インディカー・シリーズ第8戦がデトロイト・ベルアイルパークで開催。ダブルヘッダーのレース2となる第8戦決勝レースが3日に行われ、ライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)が3年ぶりの勝利を飾った。後方グリッドからスタートした佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)は17位でレースを終えた。
デトロイト・ダブルヘッダーの2レース目、予選は朝方の大雨によってウエットコンディションで行われ、ポールポジションはアレクサンダー・ロッシ(アンドレッティ・オートスポート)、予選2番手はロバート・ウィケンス(シュミット・ピーターソン・モータースポーツ)のものとなった。
雨を得意とする佐藤琢磨はクルーがタイヤの内圧を間違えたらしく、まるでグリップしないクルマに手こずって予選20番手となった。
雨雲は去り、レースはドライコンディションでスタート。ロッシがポールから逃げ、後方では作戦を駆使した戦いを仕掛けるチームが続出した。
ライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)はレース1同様に序盤にピットイン。ブラックタイヤでの走りを長くし、3ストップでブラックタイヤを投入し続けることで逆転を狙った。
レース1ではあと一歩届かなかった作戦だが、レース2でもチャレンジ。予選で失敗し、後方からのスタートとなったトニー・カナーン(AJ・フォイト・エンタープライゼス)、佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)、ジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)らももちろん3ストップ作戦でトップグループ進出を狙った。
レース1でもハンター-レイの速さは突出していたが、ウイナーとなるスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)にも互角の速さがあり、3ストップ作戦での逆転は叶わなかった。しかし、レース2でのハンター-レイは前日以上に走りにキレがあった。
ロッシは2ストップ、ハンター-レイは3ストップ、同じチームのドライバーたちが異なる作戦を採用し、最後には優勝を争う。非常に興味深いレースになった。
昨シーズン後半からの流れからいえば、昨日のレース1での3位フィニッシュでポイントリーダーとなっているロッシが逃げ切り、さらに勢いをつけると見えていた。しかし、昨日の2位で勝利を望む気持ちをさらに強くしたハンター-レイは、凄まじい追い上げを開始した。
52周目、最後のピットストップを終えたハンター-レイがコースに戻る。1回多いピットストップをこなしているにも関わらず、それがイエローに助けられることもなかったというのに、ハンター-レイはロッシの後方8秒にピットアウトした。
タイヤが完全に温まると、ハンター-レイは差を削り取り始めた。8秒近くあった差が5秒台、3秒台と減っていき、残り周回数が10周を切るというところでハンター-レイはロッシの背後1秒に迫った。
そして65周目のターン3、ロッシは先輩チームメイトの気迫に負けたのかブレーキングをミスし、エスケープゾーンへ直進した。
目の前からロッシの消えたハンター-レイは今シーズン初の優勝は、2015年8月のポコノ以来となるキャリア17勝目だ。
ロッシはブレーキをロックさせた時にタイヤを傷めた。幸い走り続けることのできた彼は、ピットに戻って新しいタイヤを装着。13番手まで後退し、最終ラップにルーキー・チームメイトのザック・ビーチにポジションを譲ってもらって12位でゴールした。
ハンター-レイにパスされても2位でゴールしていれば40点が獲得できていたが、12位では18点(ボーナス除く)。この差がチャンピオン争いに大きく響く可能性はある。
ロッシのミスにより、優勝争いとまったく関係のない3番手を淡々と走り続けていたウィル・パワー(チーム・ペンスキー)が2位でゴールした。
パワーがこのような戦いぶりで2位を拾ったのは、ある意味驚きだった。インディ500で優勝して精神面の安定を手に入れ、ベテランらしく少しでも多くのポイントを獲得する走りができるようになったということかもしれない。
3位フィニッシュより5点多く稼いだ彼はポイントリーダーに返り咲いた。また、彼のこのしぶとい走りによって、シボレーは両レースでのホンダの表彰台独占を阻止することもできた。
3位はエド・ジョーンズ(チップ・ガナッシ・レーシング)。レース1で11番手スタートから6位フィニッシュした彼は、レース2は4番手スタートから表彰台に手を届かせた。ガナッシはどちらのレースでも2台とも2ストップ作戦で戦っていた。
4位はディクソン、5位はグラハム・レイホール(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)。
予選2番手だったウィケンスは、2位の座を捨てて3ストップ作戦にチャレンジしたが、逆に順位を4つ落としての6位フィニッシュとなった。
佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)は20番手スタートから3ストップ作戦を採用したが、レース半ば過ぎの47周め、1台のマシンがスピンし、フルコースコーションが出そうになったタイミングでピットに入ったのが失敗だった。
多くの2ストップ組がピットしたそのタイミングはコースに残って大きくポジションゲインをするチャンスだったが、彼らはピットした。このときステイアウトしたトニー・カナーン(AJフォイト・レーシング)は7位でゴールしたが、琢磨はその後もピットタイミング、ピットアウトする場所が悪くて後方集団からついに一度も抜け出せないままレースを終えた。結果は17位だった。