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太賀が明かす、福田雄一監督や山田孝之への思い 「節目の作品に混ざれて本当に光栄だった」

2018年06月02日 06:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 『勇者ヨシヒコ』シリーズや映画『銀魂』など、コメディ描写に定評のある福田雄一監督がラブストーリーに初めて挑んだ映画『50回目のファーストキス』が6月1日より公開となった。アダム・サンドラーとドリュー・バリモアが共演したアメリカ映画『50回目のファースト・キス』をもとにした本作は、天文学者になる夢を抱きながらツアーガイドとして働くプレイボーイの弓削大輔(山田孝之)と、過去の交通事故により新しい記憶が1日で消えてしまう短期記憶障害を負った藤島瑠衣(長澤まさみ)の恋模様を描いた物語だ。


参考:長澤まさみがバットを振り回し、山田孝之が白目を剥いて絶叫 『50回目のファーストキス』最新映像


 今回リアルサウンド映画部では、長澤まさみ扮する短期記憶障害の姉・瑠衣を献身的に支える、筋トレ好きな弟・慎太郎を演じた太賀にインタビューを行った。3度目の福田組参加にして初めてガッツリと作品に関わった福田組に対する思いや、山田孝之や長澤まさみ、佐藤二朗らとのエピソード、そして役者としての今後についてまで、大いに語ってもらった。


ーー10月クールの連続ドラマ『今日から俺は!!』(日本テレビ系)で福田監督と再タッグを組むことが既に決定していますが、意外にも福田組にガッツリと関わるのはこの『50回目のファーストキス』が初めてなんですね。


太賀:そうなんですよ。福田さんとのお仕事は、菅田将暉の『情熱大陸』(TBS系)、ゲスト出演した『勇者ヨシヒコと導かれし七人』(テレビ東京系)に続いて今回が3度目になるんですけど、どちらも1日だけ現場にチラッと行くレベルの短い撮影でした。そんな中で今回初めて福田さんとガッツリ一緒にやれる、しかもこれまでコメディを量産されてきた福田さんが初めて手がけるラブストーリーということで、話をいただいたときはめちゃくちゃうれしかったですね。


ーー太賀さんが演じた慎太郎は、登場人物の中でも最もコメディ路線に振り切った非常にインパクトのある役柄でしたが、原作となったオリジナル版ではダグ(演:ショーン・アスティン)として登場していて、筋トレ好きなどの基本的な設定も踏襲されていました。この役柄を演じるにあたって、オリジナル版はどの程度参考にしましたか?


太賀:クランクイン前にオリジナル版を観て、素直に素敵な作品だなと思ったんですけど、オリジナルのダグを自分がどう演じるかというよりは、福田さんが書いた脚本に対してどうアプローチしていくかということの方が大きかったです。だから原作がこうだからこう、みたいなことはあまり意識しませんでした。人種もそうですし、設定も多少違うところはあるので、それはそれ、これはこれというイメージで、僕の中では全く別物として考えていました。


ーー衣装もものすごくインパクトがありましたね。


太賀:衣装はオリジナル版のものを踏襲しているんですけど、よりピチピチがいいよねという話になって、いけるところまでピチピチの衣装になりました。その分、僕もより体を鍛えなければいけなかったんです。ハワイのホテルに隣接していたジムで(山田)孝之さんと一緒に筋トレをしたりもしましたね(笑)。


ーー今回は福田組の常連である佐藤二朗さんやムロツヨシさんが笑いのないシリアスなシーンにも挑戦している一方、太賀さんだけは常に笑いに特化した役どころという印象でした。


太賀:ラブストーリーのしっかりした部分があってこそコメディ要素が引き立つし、コメディが笑えるからこそラブストーリーの部分が切なく感じる。そのバランスがとても大事で、そういう意味でも慎太郎は非常に重要な役だと思っていたので、楽しいという気持ちはもちろんありつつ、気合いも入りましたね。福田さんは今の日本のコメディ映画において第一人者だと思いますし、二朗さん、ムロさんをはじめとした福田組の中に自分が入っていくのは、ある意味で恐いところもあって。自分がどこまでできるかも分からないし、これでスベり倒したらどうしようというプレッシャーもあったんです。でも、いざ現場に入ってみるとすごくアットホームで、福田さんものびのびとやらせてくれました。掛け合いが多かった父親役の二朗さんにしても、僕がボケて二朗さんがツッコむという役割がハッキリとしていた分、僕が何をやっても二朗さんが拾ってくれるという安心感があったので、それはすごく助かりました。


ーー佐藤さんとの掛け合いは観ていて何度も吹き出してしまうほど面白かったのですが、アドリブとかではなく、基本的には脚本どおりだったらしいですね。


太賀:ほぼ脚本通りでしたね。ただ、現場で変わって、そのまま生かしていくということも多少あったと思います。僕は撮影初日が孝之さん演じる大輔との空港でのお別れのシーンだったんですけど、そこで初めて二朗さんからビンタを受ける流れをやったんです。そこで「この流れは面白いかもね」となって、ビンタのシーンが増えていったという経緯はありました。アドリブというよりは、きっかけは全て福田さんが作ってくれた感じでした。


ーー撮影中に思わず笑ってしまったりすることはなかったんですか?


太賀:しょっちゅうありましたよ(笑)。二朗さんにツッコまれるのが耐えられないぐらい面白くて。なるべくカメラに映らない角度で笑ったりごまかしながらやっていました。特にビンタのシーンはヤバかったですね。佐藤さんから「ここ来い」と言われて自らビンタをされに行かなければいけないのですが、「ここ来い」と言われた時点で「ヤバいヤバいヤバい……」ってなっていて(笑)。でも慎太郎は“慎太郎然”としていなければいけなかったので、我慢するのに必死でした。ビンタされてからも笑ってしまいそうで大変だったんですけど、必死に映らないところで笑ってから戻していましたね。


ーー慎太郎が大輔のことに好意を抱くという今回新たに加わった設定もあり、山田孝之さんとのやりとりも笑いがこみ上げてきてしまうものがありました。太賀さんにとって山田さんは長年の憧れの存在だったそうですが、今回の共演はどうでしたか?


太賀:僕が小学生の頃に、孝之さんは『世界の中心で愛を叫ぶ』(TBS系)や『白夜行』(TBS系)など、シリアスな純愛もののテレビドラマによく出ていて、その姿を観て僕は孝之さんのことが大好きになったんです。これは一ファンとしての感想ですけれど、今回の『50回目のファーストキス』は、それ以来久しぶりに孝之さんが純愛ものをやっているイメージで、現場でも「ああ、この山田孝之が観たかったんだよな」と感動したのを覚えています。


ーー初共演となる長澤まさみさんの印象は?


太賀:長澤さんも憧れていた女優さんの1人だったので、最初はちょっと緊張していたんです。でも実際はとてもフレンドリーな方で、本当の弟みたいにかわいがってくださって。だから長澤さんの前でものびのびと芝居ができました。あとは今回ハワイロケで、13時から23時まで働いたらその後10時間は絶対に休まないといけないなど、システムもしっかり決まっていたので、キャストのみんなで毎日のようにご飯に行ったり飲みに行ったりしていたんです。観光したりビーチに行ったり、本当に仲のいい現場だったので、そういう意味でもすごく充実していましたね。


ーー撮影以外のオフの時間でも集まっていたんですね。


太賀:みんなでビーチにボディボードをしに行ったこともあったんです。そのときに孝之さんがクラゲに刺されて……。


ーーえっ!? 大丈夫だったんですか?


太賀:「痛ってぇー!」って叫ぶ孝之さんのもとに、「大丈夫ですか!?」ってすぐに僕らが駆けつけて。お酢を買いに行ったりして大変でしたけど、大事には至らなくてよかったですね。でも、散々ビーチで遊んで、クラゲに刺されて、帰りましょうって、撮影に来ている人たちのエピソードじゃなくて、本当に観光に来ている人たちのエピソードみたいで、すごく面白くて。それも含めていい思い出ですね。


ーー完成した作品を観てどんな印象を受けましたか?


太賀:最近は胸キュンだったり壁ドンだったり、高校生とかの若い子たちが主人公の作品が溢れている中で、この作品は大人のラブストーリーになっているので、若い人以外の年齢層の高い人にも観てほしいなと思いました。あとこれは福田さんのすごいところでもあるんですけど、ちゃんと笑えるし、ちゃんと泣けるんですよね。実はそれってすごく珍しいんじゃないかなと思うんです。シリアスな部分と気楽に観れる部分のバランスが絶妙なので、観るタイミングも問わないし、誰かと一緒に観てぜひ共有し合ってほしいですね。


ーー太賀さんにとっても大きな意味のある作品になったのでは?


太賀:このタイミングで福田さんとご一緒できたのは僕にとってもすごく大きくて。日本のコメディを背負ってきて、それで結果を出してきた福田さんが、純愛ものの要素を入れて、いつもとは違ったテイストの作品を作る。そういう節目の作品で、孝之さんと長澤さんが主演で、二朗さんとムロさんがいて……という作品に自分が混ざれたことは本当に光栄でした。そして、こういう大人も楽しめるようなラブストーリーが今後もっと増えていってほしいなと思います。


ーー近年、太賀さんは映画やドラマを中心に、主役から脇役までさまざまな役柄を演じていてグッと存在感を増した印象があるのですが、自身ではそういう実感はありますか?


太賀:お仕事をたくさんもらえるようになって、少しずつですけど感じるところはありますね。世間的には全然まだまだですし、業界的にもまだまだですけど、与えられる役のウエートが重くなってきているのは感じつつあって。だからきちんと責任を果たせる役者になりたいなという思いも芽生えています。


ーー今後は役者としてどのような目標を?


太賀:作品の大小だったり、映画なのかドラマなのか演劇なのか、たくさんの垣根があると思うんですけど、役者は唯一いろんな現場に行くことができる部署だと思うので、より自由に、いろんな作品に挑戦できる役者になりたいですし、その分きちんと責任を果たせる大人でありたいなとも思っています。(取材・文・写真=宮川翔)