが、そのチャンスを有効に活かすことは出来ず、グリッドは総合20番手からのスタートになった。
予選後に雨は止み、レーススタート時には完全なドライコンディションに。
しかし、スタート時に珍事が起こる。シボレーコルベットのペースカーがスタート直後にターン2を回った所でコントロールを失ってウォールにヒット!
破片を撒き散らしてその場にストップ。後続のインディカーは一斉にそこにとどまることになってしまった。幸いにもドライバーに怪我はなく、インディカーの列にも異常はなかったが、レースは45分ほど遅れてスタートになった。
「昨日のライアン(ハンター-レイ)のように、うまくピットに入って積極的な3ストップ作戦を考えてました」と言う琢磨は、スタートのドタバタを避け、ポジションを上げてレースが始まった。レッドタイヤのグリップが落ちてきた9周目にすぐさまピットに入り、タイヤ交換と給油を行う。
ピットアウトすると同様の作戦を取っていたペンスキーのシモン・パジェノーやジョゼフ・ニューガーデン、トニー・カナーンらがいたが、カナーンは先へ行ってしまったものの、ペンスキーの2台に蓋をされる形でペースを抑えられてしまう。
この時点で17~18番手だったが、2度目のピットインは、デビューレースのサンティーノ・フェルッチがスピンしクラッシュした時点でボビー・レイホールがピットに入れとコール。琢磨はすぐにピットに入ったが、フェルッチが自走でコースに戻れたためにイエローコーションとはならず、ここでの順位挽回はならなかった。
最後のピット後では、ペースを上げつつも前にいるジェイムズ・ヒンチクリフに追いついたが、プッシュ・トゥ・パスを使っても彼を攻略することができず、むしろトップを走っているハンター-レイにラップダウンされることになってしまった。
「今日はやる事がすべて裏目に出てしまうような一日だった。クルマは昨日から大きく変えてはいないけれど、前のクルマを抜いていくようなスピードはなかったし、ここ(デトロイト)は期待していただけに本当に残念です」と言う琢磨。
昨年はグラハム・レイホールが圧倒的な速さを見せたデトロイトだったが、ニューエアロキットとなった今回は彼も5位止まりで、レイホール・レターマン・ラニガンはここでのアドバンテージを失ってしまったようだ。
琢磨は第7戦5位入賞の勢いで、今日のレースでも期待はかかったのだが、噛み合ったかのように見えた歯車は、またわずかに狂ってしまったようだ。
しかし今週末にはテキサスでのレースが控えている。「今は何をどうやっても……」ともがき続ける琢磨だが、その壁を乗り越えてくれることを祈ろう。