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二宮和也主演『ブラックペアン』、抗議へ1つのアンサーを示す? 渡海と世良の関係に変化も

2018年06月04日 06:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 前回のエピソードで母親の手術を執刀したことにより、病院の規則に反した渡海(二宮和也)は減俸を命じられ、同じタイミングで高額の給与を提示してきたライバル・帝華大病院に引き抜かれることになる。最新鋭の設備を導入するための症例を増やそうとする西崎(市川猿之助)の意に反し、難易度の高いオペで外科医の腕の重要性を誇示しようとする佐伯(内野聖陽)の動きを封じるための策略というわけだ。


参考:『ブラックペアン』放送前の二宮和也たち【写真】


 毎回指摘してきた“定型化した展開”を自ら批判するかのような、予想外の展開が待ち受けていたTBS系日曜劇場『ブラックペアン』の第7話。さらに今回のエピソードでは、クライマックスのメインプロットとなりうる渡海と佐伯の因縁にわずかに触れながらも、治験コーディネーターとして第1話からミステリアスなキャラクターに描かれてきた木下(加藤綾子)にフォーカスが当てられていった。


 西崎が国産ダーウィン“カエサル”の治験患者にと、東城大の内通者から得た患者リストの中から比較的手術が容易に行えそうな患者、山本祥子(相武紗季)を指名する。この山本は、かつて木下と同じ病院で働いていた看護師で、医療ミスの罪をかぶせられた木下を助けることができなかったことを悔やんでいたという。2人の間には微妙な空気が流れ、木下は山本の担当を外れることになるのだ。


 しかし木下は、山本がペニシリンにアレルギー反応を起こすことを知っており、彼女にペニシリンが投与される寸前に窮地を救う。さらにオペの最中に山本の左心室に血栓が見つかり、摘出をしようとする高階(小泉孝太郎)を止める黒崎(橋本さとし)にまっさきに反論。そして帝華大への患者リスト持ち出しの疑惑がかけられた看護師の宮元(水谷果穂)にかつての自分を投影して守ろうとする。


 現実とは乖離した治験コーディネーターの描写であると抗議を受けたこの木下というキャラクター。抗議の内容にあった「高級レストランでの接待」や「破格の負担軽減費」の描写はそれ以後なくなったものの、そのぶん彼女の役回りがドラマというフィクションにはっきりと機能しないエピソードが続いていた。そこに来て今回のエピソードでの彼女は、患者だけでなく医師・看護師を救うという明確な立場を獲得する。いうなれば、様々な暗躍がうごめく大学病院という空間における“中立”的な立場でドラマを見つめるキャラクターとして再定義された印象だ。


 もちろんこのドラマにはすでに世良(竹内涼真)と花房(葵わかな)という“中立”キャラクターが存在している。しかし、彼らはどちらかといえば視聴者と同じポジションに位置し、視聴者と一緒に事柄を把握していく“共感要素”に当たる。木下のキャラクターはその2人とは異なり、あくまでもドラマの物語内、フィクションの範囲内に収まった、“中立”キャラクターといったところだろう。もしかすると、抗議に対する1つのアンサーのようにも思える。


 ところで今回の終盤、渡海が東城大に帰ってくるのを医局で世良が迎えるシーンがある。声をかけてきた世良に、すでにまとめられた荷物を戻すように具体的な言葉を使わずに指示する渡海の姿。この2人の意思疎通のスムーズさもさることながら、渡海が世良の名前を呼んでいることに大きな意味があると見える。帝華大で同じ医局の医師に「誰だお前?」と怪訝そうに言い放つほど人の名前を呼ぶ描写が少ない渡海。そんな彼が、前回の母親のオペでのサポートやこれまでの出来事を通して、世良を認め始めているあらわれではないだろうか。(久保田和馬)