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吉本芸人「ギャラ50円、源泉引かれ45円」告白が話題…世知辛い「5円」徴収の意味

2018年06月02日 10:42  弁護士ドットコム

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吉本興業所属のお笑い芸人・キートンさんが、自身の「驚愕」の給与明細をツイッター上で公開したことが芸能ニュースやネットで話題になった。キートンさんは、浅田真央さんやRIKACOさんのモノマネを「特技」としている。(吉本興業のホームページによる)


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キートンさんは5月19日、「吉本の給料明細がきた。説明会がありギャラはちゃんと出ます。と、そこそこの規模で始まったチェンジライブのギャラが入った。50円。源泉引かれて45円」とツイート。さらに、「ギャラが安いのでお馴染みの吉本に20年いて、すっかり慣れっこになった私ですが、これは酷いと思い写真付きでツイートしました」と続けた。


ツイートは1万3000回以上もリツイートされるほどの反響。キートンさんは5月22日、「ちなみに、こんなツイートして吉本的に大丈夫ですか?と心配してくれた人もいました。あんなギャグツイートが通じないような、つまらない会社じゃないので全く問題ないです!」と記した。


そもそもギャラが50円であることに驚くが、さらにそこから源泉税として5円を抜かれることにも「厳しさ」を感じる人もいるのではないか。源泉税とはいったいどういうものなのか。高橋創税理士に話を聞いた。


●「源泉税」はフライングで抜かれる所得税のこと

ーー源泉税について教えてください


「初めて給与明細をもらったとき。フリーランスとして初めて請求書を出すとき。そんなときにひっそり引かれているのが『源泉徴収税額』ですが、これがなんなのかをちゃんと把握している方は、意外と少ないのではないでしょうか。そもそも『源泉徴収税』という独立した税目はありません」


ーーでは何の税のことなのでしょうか


「源泉徴収で引かれている税金は『所得税』です。そして天引きをされるのはサラリーマンや一部の個人事業者が中心。昭和15年から続く由緒正しき(?)制度なのですが、その中身は、本来は確定申告の際に納めるべき所得税を、収入の支払いを受けるタイミングで、支払元経由で国に納められてしまうという『フライング納付』システムです」


ーーキートンさんの場合は、どのように考えればいいでしょうか。50円のギャラの1割にあたる5円が抜かれています


「芸人さんの出演料が源泉徴収の対象となること、その税率が10.21%であることは所得税法で決まっていますので、キートンさんのギャラから5円が引かれているのは仕方ないこととは言えます。金額にかかわらず適用されるルールではありますので。


ですが、50円から5円が引かれているのを目の当たりにすると、個人的には『この金額で、なにもそこまで』とも思ってしまいますね」


ーーフライング納付システムには賛否両論があるようですね


「はい。税金を効率的に徴収できるし、納税者も楽できるとする『賛成派』も、この制度のせいで納税している自覚が湧かず、税に関する無関心を招いているとする『反対派』もいる制度ではありますが、個人的には悪い制度だとは思っていません。


楽をできるならしたいですし、ちょこちょこ払う方が一括払いより負担感も少ないです。ただ、税理士や司法書士の報酬は源泉徴収するけれど行政書士の報酬は源泉徴収しない、などのちょっとよくわからない基準はどうにかして欲しいものです」


【取材協力税理士】


高橋 創 (たかはし・はじめ)税理士


資格予備校講師(所得税法)、会計事務所勤務を経て、2007年に独立。


事務所名   : 高橋創税理士事務所


事務所URL: http://namahage-tax.jp/


(弁護士ドットコムニュース)